果実はおいしく実るまで待つものなんだよ?
果実はね、おいしくなるまで待つものだって私は思っている。
だってそうでしょう? まだまだこれからおいしくなるって状態でもぎ取っても本当に最高においしいってものではないでしょう? 私はね、はやく食べたいっていうより、果実はたっぷりとおいしい状態に実らせてから味わって食べたいの。
そっちの方が断然いいって思っている。おいしいし、その味わいは何にも代えられないような幸せを与えてくれる。
そう、そうなの!
だから、私はね。玩具(人間)だってもっともっと、面白い状態になるまで待ってから遊びつくしたいの。だからね、女優ちゃんも前向き君もね、私は面白い状態になってから、絶望を味わいたいの。
ふふふ、人間の絶望が好物でーす! ってなんとも悪役ぽくていいと思わない? そういうの宣言してみたいよね。そしたら周りの反応ってとっても楽しそうだもん。
さらった子供たちはねー、今遊んでも面白いと思うよ。思うんだけどさ。なんていうの、もうちょっとおいしくなるんじゃないかーって期待しちゃうの。もう、これで腐っちゃったりしたら私も流石にへこんじゃうけどさー。でもさ、ぶっちゃけた話をすれば、それならそれでいいかなとも思ってたり。所詮さらってきた子供は玩具でしかなくて、その玩具が壊れようとも新しい玩具を見つければいいっていうのが私の考えだからね。幸い、この世界には私っていう魔人が遊ぶための玩具(人間)は沢山溢れているんだもん。
めいいっぱい遊んであげるの。
私は玩具で遊ぶの。ふふ、あー、もうたとえ子供たちでつまんない結果になったとしても次があるもんねーってことで私はもっとおいしくなーれと毎日言い聞かせながら《ポイズンハニー》たちの報告を聞いていたりするんだよ。
でさ、まぁ、子供たちの話はおいといてさ。
私がはじめて人間の町にいって結構立っているんだよね。好き勝手にしているのもあって、すぐには顔を出せなかったんだけどさー。あのねー、あのおじさん殺しに行こうかなって私考えているの。
どのおじさんって、あのおじさんだよ! 私の事殺そうとした殺人鬼のおじさん。
私もそこそこ強くなったと思うんだよねー。まだまだかもしれないけど。でもさ、人間って魔人と違って寿命があるからね。気が付けばおじさんが死んでましたーとかあっても困るんだよ。
《ポイズンハニー》たちにちまちま見に行かせていたんだけど、あのおじさんまだ生きているみたいだし。いや、実はね、殺人鬼だってのはばれちゃったらしくて、あの町にはもういないみたいだけど、別の町で何食わぬ顔をして警備員とかまたやってたりするらしいよ? やばいね、おじさん、良い具合にくるっている。
私ってそういうの好きなの。
だってくるっている人って面白いでしょう? 普通の人よりも断然面白いと思っている。
おじさんっていう、おいしい果実はそろそろ実ると思うの。っていうか、今こそ殺し時じゃないかなーって思ってたりするの。
派手にやりたいよね。
私がはじめての殺人をおかしたはじめての町で、因縁のおじさんなんだから。
思いっきり遊びたいんだ。私は。あのおじさんはきっと私の遊びにのってくれるだろう。私もそれなりにレベルは上がったし、とはいってもおじさんに勝てるかはわからないけれど。
でも勝てるか勝てないかじゃないんだ。おじさんは人間だから寿命が来るだろうし、今が一番良いタイミングじゃないかなーって勝手に思っているんだよ、私はさ。
そういうわけで子供たちの事は一旦置いといて、私は今からおじさんを殺すための計画を練り、どんなふうに遊ぶか考えなければならないの。
だって、ただ殺すだけでは正直つまらないでしょう?
もっと面白く、愉快にしなきゃいけないの。
『やっぱり、お前は面白いな』
そんな風に思考していたら、また声が響いたの。
私を面白いとその声は告げる。私は、その声を聞いて嬉しくなった。
『嬉しいか、やっぱり変わっているな』
「貴方は私の心をよんでいるの? 誰?」
楽しそうに私が問いかければ、その存在は答えた。
『俺は、邪神ヨルムノ。お前を『魔人』にしてここに連れてきて存在だ』
「おお、私をここに連れてきてくれた神様!? へぇー、神様なんだ。神様、ありがとう、私をここに連れてきてくれて!」
『……俺が接触をして恨み言を言う者は居たが、お礼を言うものははじめてだぞ』
「そう? でも神様に私は感謝しているんだもん」
『そうか』
神様は私をここに連れてきてくれた人なのだそうだ。というか、こんな面白い世界に連れてくれた神様に恨み言なんて言えるわけないじゃないか。
「それで、神様何の用?」
『お前があまりにも面白いからな。お前が俺の目にかなうぐらい面白ければ。お前のもとに顔を出してやろう』
「え、本当? 神様遊びに来てくれるの? やった、生で神様にお礼言いたいよ、私」
『……本当に変わっているな。だから、面白い事をもっと見せて、俺を楽しませろ、それを言いたかっただけだ』
それだけいってその声は聞こえなくなった。
ふふん、神様が楽しませてほしいっていうならもっともっと面白くしなきゃね、と私は気合いを入れるのであった。




