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働きかけましょう。

 ゴブリンたちを通じて、一つの言伝を子供たちに与えた。

 それは、大切な一人を殺されたくなければ《魔人》の命令を聞かなければならないというもの。

 命令を聞かないのならば、同じ部屋に押し込められたもう一人を殺すとそう脅しつける。実際にゴブリンたちに子供の首に刃物を当てさせれば、もう一人は驚くほど簡単に「命令を聞くから殺さないでくれ」といった。

 大切な人を守るために、嫌々《魔人》と呼ばれる存在の命令を聞く。

 それが、シナリオだ。私が愉快になるための命令。嫌々命令を聞いた先に人はどんな風に変化していくのだろうか。それが気になっている。それを私はみたい。

 私が働きかけた先に変化していく彼らを見たい。想像するだけでもわくわくする。

 こうやって遊びながらもMP回復薬を手に入れることもできるかもしれないなんて楽しみなんだよー。というか、やっぱり何事も楽しんでやるのが一番だって私は思っているんだ。楽しんでやるからこそ、意味があるの。

 楽しくないことはやる意味がない。折角、私は《人間》っていう枠組みを抜けられたのだから。《魔人》に慣れたのだから、私は一つ一つの過程を楽しみながら長い時の中を楽しんでいきたい。

 そう、子供たちにとってみれば命がけで真剣なものだって私にとっては遊びでしかない。私にとっては面白いものでしかない。

 どこまでも愉快で楽しい話だ。

 MP回復薬を奪ってきなさい、期限は三か月。そのような無茶な命令を出した。もしそれがかなえられないならとらえられているもう一人を殺すと。そしてその事をしゃべった場合も殺すと。

 最もそれでも絶対に喋らないとは限らない。もしかしたらこの人なら助けてくれるかもしれないなんて人を見つけたら喋ってしまうかもしれない。そのこともあって、私は一人につき何匹か《ポイズンハニー》を放っている。すべては監視のために。

 もし喋ろうとしていることがわかれば、まずは気絶させる。そして人質を殺す。もちろん、相手にはいつでもみている、お前の言動はわかっている、言えば殺すと脅しつける。実際は既に死んでいるとしてもこの目で見なければ生きていると信じてしまうのが人である。そういう風にして遊びたいなーなんて考えていたり。

 だって楽しいじゃないか。命令を達成した。これでともに生きられるとそういう希望を持って帰ってきた時、待っているのは屍であるって。

 その時、人はどれだけ絶望するのだろう。どれだけ、私をわくわくさせるような面白くさせるような様を見せてくれるだろうか。

 そう、それを考えるだけで面白くて、私は子供たちに接触することなく高みの見物をしていた。とはいってもダンジョン内以外の事は私は見れるわけではないから、《ポイズンハニー》たちから念話で聞いたものになるんだけれどさ。

 本当は自分の目でみたいんだけど、あまりにもうろうろしすぎると流石に怪しすぎるからあきらめてるの。第一、子供たちに私が脅しつけている《魔人》だってばれるのも色々とめんどくさいし。

 そういうわけで、働きかけてからは《ポイズンハニー》から状況だけ聞いていたんだけど。この遊び、思っていたより断然面白いね。やばいね。

 一人目の男の子の話をしよう。人質は女の子で、面白い事に危機的状況における恋愛感情の発展っていうのかな、ようするに二人は互いを思い合うという謎な関係に陥っていたの。

 大好きな子を、あの子を守るために俺は―――という決意のもと飛び出していった彼だけど、あっけなく死んだ。

 いやね、私が求めているMP回復薬の居場所をなんとか突き止めて頑張ろうとしていたのだけど、運悪く動物に見つかってね、殺されたみたい。

 あー、残念。ドンマイ。

 残されていた人質の女の子は、彼が絶対に私を迎えにきてくれるっていうそういう思いで、待っているっていうのに、モンスターが徘徊するこの場所で生きていくって決意しているっていうのに、それなのに、あっさりと希望がおれているなんて。

 ああ、なんて愉快なんだろう。

 どういうタイミングで人質の子に、彼は死んだよって伝えようか。あははははははっ、伝えたらどんな反応をするだろうか。

 やばい、この遊び、はまりそう。

 まぁ、一人目はおいておくとしてあとの二人はね、今のところ生き延びているよ。

 女の子と男の子が一人ずつ。

 ちなみに二人とも同性を人質にとられているんだけど、すっかり仲よくなっているみたいなの。たった短時間でもやっぱり吊り橋効果っていうのかな、簡単に仲良くなれるみたい。びっくりだね、面白いね。

 女の子の方はうまく商隊に拾ってもらって、ほとんど何も覚えてない子供のふりして一生懸命なの。凄い演技力だよ。私からしてもほれぼれするぐらい。

 でもあれだよね、女は女優だっていうし幼いながらに彼女は女優なんだろうなーって面白くて仕方がないよ。

 男の子の方は、冒険者と合流したみたい。こちらは嘘をつけるタイプじゃないのか、わけありなのは冒険者にもわかっているみたい。まぁ、むしろ子供で大人にばれないように嘘をつくのって難しいだろうしね。

 こっちはこっちで冒険者たちが男の子の抱えているものを知ろうとしているの。

 あはは、どうなるかなー。

 私はこれからが楽しみだよ。




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