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ポルノの悲劇、それは愛にとっての喜劇(実行編)

 さてさてさて、皆様お待ちかねの、私も凄く楽しみにしてたポルノで遊ぶのを実行できる日がやってきたんだよー。あはっは。観客とかいたら凄く楽しかったんだろうけれども、現実はそんな人いないんだよねー。別にいいけどさ。私は一人で楽しむだけなんだから。

 しかし、ポルノは本当に私のダンジョンの中を余裕な顔でうろちょろしてるんだよねー。ダンジョンを攻略するまで次にいかないって信念の元ここにいるからかもしれないけれど、なんかその余裕をはやくへし折ってやりたいよ、私は。

 余裕そうに微笑んでいる顔を、絶望に追いやる事。

 それってとっても楽しい事でしょう?

 ふふ、私はやるよ、思いっきりポルノを絶望に落としてあげるんだよ! 絶望って単語って、絶える、望みって書くんだよね。私がこの手で望みを絶えさせてあげ

るんだ。何て楽しいんだろうね?

 まず可愛いモンスターたちにさせるのは陽動。

 ポルノが混乱するように起こさせる行動。

 そして完成させた魔法をお披露目する場まで連れてきてもらうこと。

 マスター室の中でその様子をじっと見ている。なるべく眷属のモンスターが死ぬ事がないように色々考えて遊ぼうとしているけれど、ポルノって中々優秀だから犠牲を出さずに遊ぶの大変なのよね。悲しいけれど、思いっきり遊ぶためには代償抜きでは出来ないもの。

 モンスター達、特にポルノにとって私を連れ去ったモンスターである《ゴブリン》と《コボルト》に陽動させている時点で、私って本当性格悪いなーと自分で思ってたり。でもどうせなら思いっきりトラウマをえぐる遊び方したいんだよねー。だって折角の面白い玩具なんだからさ。思いっきり遊ばないのってもったいないでしょう?

 私はマスター室の画面を消して、マスター室から出る。

 陽動が終わったならば、あとは私の仕事。っていうか、私が動いて私が遊ぶからこそ、楽しいんだから。私がやりたいんだもん。モンスターたちだけでもポルノのトラウマ抉って遊ぶ事は出来るだろうけれどもね。

 それじゃあ、私がつまらないもの。

 自分のダンジョンに降り立つ。モンスターたちに追い立てられて、その場に存在しているポルノが近くに居る。私は、それを確認して一つの魔法を行使した。


 「我が身に偽りの姿を映し出せ。それを我は望む! 《ミラージュ》」



 呪文を唱えた。私の声は、かろうじてポルノには聞こえていないだろう。この魔法が何かって、言うなれば幻術の類だよ。私の姿は今、周りから見たら成長した私が映っていると思う。

 《魔人》は年を取らないからね。だから姿は変わってないけれど、ポルノの前に出るなら大人の姿でいった方が絶対楽しいもの。そうしたらもしかしたら私が生きているのかもしれないなんて馬鹿げた淡い期待を抱いて、希望を持って、そしてそののちに絶望を持つでしょう?

 生きているかもしれない、とそういう希望を持たせた方がきっとポルノは絶望する。ちなみに大人の姿ってのは、お姉ちゃんの姿を思い浮かべて幻影にしてるんだー。あはは、お姉ちゃんと私そっくりだったからね。見た目は。中身は全然違うけれどさ。

 お姉ちゃんは本当にこんな聖人君主みたいな存在居るかってぐらい優しい人だった。そして人を見捨てられない人だった。無害で、人を安心させるような何かを持っていた。私の人を安心させるような演技は、お姉ちゃんの真似をしている面も多くある。

 ポルノにとって姿が見える位置へ、私は移動する。

 顔が、少しは見えるぐらいな角度をポルノへと向ける。

 ポルノが息を飲むのがわかった。

 ああ、面白いな。ポルノは未だに『アイ』っていう女の子を忘れて居ない。ポルノにとって”鈍感で心優しかったアイ”って少女はずっと胸の奥に残っている。

 「アイ!!」

 ポルノが叫ぶ。私に向かって手を伸ばす。

 だけど私はつかまってなんてやらない。敢えて、その顔には悲しげな表情を浮かべる。そして、私は駆け出す。もちろん、私は『か弱い少女が成長した姿』って設定だから、違和感のないようなスピードで駆ける。

 そうなるともちろんポルノは追いつきそうになるわけだけど、そこらへんは一応色々考えていたんだ。ポルノと私の間には無数のモンスターが現れる。

 ポルノは、私がすぐそこにいるのに追いつけるはずもない。

 離れた位置―――ポルノからギリギリ見える位置まで移動すると、私は振り向く。目元を下げて、瞳に滴をためて。今にも、泣きそうな少女の表情を浮かべて。

 ポルノと目が合う。

 ポルノはモンスターに囲まれているというのに、冷静さを欠いている。

 だから、モンスターたちからの攻撃もやすやすと受けてしまう。

 た、す、けて……。そしてポルノと目が合ったまま、私が告げた言葉はそれで、その言葉にポルノの顔が益々歪むのを見て、私は内心笑った。ああ、これでポルノは私が生きたままモンスターに囚われているとそういう風に勘違いするだろう。

 もしかしたらこのダンジョンをクリアすれば――なんて淡い期待を抱くだろう。それってなんて面白いんだろう。




 しばらくの間、ポルノは私のダンジョンをどうにか攻略できないか。

 私を救い出す事が出来ないかと試行錯誤して、だけれどもできなくて。

 「絶対に迎えに来るから」なんて言葉を残して去って行ったとさ。





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