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楽しくするためにはたっぷり時間をかけるんだよ?

 アルシアと出会って既に3年も経過したよ! だってねー、私人間の町でやらかしたばかりだから人間の町ではやらかせないじゃない。だからたっぷり時間をかけて遊ぼうと思って。

 1年ほど交流をもったあたりでもうこう、ずばっと心臓にナイフさしてズタズタのボロボロにしてあげたくなったんだけどさー。正直もっと私を信頼させて、私を親友だと思わせてからやった方が絶対に楽しいと思うの。だから、我慢したの。うずうずしていたけれど、我慢して殺す事にしたの。

 さてさて、私は今何処にいるかと言えば、私の獲物であるアルシアのマスター室だったりする。

 あはははは、面白いよねー。私を信用して魔人にとって大事な場所であるマスター室にまで連れてったんだよ? まぁさ、私がダミーのマスター室――ああ、これ、アルシアを騙すためにわざわざ作ったマスター室もどきなんだけどね――に案内したからだろうけど。それでアルシアってば「アイちゃんはそんなに私を信頼してくれてるんだ」って感動したみたいなの。ふふ、あはははは、やばいねー、ウケるよね? 面白いよね? 大爆笑したよ。《ポイズンハニー》からアルシアがそんなこといっているって知った時はさ。

 「ここがアルシアさんのマスター室なのね」

 「うん。そう」

 アルシアは笑顔だ。男が放っておかないような嬉しそうな笑みを浮かべている。友達である私と一緒に居れる事が嬉しいみたいだ。うん、私はアルシアをどうやって殺そうかなって試行錯誤しているぐらいなのに信じきっていて面白いね、凄く。

 いいね、いいよ。なんて純粋で単純で、人を信じてるんだろうね。そんな子がはじめて会う魔人で私はとっても嬉しいよー。だって遊び甲斐があるもの。たっぷりと甚振って、絶望させて殺してあげたらアルシアはどんな顔をするんだろう。それを思うだけでわくわくしてたまらない。思わず顔がにやける。でも笑っていても問題ないよね。だって友達のアルシアと遊んでいてアルシアは笑顔なんだから、私が笑顔を浮かべていても問題ないもの。

 「ねぇ、アイちゃん、アイちゃんは――」

 アルシアは本当に嬉しそうに、楽しそうに私に話しかける。他愛もない会話を交わす。

 アルシアはもう《人間》ではなく、《魔人》って種族なのに、彼女はずっと《人間》としての感覚のままだ。

 しばらく話をしたあと、二人でアルシアのダンジョンの様子を見た。アルシアのダンジョンは塔だ。馬鹿正直にアルシアは宝石置き場に宝石を置いている。それでもまだアルシアが存命なのは、ただたんにアルシアが設置したダンジョンの場所がわかりにくい場所にあるからだ。それとアルシアは人を襲ったりしていないから。

 私の場合は森の上空を真っ暗にしているし、普通に人を襲っているし、そういうこともあってダンジョンとしての認識度が高い。

 まぁ、アルシアは私のダンジョンがどういうものか詳しく知らないみたいだけど。てか、知ってたら確実に私に好意的でいられないと思う。冒険者をバラバラにしたり虐殺したりしてるし。

 そうだね、いうなればアルシアは私以外に話し相手もおらず、誰とも交流がない。私からの情報と自分が見聞きした情報しか知らないんだ。

 「モンスターって怖い」

 アルシアは《魔人》の癖にそんな事をいう。なんか《魔人》と交流をもってはじめてしったけれど、モンスターって結構機械的らしい。命令は聞くけれど自分からは喋らないみたいな。そしてアルシアも話しかけないし。

 多分さ、思うにモンスターって作られた時は何も知らない赤ん坊みたいなものなんだと思う。会話は出来るけれども、《魔人》のいう事を聞くだけの。私のモンスターたちが感情的なのは、そうだね、多分私が話しかけまくって可愛がりまくったせいだと思う。愛情をもって話しかけて可愛がればモンスターたちって超可愛いのになー。

 怖いとかいっている時点でモンスターと距離を置いてる事で、モンスターたちも創造主の《魔人》に怖がられて放っておかれたら、ただの命令を聞くだけの存在のままだよねー。

 ふふ、だったら私はモンスターに話しかけて、たっぷり話かけて正解だね。私がそうしたからこそ、モンスターの自我がそれだけ芽生えたって事でしょう? 機械的で、命令を聞くだけの存在なんてつまらないじゃない。

 「そうね……」

 「こんなのの主だなんて……。私は、普通で良かったのに」

 普通が良いなんて本当にアルシアは今更そんな事嘆いていも仕方がないのにね? それに普通って退屈だよ? 少なくとも私はとっても退屈だった。

 型にはまった生き方は退屈で、法律なんてもので縛らせた世界は窮屈で、地球に居た頃から好き勝手にできたらどれだけ楽しいだろうかって考えていた。

 もしかしたらいざ、非現実的な状況になったら、普通ではなくなったら私は怯えて竦んで普通を望むかもしれないって地球に居た頃は少しは考えていた。だけど私はそんな事なかった。

 あったのは興奮して、どうしようもないほどわくわくして、これからの生活が楽しみで仕方がないっていう私だった。

 「あんなに怖い存在に命令して人を殺さなきゃなんてっ」

 「うん……。モンスターは怖いよね」

 なんて口にしながら嘘だから悲しまないでねーと可愛いモンスターたちに思念を送る。というか、アルシアは気づいてないけれど《ポイズンハニー》はこの場に侵入してるの。小さいし、侵入しやすいからね!

 というか、本当に殺したくないなら引きこもるなり、自殺するなりすればいいのにね? もしかしたら自殺出来ないようになっているのかな? とも思うけれど、私を此処に連れてきた神様って私と同類的な良い性格してる気がする。そういう性格してなければ無理やり異世界から人間を連れてきて魔人なんてものにして人殺しなんてさせないもの。わざわざそういう残忍な行為が忌避されている地球から連れてきたっていうのがもうね、良い性格しすぎだと思うわけ、正直。

 で、考えて見たけれど、私がもし神様の立場だったならば連れてきた人間が自殺するのも又一興だと思うんだよー。だから自殺出来ると思うんだよね、やった事ないからわからないけど。それにアルシアの性格なら自殺しようとしたのならばその絶望を私にいうんじゃないかな? 自分の不幸って人に結構聞いてほしいものだし。

 「本当、どうしてこんなことに……」

 そうやって嘆いているアルシア。そして自分からは決して行動に出ないアルシア。

 多分物語のヒロインか何かみたいにヒーロー的な存在に助けられるのを待っているんじゃないかな。ほら、人って自分に都合よく楽観的になってしまうものでしょう? ふふふ、いつか王子様はってそんな年じゃないだろうに、期待しているんだろうね。もしくは物語的にいうなら邪神的な立場の私を連れてきた神様が勇者的な存在に殺されるのを待っているとか。

 あはは、面白いね。凄い愉快。

 受身で、自分で何もしていないのに自分は不幸だって嘆いてるんだよ。助かるといいねって楽観的でさ。殺したくないっていうなら大人しく殺されるのが一番なのに、自分は死にたくないんだろうねー? 面白いね。

 それか一人が嫌なら人間の町で暮らせばいいのに。《魔人》だってのはバレないと思うし。何かやらない限りはね。それも怖いから嫌なんだろうね。《魔人》ってバレたら殺されるってー。

 あれも嫌、これも嫌っていっているから私だけしか話し相手が居ないって状況になってんだよねー。モンスターたちと会話を交わすのも楽しいのになー。



 まぁ、いいや。いつか誰かが助けてくれるんじゃないかーって愉快な希望は私が叩きおってあげるよー。たっぷり絶望させて殺してあげるからね、アルシア。


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