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決めたからには、すぐにやろう。

 私は私の支配下のモンスターたちが、かわいいモンスターたちが、冒険者たちによって殺されていくのを見て、相手をどうしようもなく殺したくなってしまったんだー。

 だってさ、むかつくでしょう? 私の大切で仕方のない存在たちを問答無用で殺されてしまうのってさ。だから、殺ろうと思っているんだ。何人かを。やられっぱなしでは正直私の柄ではないし、いやだなって思ったんだから。

 というわけで、まずは設定を考えなければ。普通の少女がこんなダンジョンのど真ん中にいるのおかしいでしょう?

 私は冒険者を殺したい。私の経験値を上げるためにも、可愛いモンスター達を殺した仕返しをするためにもね。ズタズタにプライドもろとも体を引き裂いてやりたいなーってそんな気分。でも私の技術ではそれは難しいんだよねー。あー、もっともっと強くなりたい。そしたらもっと楽しく遊べるのに。

 でも下手に焦って行動に出たら死ぬことは間違いない。幾ら人を殺したいからといってもさー、技術がないのにそれを実行したら死んで楽しい時間がおしまいになってしまう。そんなの嫌だもんねー。

 だから、今は我慢しながら自分が出来る事をやる他ないよね。

 本当はもっとやりたい事を好き勝手できたらいいなぁって思うんだけど、正直それは厳しいんだよねー。あーあ、もっと強くなりたいなーって思いながらも刃物を研ぐ。もっとちゃんとした剣みたいな武器も欲しいけど、普通に私がお店でそれを買うのは不自然だし、今の私がもってても使えないからねー。もうちょっとどうにかしてからがいいかなーって思ってるの。

 不意打ちで人を殺すのなら小さなナイフがいいかなってナイフ研いでるよ。深く刺さなきゃ殺せない気がするけどさー。それでも、やるだけやってみようかなって。

 それに最悪魔法をぶちかませばなんとかなる気がするしね。

 というわけで、実行しちゃいましょうか! と私はわくわくしながらあのハーレムパーティーの元へと近づいていっちゃいました! だって一番特徴的で私に騙されてくれそうだったもん。

 「君はなんでこんな所にいたんだい?」

 剣士の男がそういって問いかけてくる。まぁ、不自然と言えば不自然だからね。ダンジョンに女がいるとか。だからさー、あえて私自分で至る所に傷をつけて倒れた状態を演出したよー。そして可愛いモンスター達には私をわざと囲んでもらったの!

 それは彼らが追い払ってくれた。ふふ、死なないように逃げてもらったから、一匹も死なずにすんだんだよー。

 で、神官さんが傷を治してくれたの。

 「……わ、私」

 怯えたような表情を作って、私は演技を始める。

 目に雫をためて、上目遣いになるように計算して、男が庇護欲を感じるような表情を作る。

 意図的にそういう表情を作るのなんて簡単だもんねー。

 「ぼ、冒険者のお、お兄ちゃんが帰ってこなくて……。た、った、たった……っ、一人の……、か、ぞくなのに」

 設定はそんな感じにしたんだよー。

 たった一人の家族が帰ってこなくてだけれどもそれが受け入れられなくて、それでこんな危険な場所までやってきた少女。ちょっと不自然かもしれないけれどそんなの見た目の儚さで男は少なくとも騙されてくれるはずだよー。

 女たちはわかんないけど、多分大丈夫だと思ったからやってんだよね。だって明らかに男一人の主導権の方が大きそうじゃんか。男が私を信じるといったら皆信じそうな感じ。

 「そうか…、それは辛かったな」

 男はそう言いながら私の肩に手を置いて、泣いていいんだぞとでもいうように抱きしめる。

 うわ、キモイ。超絶キモイ。ありえないぐらいキモイ。

 慰めるにしても抱きしめる必要ないよねー。こいつ今まで女に拒否された事ないんだろうな、って凄いわかるんだけど。

 「…お兄ちゃんが、……お兄ちゃんが」

 私は気持ち悪いなって気持ちを隠して絶賛『お兄ちゃんがいなくなり泣いている少女』を演じてるんだよー。こんなまどろっこしい事しなくていいなら「キモイ」っていって殺して終わるんだけどなぁー。でもま、この自信に溢れた男を絶望に落とすのもきっと楽しいよねー。

 「大丈夫だよ。俺がお兄さんを探して上げるから」

 それを聞いた時、正直引いた。

 何こいつって思ったのー。だってさ、自信満々すぎて、なんだかなーって思ったっていうか。自分が行うことは全て上手くいくみたいな自信がありそうで気持ちわるいなーって思っちゃった。

 でもでも、こういう今まで何も不幸に陥った事のない人を絶望に陥らせるのってきっと楽しいよねー。自分に守れないものはないって思ってるみたいだから、パーティーメンバーの内一人を殺して、私もこの男の傍から去ろうかなーって思うんだ。

 名案でしょう?

 あははっ、きっと楽しいよね。

 私の可愛いモンスター達を殺した報いをしてもらわなきゃならないんだから、たっぷり絶望してね?

 「……本当、ですか?」

 「ああ。だから、大丈夫だよ」

 肩に未だに置かれた手を切り落としたい。

 「あ、ありがとうございます」

 「俺たちに任せてくれ。君は自分の家へと帰るといい」

 爽やかに微笑む顔を思いっきり刃物で切りつけたい。

 「そ、それは嫌です! 私は……、お兄ちゃんを見つけたい……。こ、このまま帰れません!!」

 私がそういえば、彼らはパーティー内で相談をし始めた。

 「この程度のダンジョンなら君がいても問題ないだろう」

 絞め殺すよ? と口にしたくなったんだー。この程度のダンジョンって、確かに私はまだまだ魔人として新米で、ダンジョンもしょぼいけどその言い方はないんじゃないかなー? あは、絶対その顔絶望に歪ませてあげるよー。

 その後? 感激した振りしたよー?

 さてさて、私のダンジョンはそこまで広くないし、全体を見て回るのも割とすぐ終わるんだよね。だからその間にどうにか一人を殺さなきゃ。殺しやすいのは誰かなー。やっぱ神官のお姉さんかな。うん、神官のお姉さんに決めた。



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