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トラウマ植え付けちゃえ☆

 この世界の自然は綺麗だ。

 ポルノと共に人気のない場所に来た。草木が茂るその場所で空を見上げればすっかり暗くなった夜空に、沢山の星々が輝いていた。

 何て綺麗なんだろう。

 何て美しいんだろう。

 地球での星空なんかとは比べ物にならないそれをこの視界に入れられる事が私は嬉しかった。

 だってそれは地球ではとっくに失われていた、失われかけていた自然のありのままの美しさ。それがこの世界には沢山残っていて、その一つ一つを見るだけで何だか興奮する。この世界に来て良かったと思う。

 「綺麗な星空だね」

 そう言った言葉は本心だった。

 星空っていいよね。澄んだ何処までも広がる青空や、雨が上がった後の虹のかかった空とかも好きだけど、星空の方が私は好きかもー。真っ黒な空の上に無数にきらめく星ってどうしようもないほど綺麗なんだもん。

 ふふ、何だか無意識に笑みが零れてきちゃうよ。

 それにこれから私、ポルノに思いっきりトラウマ植え付けてやるの。あはっ、考えるだけでどうしようもなく、わくわくするね?

 こんな思考回路暴露したら、私の正気を皆疑うのかなー。実際私の思考って普通じゃないっぽいからね!

 「ああ。ア、アイも綺麗だよ」

 なんかどもって、顔を真っ赤にしてそんな事をいった純情ポルノに思わず私は噴き出したくなった。いや、だってねー、そんな台詞言うポルノって何か何処の純情少年だって話だよねー。

 この世界の人間とはまだそこまで関わってないけれど、あれだね、地球と違ってインターネットとかすぐに情報が見れるものがないからか女に夢見てる人は見てるのかもねー。

 でも私に女の子に対する幻想を見るとか……、うん、爆笑しそうなんだけど。

 「そう? ありがとう」

 まぁ、爆笑なんてしないよ? だって今、そんな事しちゃったら楽しくないでしょう?

 星空の下でね、ポルノの隣に立って私はポルノを見上げる形でいったの。もちろん、恥ずかし気にする演技もばっちりだよ!

 ふふふ、地球でも近づいてくる男共の好意を気付かないふり結構してたんだよねー。だって興味ない男に好意寄せられても正直いらないじゃんかー。人に好かれる事が嬉しい、思ってくれてありがとうなんて言う女も居るみたいだけど、ぶっちゃけその気持ちは全くわかんないよー。

 実は私って、初恋もまだなんだよ! だから正直、恋して幸せそうに笑う子達の気持ちは地球時代からわかんなかったかなー。目の前で私を見て笑っているポルノの気持ちも全くわからないよ! 寧ろ私なんか好きになるとかポルノってば悪趣味って感じはするかなー。自分が性格悪い自覚ぐらいあるしねー。

 「あ、あのさ、アイ」

 ポルノが私を見ながら何処かもじもじしたように声を発する。

 うん、男がもじもじしてても気持ち悪いだけだよね! ポルノってからかって、遊ぶための人材としては全然オッケーなんだよ。でもさー、人としては欠片も興味持てないかなー。だって面白くないし、純情少年ってのだけは面白いけどさ。

 友達になりたいかーとか、恋人にしたいかーって聞かれると進んでしたくないなーって感じだなー、ポルノって。恋人には絶対したくないね。こういう人相手の恋人ごっこなら楽しいからいいけどさ。

 「なぁに?」

 ふふ、わざわざ柔らかい声で、穏やかな表情で、私はポルノにいってやったの。上目遣いにしてるのも、何も知りませんよーって感じの不思議そうな顔してるのも全部わざとだよー。本当は顔を真っ赤にしたポルノが何を言いたいかぐらいわかるよ! 私ちっとも鈍感じゃないもん。あと純粋でもないしねー。私の腹の中はきっと真っ黒だよー。そんな自信あるよ。

 「そ、その…」

 ふふ、ズバリ言っちゃうとこのポルノは私に告白しようとたくらんでるんだよー。だって村の人達がこそこそとそんな話してるの聞いちゃったしー。あは、盗み聞きとか聞き耳って私大得意だよ!

 だってさー、地球時代から少しでも面白い事ないかなーって噂話に耳を傾けてたんだもん。情報って大事だよね。今、ポルノが私に告白してくるって情報知ったからこそ、私凄いわくわくしてるもん。

 「す、す、す」

 「す?」

 「す、す、スイカって」

 それを聞いて思わず噴き出したくなった私。こいつ、ヘタレだ! というか、現実で漫画みたいにそんな風に好きっていうのごまかしちゃう奴いるんだねー。あー、笑いたい。でも笑ってしまったら楽しさが減ってしまう! というわけで私は必死に表情筋引き締めて不思議そうな顔をしてるよ!

 というかさー、普通に考えて「す」をどもって、顔を真っ赤にして不自然なごまかしする相手を見て告白と気付かないとかありえないよねー。鈍感すぎるよねー。

 「スイカがどうかしたの?」

 不思議そうな表情する私を疑おうよ! こんな鈍感が現実に居るって事を疑おうよ! と言いながら思う私なのでしたー。っていうか、私そんなに鈍感で純粋無垢に見えるのかなー。皆見る目ないよね!

 「スイカが…じゃなくて、えっと間違った」

 「どうしたの?」

 うん、必死だね、ポルノ。その姿が激しく私の笑いを誘うよー。何だかこういう反応は面白いよねー。何て思いながら私はちらりとポルノにばれないように視線を上にやる。

 ふふ、そこには私の可愛い《ポイズンハニー》ちゃんが一匹いるの! ちゃん付けしてるのはそういうノリだからだよー。夜だから余計ポイズンハニー飛んでても誰も気付かないって言う!

 「……その、す、す」

 何だかどもりまくりのポルノに私は内心、早く言えよ何て思いながらも何も勘付いてませんよ―的な笑顔を浮かべる。

 「す、好きなんだ。アイのこと」

 あ、言った。顔を真っ赤にしたポルノは告白してから下を向いた。あー、そこは真っすぐこちらを向いて告白しようよー。かっこよさ減少だよー? まぁ、元からポルノにかっこよさなんてないけどさー。

 「え、す、好きって…」

 私はそこでようやくポルノの好意に気付いたという風な演技をする。そうしながらポルノが下を向いているのをいいことに私は口元を緩ませて、脳内で眷属のモンスター達に命令をする。

 はじめちゃって!

 私がした命令はそれだけだよ。だってもうどういう風にしてーっていう指示は事前にすませてるもの。あははは、もー、これから起こる事でポルノがどんな反応してくれるか楽しみだよー。

 「…う、うん。アイが好きなんだ。だから、俺とつき――ひぃい」

 ポルノが顔を上げて、こちらを見てそう言いかけた。だが、その言葉は最後まで続けられなかった。突然響いたポルノの小さな悲鳴――理由はわかるけど私はそれに驚いた表情を作る。

 「どうしたの?」

 「ア、アイ、う、後ろ!!」

 ポルノが声を上げる。私はそれに振り返る。

 振り向いた先には醜悪な姿をしたモンスター達―――――《ゴブリン》と《コボルト》がいる。木々の後ろから顔を出した彼らは数えると七匹も居た。

 「な、何で此処にモンスターが…」

 「は、はやく逃げよう」

 顔を青ざめた私の手をポルノが掴む。

 そして私の手を引いて走り出す。私はポルノが前を向いているのをいいことにその口元を緩ませた。

 ポルノに手を引かれて走る私は、わざと(・・・)足を踏み外す。そしてそのままこけて、地面にへたり込む。

 「ポ、ポルノ。ごめん、私もう、走れない……」

 へたりこんで、右足を抑える。もちろん、顔には泣き出しそうな表情を張り付けている。

 「そ、そんな、アイ」

 「ごめんね、ポルノ…。先にいって…」

 「そんな、アイを置いていくことなんて出来ないよ!」

 そんな会話を交わしながらも、背後からは《ゴブリン》と《コボルト》達が迫ってきていた。

 「ううん、いって、ポルノ…。私はポルノに死んでほしくない。さっきの告白嬉しかった。私も、ポルノのこと…、好きだったよ」

 敢えてそんな事を口にするのは、私の楽しみのためである。他に理由は欠片もない。だってこういった方が面白いことになるでしょう?

 私の言葉にポルノは泣きだしそうなほどに顔を歪めた。そしてやっぱり私を置いていけないとでも言う風に私の手をとる。でも、私は立ち上がれないふりをする。

 「ア、アイ…」

 「いいから、逃げてポルノ!」

 私は必死な形相を浮かべて、ポルノを手で押し出す。はやくいって、という思いを込めて。いや、もちろん、演技だけどね? こんなノリ、私じゃないしー。

 置いていけないって感じで残っちゃうキャラって物語の中に結構いたけど、自分が一番大事な私にはそういうのの気持ちわかんないかなー。私が逆の立場なら余裕でポルノおいてくよ!

 まぁ、そんなこんなやってるうちにもう《ゴブリン》と《コボルト》達はもう追いついてきたよ! そしてガンッとポルノに向かって《ゴブリン》の持っていた棍棒が振り下ろされたの。

 それにポルノは崩れ落ちたんだよー。あはは、流石、見た目通りポルノって超弱いねー。

 私は《ゴブリン》達に腕をがしっと掴まれて抱えられちゃいましたー。そのままね、意識がどうにかあって、しかもこっちを見ているポルノを置いて私は《ゴブリン》に抱えられたまま、その場から《ゴブリン》と《コボルト》達と退場したのー。

















 「うふふ、皆、よくやったわ!」

 村から大分離れた場所まで移動してから、私の眷族である《ゴブリン》達から降ろしてもらったの。そして私は満面の笑みでそういったの。

 あははは、実は眷属の《ゴブリン》と《コボルト》達に村周辺まで来てもらってたのー。ポルノで遊ぼうと思って。

 あのねー、モンスターって女を攫う事時々あったらしいの。これは私の想像だけど、男の魔人の性欲処理とかに使われたんじゃないかなーって思うの。実際攫われたら二度と帰ってこないって話なんだよねー。

 だから敢えてポルノの前で攫われて見せようと思ったんだー。

 うふふ、此処でポルノが死んじゃったらつまらないから、棍棒で殴られたポルノに気付くようにも村の方にも何匹かいってもらってるの。すぐ逃げるようにいったけどね。だってそうしたらモンスターが近くに出たってことでいない人のこと探すでしょう?

 『マスターが楽しそうで嬉しいです』

 てか、そんな風にいってるモンスター達本当可愛い。ポルノの百倍ぐらい可愛いよねー。

 まぁ、とりあえずこれでポルノは『折角思いが通じ合う事が出来た好きな女の子をモンスターに攫われる』っていうトラウマを抱えて生きてくことになるんだよー。うん、時々《ポイズンハニー》にポルノ観察に行かせよう。私が攫われたのを見たポルノがどんなふうに変化するか…うん、かなり楽しみだねー。

 私のことをいつまでも思って恋人を作らないとかにもなるかもねー。そんな風に重い愛情私いらないけどさー。

 もういなくなった人っていつまでも印象に残るものだよねー。ほら、死んだ人には叶わないって奴。思い出は美しいものだからねー。ふふ、私をいつまでも引きずったら、面白いよねー。

 あー、もう、色々楽しみー。この世界は面白い事一杯溢れてるよねー。

 「じゃあ、皆ダンジョンに帰ろうよー」

 そうそう、初めての殺人の後帰るつもりが予想外の殺し合いとか、ポルノで遊んでたから帰る予定が大幅に遅れたんだよねー。

 少し色々起こしたからしばらくはダンジョンにこもって、やるべき作業を行おうかなーって思ってるの。

 次はどんな遊びをしようかなーなんて思いながらも私はモンスター達と共に他の人にバレないように帰路を歩くのであった。



愛「この前、はじめての殺人は経験したから今度は初デート+自分に好意を持った相手に極上のトラウマを植え付けてあげることにしたんだよー」


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