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良かったー。ギリギリ生きてたよ!

 「………んっ」

 目を開ける。

 視界に見慣れない天井が入ってくる。身体を動かそうとすれば、痛みが私の身体を走った。

 そこで思い出す。

 自分が連続殺人犯のおじさんと対峙して、死なないためにも崖から海の中へと飛び込んだ事を。

 それを思いだして私は思わずニヤリッと口元を緩ませた。

 だってあれだけ危険でスリル満載な事を経験して、死にかけたけど生きていたのだ。結果オーライって奴でしょう?

 痛みを感じながらもどうにか体を起こして、此処は何処だろうときょろきょろとあたりを見回す。

 棚や机の置かれた普通の家の中みたいな感じ。多分、私が海から流されてきてそれを救助してくれた人でも居たのだろうと想像できる。

 私なら誰かが流れ着いてきたら助けないけど、少しでも良心のある人は助けるだろうし。いや、でもその場合は敢えて助けた後にぐさっの方が楽しそうじゃない?

 あー、また楽しい事を思いついちゃった。

 いつか決行しよう。

 というか、一緒に居た《ポイズンハニー》は何処にいんのかなー? ってわけで念話で一緒に居た子に話しかけてみれば、『村の外に居ます』と返事が返ってきた。

 ついでに何であのおじさんと戦っている時手を出さなかったかって聞いてみた。少し疑問だったからね。そしたら何かレベル差ありすぎて最弱モンスターの一匹でもある《ポイズンハニー》にはあのおじさん相手は厳しいらしい。てか、毒が効かないと。

 何それ、凄い。

 私もレベル上がったら弱いモンスターの毒効かなくなるの? いいな、いいな、それ。超レベル上げたくなってきちゃったよ。

 そんな風に考えてニヤニヤしていたら、声をかけられた。

 「起きたのか、よかった!」

 声のしたほうを向く。

 そこには十代半ばぐらいの黄色髪の少年が居た。此処の家の主かな? 私を心配したって思いを全面に出して、笑う姿に私は何だか殺し甲斐がありそうなどと物騒なことを思っていた。

 だってそうじゃん?

 見てよ、こんな人を疑う事を知らないって顔! 私がそういう危ない思考を持っているって全く信じてない態度!

 「えっと、貴方は…?」

 わざと戸惑いに満ちた声色で、態度で問いかけるのにも全く疑わない顔!

 もう、何この殺したら楽しそうな物件ってか、人間! 超殺したい。虐殺したい。生きている状態で殺したら楽しそう。もっとレベル高かったら縛って、生きている状態でざくざくと切り刻むか、火あぶりにでもするのに。

 そしたらきっと今まで見た事のにような表情を作って、何とも言えない新鮮感に満ちるだろうに。

 でも今はそれはできない。私はまだ弱いからねー。

 「僕はポルノ。君、自分がどういう状況か覚えてる? 浜辺に流れ着いてたんだよ」

 「えっと、私……」

 ポルノと名乗った彼の言葉にわざと言いにくそうに言葉を漏らし、そして顔を青ざめさせる。

 「そうだ…、あの変な人に追いかけられて……。私、こわ、くて…」

 顔を手で覆う。ほら、これで泣いているように見えるでしょう? ふふ、実際に嗚咽も上げるの。そしたら私みたいな可憐な少女がこういう場面で嘘泣きするとは思わないから完璧なのよ!

 良かったわ、私が女で、そして人畜無害な外見で。だからこそ誰も私を疑う事なんてしないんだよね。

 生まれ持った容姿は相手を油断させるための武器なんだよー。

 「……大丈夫だよ」

 ポルノは泣き真似をする私を抱きしめてそういった。

 うわー、泣いている女の子を抱きしめて慰めるとかおっとこ前ー! でも私は嬉しくない。寧ろ対して知らない人に抱きしめられるとかぶっちゃけ気持ち悪い。

 私のポルノに対する好感度は減少中だよ!

 あー気持ち悪いから離れて。なんて心の中で毒づきながら、ベッドの上で抱きしめられたままの私であった。

 しばらくして、もういいです、といったようにポルノから離れる。

 そして心の声とは正反対の言葉を口にする。

 「ありがとう。ポルノって優しいんだね」

 もちろん、笑顔で。

 私ってば演技派でしょ? ポルノってば顔赤くしてたわ。










 それからしばらくはポルノの家でお世話になる事にしたの。だってなんか楽しそうだもん。それに怪我も治ってないし、現在地をすぐには特定できなかったのも一つの理由だよ。

 まぁ、《ポイズンハニー》が村の外で待っててくれるから帰るのには今のところ、問題はないのだけどねー。

 てかさー、ポルノの反応が面白くて面白くてならないの私。

 あのか弱い、頼りなさげな笑顔の演技が利いたみたい。私のこと好きだって態度を出してるの。わかりやすくて面白いわ。だってこの子本当純情少年って感じだもの。

 私はあえて気付いていない天然娘を演じるのよ。だってその方が楽しいじゃない?

 期待させるような言動して、その後にすぐ期待を裏切る言葉を言うの。ああ、何て楽しいのかしら。

 「あ、あのさ、アイ」

 「ん? なぁに?」

 私は純粋な笑みを浮かべて問いかける。ちなみに見上げる形でだよ。上目遣いって奴だよ! これね、ポルノに効果抜群で本当に面白いのよ。

 ちなみにね、この村小さなの。皆知り合いみたいな村で、だからかポルノの思いバレバレなんだ。

 でも私はもちろん気付かないふりしてるの。そっちのが楽しそうでしょう? 今はポルノと街を散策中。時折からかうような声がポルノに投げかけられるの。それに対するポルノの反応ってば本当面白いわ。

 「こ、今度、街に行かないか?」

 「遊びに行くの?」

 「そう。近くの街で祭りがあるんだ。だから、その、一緒に行かないか?」

 そういって問いかけてくるポルノ。

 私のこと好きだって雰囲気が面白いわ。

 「いいよ。一緒に行こうか」

 私は笑って答えたわ。

 だって地球で男になんて興味がなかった私は誘われてもデートに行った事なかったのよ。だから、これが初デートなの。

 異世界にきて、異世界人とデートするなんて楽しそうでしょう? だから、ポルノが喜ぶように本当に嬉しそうな表情でいったの。実際ポルノとのデートは興味ないけど、異世界人との初デートは楽しそうだもの。私楽しみよ。

 「友達と祭りにいけるなんて嬉しいなぁ」

 もちろん、期待をすぐ無くす言葉も笑っていったわ。わざとよ。こういった方が楽しいもの。

 実際に私の言動で笑ったり、赤くなったり、へこんだりするポルノの姿は面白いの。




 初デートなんだから、色んな意味で忘れられない初デートにしてしまいたいわ。

 どうせなら、私だけが楽しい初デートにしたいわね。ふふ、多大な衝撃をポルノに与えてあげるの。

 『初デート~どうせなら色んな意味で忘れられないものにしよう~』って事で遊ぶわ!


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