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はじめてのさつじん。

 「……ふふ」

 街の路地で一人で遊んでいる幼い子供を発見してにやにやな私である。

 本当にさ、一通りの少ない裏路地にこんな状態で一人で居るなんて凄く不用心だなーって呆れちゃう所だよ。親は何してるんだって話だよね。

 ま、食堂にも親子で来ていた事あるから子供の親が優しい人だって知ってるけど。多分、てか、確実に子供――ハルマ君が飛び出してきたんだろーね。親から外に出てはいけませんとかいう忠告を無視して。子供はそういう忠告利かないものだもんねー。

 《ポイズンハニー》を放して、周りに人が居るか確認したけど全然居ないみたいだし、これはやるっきゃによね! それにしても攻撃しなきゃ《ポイズンハニー》が飛んでてもあんまり人って気にしないもんだから面白いよねー。

 思わずちらっとのぞきこんでふふと笑った私は悪くない!

 だって『はじめてのさつじん』出来そうじゃん?

 わくわくするんだよ!? どきどきするんだよ!? 私ってば『はじめてのさつじん』を計画してから、いつできるかなって楽しみすぎてたまらないぐらいだったんだよ!?

 それにこんな雰囲気、興奮するの当たり前でしょう?

 人気のない裏路地。

 殺人鬼の潜む街で親のいう事を聞かないで家を飛び出した小さな男の子。

 将来への希望で満ち溢れた7歳程度の子。

 そこから起こる悲劇。

 うん、いいね、いいね。超最高だよ!

 もう地球に居た頃からずっと私さ、非現実的な事を求めてたんだよ。普通の高校生として生きていて、殺人事件にも巻き込まれなければ、命の取り合いとかスリルな事は決して経験できない。

 ただ将来に向かって皆が必死に生きている――――そんな世界がどうしようもなく私はつまらなかった。

 つまらない世界での将来に、楽しさなんて見いだせなかった。

 私は遊びたかった。好きなように。自分の好奇心の赴くままに。ただ欲望のままに。

 この世界で、私は何でも好き勝手に出来るんだ。

 魔人には法律もない。魔人は人族達にとっては悪の象徴。悪役上等。折角魔人になれたんだから、魔人として思いっきり楽しんで生きるんだ。

 私のやらかす事を誰にも咎めさせたりしない。

 私のやる事で何が返ってこようとも別に構わない。

 もし、私がやらかしてそれで私が殺されたとしても後悔なんてしない。私が決めて、私がやって、そして私に返ってきたものなら文句なんて言うはずもない。

 失敗したら、魔人だとばれたら殺されるかもしれない? 上等だよーって感じ? そんな『殺されかける』とか『命の奪い合い』なんて高校生として生きてればよっぽどの事がなきゃ経験できない事ができるだなんて本当最高だよ。

 とりあえず殺っちゃおー!

 ってことで顔見知りだしまずは話しかけます。

 「ハルマ君、こんなところで何をしてるの?」

 後ろを向いているハルマ君にそう言いながらも近づく。

 ハルマ君は私の声に振り返ります。あどけのない、私を信頼しきった表情に思わず笑いそうになった。

 魔人な私を簡単に信頼しているだなんて、馬鹿らしい。魔人な私にさっぱり気付かないで滑稽だなぁと思う。

 心のうちで私がハルマ君を殺したくて殺したくてたまらないっていう思いを持っているなんて想像もしていないハルマ君は安心しきった笑みをこちらに向けていた。

 「ねぇ、ハルマ君、お姉ちゃんからプレゼントがあるの。目をつぶってくれない?」

 私に殺されるであろう一番はじめの人間に向かって、私は笑いかけた。

 死という名のプレゼントを上げるから! てか、こんな言い方したら厨二っぽいかな。でも私って死神とかそういうのも好きなんだよねー。あー、いつか大きな死神の鎌でも振りまわして人殺して遊びたくなってきちゃった!

 やりたい事、本当に沢山あるの。この世界は楽しみがいっぱいだから、本当わくわくが止まらない。

 「何かくれるの!?」

 ハルマ君はその赤い瞳をキラキラと輝かせて、素直に目を閉じる。

 この子は何処までも純粋だ。私を信じ切っている。

 もっと私に人を殺すための力があるならば、犯人は私だよとばらしてから殺すんだけどなー。そっちの方が楽しそう。知人が人族を殺すことに躊躇いがないと知った時、自分を殺そうとしていると知った時、人はどんな表情をするんだろうか?

 いつか見てみたいな。

 私はそんな風にやりたい事をまた脳内で浮かべながらも、ハルマ君の肩に左手を置く。

 期待したように目をつぶって手を差し出しているハルマ君は、私の右手に《ボックス》から取り出した脅威がある事に全く気付かない。

 そして私はハルマ君の首の後ろ――――人体の急所である頸椎けいついに向かって刃物を振りおろす。それと同時に肩に置いていた手を移動させてハルマ君の口を思いっきりふさぐ。

 それに驚いたようにハルマ君が目を開いても、もう遅い。

 私の右手はハルマ君の頸椎に深く、刃物を差し込んでいた。

 此処は人が切られれば即死する急所のはずだ。本当はもっとパフォーマンスのある殺し方をしてみたいって願望もある。けど、今の私は普通の人族より少し強いだけだから派手にやりたいって思いを先行したら失敗してしまうかもしれない。

 この世界でもっと楽しく生きていくために、即死する殺し方にしたのだ。

 実際にしばらくすればハルマ君は力が抜けていくかのように倒れ込んだ。

 私はそこで、真っ赤な血を流しながらも倒れるハルマ君に向かって思わず笑みを浮かべてしまった。

 次に私は連続殺人事件の犯人がしているように、死体をぐちゃぐちゃにしたの。

 右手にもった刃物で何度も何度もハルマ君の幼い体と顔をさしたの。

 目を、頭を、鼻を、口を、首を、胸を、腹部を、手を、足を―――全部、全部刺したんだー。

 いやー、実際にやってみると今この街に潜んでいる殺人鬼がどれだけ悪趣味が十分理解できるね。だって本当やってみたら死体がぐちゃぐちゃなんだよ?

 原型なんて全然残ってない。顔もわからないの。目玉なんてわれてるし、本当びっくりするぐらいボロボロな感じなんだー。

 ちなみに時間かけすぎるとバレるかなと思ったので十分ぐらいかけてぐちゃぐちゃにしました!

 任務完了って気分で、私は現在達成感に満ちてます。でも『はじめてのさつじん』に浸ってて、人がきたら困るためまずはその場で着替えをした。

 同じ服を《ボックス》にいれてたんだよね。返り血飛ばないようにしてたつもりだけど、飛んでたら困るしさー。

 あと刃物も《ボックス》にいれました。ハルマ君の血がべったりついてるからねー。便利な事に《ボックス》の中のにおいは外には漏れないんだよ! 高性能だよね。

 それらの作業をさっさと私は終えて、さーて、帰りますか!! そんな気持ちと共に私はその場を後にするのであった。


















 その後は何食わぬ顔で食堂に戻りました。出かけてきて少し汚れたからって事で水浴びにもいったの。

 この世界では個人で風呂を持っているのは王族貴族とかばっかりで、庶民は川とか湖で水浴びをするか濡れたタオルで拭くかとかなんだよ。というわけでにおいを落とすために私は川に向かったんだよ。

 川で服を脱いでそのまま水を浴びたの。

 この時間に私以外でも水浴びしてる女の人もいて、一緒に楽しく雑談しながら水浴びしたの!

 それでね、水浴びを終えて体を拭いて戻ってきた時にはハルマ君が何処にもいない、心配だってハルマ君のお母さんが騒いでたの。

 皆で捜索しようって事になって、二人一組で捜索する事になったわ。私はミカヅキさんと一緒に行動したの。

 街に潜んでいる殺人鬼はいつも一人でいる人間を襲っていたから、まだ襲われる可能性が低いって事での対策なの。警備兵の人も子供がいないって事でバタバタしてるの。

 私はね、ばれる可能性はなるべく低くしたいからさー。さりげなく私がハルマ君を殺害した場所に向かって、思いっきり叫んでやったんだよー。

 「きゃあああああああああ」って驚きと恐怖に満ちた悲鳴を思いっきりあげたんだー。

 叫んでからね、はじめて死体を見てショックで動けなくなってる少女を思いっきり演じ切ったの!

 震える私をミカヅキさんは「見るんじゃないよ……」といって抱きしめてくれました。いいおばさんだよね、ミカヅキさんって。

 声にね、ハルマ君の両親とか、警備兵とか皆かけつけてきたわ。

 ハルマ君のお母さんは「ああ、ハルマ……」とその無残な姿に涙を流していたわ。ハルマ君のお父さんは「どうしてハルマがこんな目に――」とショックを隠せない様子だったの。

 どうしようもない思いを警備兵の人にぶつけてたの。

 まぁ、一人息子が原型もとどまってないぐらいグチャグチャにされれば、色々感じるもんだよねー? 真っ赤な血液の上に寝そべる顔もわからない子供にもう発狂寸前なハルマ君の両親達なんだよ。

 殺人犯の私が此処にいるのに誰も『子供の死体にショック受けている少女』な私を疑わないんだもん。本当愉快だよね。

 これでとりあえずはこの街でやりたい事は終わったし、さっさと『死体を見てショックを受けて無理です』などといって街から出ていこうかなー。殺人鬼が捕まる前に出ていくのがいいよねー。

 ミカヅキさんから離れてちらっとどうしようもない気持ちをぶつけるハルマ君の両親とそれを受け止める警備兵のお兄さんたちを見る。

 ハルマ君の両親に「申し訳ない。守れなかったばかりに――」などと謝っているのは30代ぐらいのレベルが80もあるおじさんです。キリッとした顔をした出来る男な雰囲気満載のかっこいい赤髪の人だ。

 そんなにレベル高いならあのウザ男殺してくれないかなーなんておじさんのレベルを知った時に思っちゃったんだよねー。

 レベルは少しは上がってさー、12になったんだけどまだまだあのウザ男殺すのには足りないからね。殺しにかかっても返り討ちにされるだろうし、仕方ないからウザ男を殺すのは諦めなきゃねー。

 「アイちゃん…、大丈夫かい?」

 考え事をして黙りこんでいた私にミカヅキさんが心配そうに問いかける。

 ハルマ君の死体にショックで黙りこんでいると思ってるんだろうね。実際はウザ男殺したいなーとか、レベル上がったなーとか考えてるのに。

 「はい……」

 此処で悲哀感の満ちた少女を演じるのが効果的だよね。

 そうだね、設定はこんな感じかなー。

 知人の子供の、それも残酷な殺され方をした死体を見てしまった出稼ぎに出た少女。殺人鬼の潜む街で恐怖心に脅えていた少女はその光景にこの街に居る事がもう無理だと思ってしまう。

 いつ自分がそんな風に殺されるかわからない。その事に脅えた少女は自身を住み込みで雇ってくれた食堂の女主人に『もうこの街に居るのは…』と告げ、故郷に帰っていく……。

 うんうん、これでいいよね!




 明日にでもさっそくミカヅキさんにいってみようかなー。





 

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