第二章、思い出2
卸本町の蜃気楼、パターン2(過去からの訪問者)オリジナル
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浴槽に浸かる二人は寛いでいた。
良子が何気なく、春菜の右腕を見た。
そこには黒く滲んだ、擦過傷が有った。
良子、「あの時、春菜が賢を助けなかったら、今頃どうなっていたんだろう?」。
(http://blogs.yahoo.co.jp/kome125/60922560.html)
春菜は、自分の傷を見つめて、「この傷は思い出なの、整形外科に行けば直ぐ取れるけど、
あの時の思い出の、アルバムみたいなものなの..」。
良子は急に笑い出し、「あの時、春菜のスカートのポケットから、
300万の札束が出て来た時は、本当に心臓が止まるかと思ったわよ!」。
春菜、「そう言う良子さんだって、あの時スーパー銭湯の事説明したら、
笑い飛ばして、『あんたの時代は、スーパーマーケットの中に、銭湯が有るの?』と、
言った次に私が、『スパー銭湯とは、車が100台以上、駐車出来るスペースが有る、
大型の銭湯の事』だと言ったら、信じなかった癖に、
現代に私が帰って来て、初めて良子さんの家の、このお風呂見た時は、
度肝を抜かれたけどね」。
良子、「アハハハ、あの時代で信じろ!って、言われても無理よ!、
第一銭湯もそうだし、パチンコ屋もそう、
駐車場完備の店なんか、無かった時代だったのよ!」。
春菜、「それに家も車もだけど..、賢パパが乗っていた車と、昔住んでた高級マンションに、
やっかんだ癖に、現代に帰って来たら、それ以上の高級外車に乗っていて、
豪華な家に住んでた事にも、度肝を抜かれたけど」。
良子、「成り行きでそうなったのよ!、私だけでこの財産を、築いた訳では無いのよ!」。
春菜、「賢パパは何時まで経っても、派手好きだったのね~」。
良子、「あの当時から、更に拍車が掛かったのよ!」。
長い風呂を終えて、二人はバスローブを着て、頭にはタオルを巻いていた。
当然脱衣所も広く、透明のガラス張りの冷蔵庫の中には、
ビールとビンの牛乳が置かれていた。
二人は中から牛乳ビンを出して、紙のキャップを取り、腰に手を置いてゴクゴク飲んだ。
飲み終えた二人は、ビンをケースに入れて、寝室に向かった。
寝室も広く、やはり20畳は有ろうか、一つのベッドも、ダブルサイズが二つ置かれていた。
それでもまだ部屋には、相当余裕が有った。
一つは賢が寝ていたベッドであった。
二人は髪の毛をドライヤーで乾かし、寝る前の肌の手入れをして床に付いた。
良子の安らぎの 一時は、床に付いて灯りを消してからだった。
あの当時とは寝心地が違うが、当時の様に 一つ屋根の下で少し距離を置いて、
布団を敷いて、お互いの絆を確かめ合うのは、今でも変わらぬ想いだった。
良子に背を向けながら、床に付いた春菜。
良子はベッドから、背を向けて寝ている春菜を見詰め、「パパに会えなかった事、
後悔してる?」。
春菜、「何時も何処かで、見守っていてくれてる様な気がするの、
だから後悔はしていないの」。
良子、「賢は今度は本当に、春菜を守る側になったのかも、知れないわね」。
春菜、「見えない所で守られていたのは、私が生まれて直ぐだったなんて、
気が付かなかった事の方が、後悔してるの」。
良子、「普通では、考えられない事が起きたのよ、
それを知らなかった頃の、春菜に説明しても、理解は出来ないは..」。
春菜、「ずっとずっと、良子さんも賢パパも、街の何処かで私を見ていたんだね」。
良子、「お嬢様学校に通い、制服を着て自転車に乗った春菜が、
私の横を通り過ぎて行った事もあった。
何気なく派遣で働いている、春菜を見に行った事もあった。
時々庭で遊ぶ春菜を遠くから、見守っていた事もあったは..」。
春菜、「有難うお母さん、育ての親だと思ってるよ、今でも..」。
そう言うと、寝返りを打つ様に、体を良子に向けた。
春菜の表情が、天窓の月明かりに照らされてた。
すると頬に、涙が伝っていたのだった。
この物語はフィクションであり、登場する人物、建物などは実際には存在しません。