第一章、日常4
卸本町の蜃気楼、パターン2(過去からの訪問者)オリジナル
http://blogs.yahoo.co.jp/kome125/folder/1515515.html
その夜、春菜は自分の部屋で、音楽を聴いていた。
過去で良子が柿本に頼んでいた様に、一人部屋は二階で、広さは12畳も有った。
(http://blogs.yahoo.co.jp/kome125/60922326.html)
広いダブルのベッドも、春菜が幼少時代の頃からで、ぬいぐるみや棚には、
好きな作家の本が、ずらりと並んでいた。
更に大きなドレッサーや、洗面所やトイレまで完備していた。
まさに高級ホテル並みだった。
だが柿本夫婦が与えた家や部屋では無く、中川夫婦が建てた家で、与えた部屋でもあった。
これには訳があった。
すると春菜の現世の産みの親、
久美子が部屋に入って来て、「春菜、春実ちゃんが来たわよ」。
春菜、「え?、こんな夜遅くに何だろう?」。
久美子、「春菜、春実ちゃんのオフィスに、携帯忘れて来たでしょ!」。
春菜、「あ~!、そう言えばやけに今日は、メールも電話も来ないと思った」。
急いで階段を下りて行き、玄関に行くと春実が立っていた。
春菜、「ごめ~ん、うっかりしてた!」。
久美子も玄関にやって来て、「ごめんなさいね!、態々届けてくれて」。
春実は春菜の、携帯を手にしながら、「こちらこそ!、今日は春菜のお陰で助かりました。
山積み書類を片付けてくれて、感謝のしようが有りません!」と、深々と頭を下げた。
久美子、「いえそんな事、こちらこそ春菜の事を面倒見て頂いて、
感謝しようが有りません」と、やはり産みの母も、頭を深々と下げた。
すると久美子は、手を差し伸べて、「良かったら、上がって」と、誘った。
春菜も、「まだ夜は寒いから、少しお茶でも飲んでいって」と、春菜も誘った。
お言葉に甘える事にした春実は、居間に通された。
居間のコタツで、春菜の家族と春実は会話が弾んでいた。
春実、「母もすでに老人と呼ばれても、おかしく無い歳ですから」。
春菜の父、俊夫が、「私ももう時期、退職ですよ。
公務員も不景気に煽られて、早期退職での優遇を、
求められていますから」と、溜息を付いた。
久美子、「高度成長期は、サラリーマンが羨ましくてね。
仕事の経費で接待ゴルフやら、接待での宴会やら、
会社のお金で遊んでいる、民間の社員が羨ましく思ったものよ」。
俊夫、「世の中は皮肉でだね、まったく」。
春実はお茶をすすり、「調子付き過ぎたのですよ、
不景気になっても、土地の値段は下がらないと信じてた銀行も、
宛が外れて喘いで、合併を繰り返して、大きくなったは良いけど、
小回りが利かなくなって、貸し渋りや貸し剥がしが多くなる始末で..」。
久美子、「中小企業も苦しいみたいね」。
春実、「結局銀行は中小に貸し渋り、更に剥がして、経営出来なくさせていますから..」。
俊夫、「銀行の貯金額は、減る一方だから」。
春実、「合併した大手銀行は、一般貯金と大手企業との契約で、
保っていますが、その大手企業は、子会社やその孫会社が、
開発した製品や技術を買って、成り立ってる要素が有ります。
ですがその子会社が経営不振だと、大手の自社が開発コストを掛けて、
製品を向上させなければ、ならないのです。
今まで全てを、子会社に品質向上を、求めて来た訳では有りませんが、
子会社が品質の向上をする力が無くなると、大手は困ってしまいます」。
春菜、「大手が駄目だと、我々みたいな仕事は、真っ先に影響が出るの」。
俊夫、「その品質と生産は、物価が安い、中国に流れて行った訳か..」。
春実、「それはあくまで三年前の話。
今は中国の国内での生産が盛んで、人の国の部品の品質なんて、構っていられなくて、
だからと言って、日本国内で品質向上や、生産を持って来ると、
経費が掛かり過ぎて、採算ベースに乗らないので、悪条件が重なって、
受注生産になってしまい、あえなく会社を縮小ならぬ、極小するしかないのが現状です」。
久美子、「これから日本は、どうなるのかしら..」。
この物語はフィクションであり、登場する人物、建物などは実際には存在しません。