第十章、結託 2
卸本町の蜃気楼、パターン2(過去からの訪問者)オリジナル
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その頃、春実はと言うと、
すっかり中川家の、お嬢さんに成っていた。
キッチンで久美子と夕飯を作り、テーブルには俊夫が座っていた。
から揚げから、天ぷらなど今夜の夕飯は、揚げ物づくしだった。
春実はテキパキ料理をこなして、テーブルに並べて行った。
久美子は味噌汁を作っていた。
すると春実は冷蔵庫から、ビンのビールを取り出し、
栓を抜いてグラスをガラス戸棚から出して来て、俊夫の前にグラスを置いてビールを注いだ。
俊夫、「お~有難う!」と、グッと注がれたビールを 一気に飲んで、「あ~、
長女に注がれたビールは格別だね~」と、味わっていた。
春実、「アハハハハ!、春菜程可愛くないけど、娘をチェンジで、
今日は尽くしますよ!」と、調子良く答えた。
久美子、「そんな事無いわよ!、春菜はお父さんに、ビールなんて注いだ事は無いのだから」。
すると俊夫は、「春実ちゃんもどうだい!」と、ビールビンを持った。
春実は、「あ..それでは、お言葉に甘えて」と、
先程のガラス棚から、グラスをもう一つ出して来て、グラスを俊夫に差し出した。
注がれたビールを一気に飲んで、「あ~、やっと平和な家族の娘になれた!」と、喜んだ。
久美子と俊夫は笑った。
そうして料理を終えた久美子と春実は、食卓に着いて夕飯を食べ始めた。
久美子、「迷惑掛けっ放しでごめんね」。
春実、「イヤイヤ、それはこちらが謝らないといけない事で、
まったくあの傲慢な母親のせいで、仕事の歯車狂わされていて、
春菜にもえらく被害を及ぼしてしまって、なんと謝って良いか..」。
俊夫、「それで良子さんは、落ち着いたのかい?」。
春実、「悪い意味で落ち着いていますね..。
春菜にいよいよ愛想尽かされて、放心状態です」。
久美子と俊夫は同時に、「あちゃぁ~」と、顔を下に下げた。
久美子、「そろそろ杉浦さん宅に、御挨拶行かなければねぇお父さん!」。
俊夫、「この頃、一緒に星観測にも出掛けて無いしな、
新しい望遠鏡の話を種に、杉浦さんと今後の両人の話をして来るかな!」。
春実、「まぁ、作戦開始と言う事で...」。
久美子、「良子さんの気持ちも、汲んで上げないとね..」。
春実、「いずれにしろ母親は、一人ぼっちになりますから、
これ以上母親に年取られると、更に聞き分けが無くなりますから、
いつかは話し合わないと、いけないから..」。
俊夫、「直子さんはどうなんだい?」。
春実、「あのお方は、時期に連れ去られますから」。
久美子、「連れ去られるとは?」。
春実、「何らかの理由で、あのタイムドアーを作った誰かは、春菜を現代に帰しました。
別に間違って春菜が、自ら戻って来た訳では無く、連れ戻された様ですので、
直子さんもどんな形かは解りませんが、過去に置いて来ないと、
タイムドアーの製作者は、都合が悪くなると考えられますから、
多分ここ2、3ヶ月の間に実行されると思います」。
俊夫、「春菜は戻りたくは無かったと、言っていたよ!」。
久美子、「過去では自分が必要とされていたし、何より楽しかったとかで..」。
春実、「その過去に降り立った時に、洋子叔母さんから、『あんた、このまま帰れないと、
年老いた姿を親が見たら、嘆くわよ』と、言われたそうだけど、
春菜は、『それでもいい』と、答えたそうです」。
久美子、「あの子らしいわね!」と、呆れた。
俊夫、「ん?、何となく見えて来たぞ!」。
その言葉に、久美子と春実は注目した。
俊夫、「春菜が会社から戻らなければ、我々は必ず失踪届けを、
警察に出す事になるが、失踪届けを我々が出す前に、春菜が失踪する事は我々が、
知っている事になる!」。
久美子、「あらどうして?」。
俊夫、「春菜は実名で過去に、あの会社に名前を残すと、
あの会社で働いていた人は、大勢居るから過去から、戻って来ない春菜の素性は、
春菜が生まれる前の時点で、我々に伝わるはずだ!」。
春実、「部長さんと同じ事言いますね!」。
俊夫、「そう、その犯人にとっては、タイムスリップした事実を、
春菜が過去の人に伝えてしまうと、実は困る事になるんだよ!、
それはあくまでも、春菜が三年前に実家に、帰宅しなかったらの話だが」。
久美子、「どう言う事?」。
俊夫、「春菜の持っていた、携帯電話に付いている時計だよ!」。
春実、「あ~~!!!!、そうかぁ~~~!!!」と、酷く驚いた。
俊夫、「携帯電話の暦と日付、それに現在時刻それは、
昭和44年の時と照らし合わせれば、
春菜がタイムスリップした時刻が、正確に割り出せる事になるんだよ!。
それと着信履歴、送信履歴、更にメール着信履歴も、証拠となるからより確実だよ。
それで!、春菜を過去で殺せば、過去の人は春菜が、
現代でタイムスリップした、正確な時刻を割り出せるから、警察に事情を話せば、
警察は待ち構えて三年前に、タイムドアーを調べざる負えない。
なので犯人は過去で、春菜が持っていた、携帯電話を奪ばわなければならない。
春菜が携帯を売った先の、質屋の親父さんは、
消されても誰も気に掛ける人はいないから、殺しても良いと考えた。
犯人は現代と過去に、繋げた時間を取り消したいなら、更にその前の春菜が間違って、
開けてしまったドアの時間を、取り戻さなければならない訳だから、
方法は春菜が現代であの会社に、就職させない様にするか、
現代であの会社に就職する前に殺すかの、どちらかの選択になる。
でもそうすると、今の我々のこの現状が無い事になる。
春菜が過去に行かなければ、この関係が生まれないはずだから。
犯人からすると、問題は春菜が過去から通常時間を過ごすと、
確実に春菜は自分がタイムスリップした後と、しない前がダブり、
同じ時間に同じ自分が、二人存在する事が起きる。
春菜が生まれた年から我々に姿を現し、
タイムスリップした自分の姿を見せて、
自分が路頭に迷わない様に、最初から何らかの形で告げるだろう。
それとタイムスリップした時刻は、知っているから、
会社の地下倉庫で待ち構えて、犯人を自力で見つけるだろうからね。
しかし確実に大学を出てから、春菜は就職難に遭って、
路頭に迷った事実が存在しているなら、犯人は極力自分に辿り付かない方法としては、
春菜を現代に帰すことだった!」。
久美子、「直子さんは戻れないでしょ?」。
春実、「戻さないとマズイのです。
失踪届けは出されていませんが、確実に過去に直子さんが、居た事実は消せません。
春菜と同様、あの会社に名前を登録してるし、現代ですので、
肌年齢を調べれば、確実に65歳になっていないと、いけない直子さんは、
25歳の肌でそれは、科学的検査をすれば解る事です。
大勢の人が直子さんが、失踪した事実は覚えていますし、
出生届けも、学校の卒業暦も残っているで有ろうし、
これを世間に公表してしまえば、国は調べざる負えなくなります。
すると必ず犯人は、実態を恐れて過去に直子さんを戻します」。
久美子、「ややこしい事になったのね!」。
俊夫、「そのややこしい事で、中川家と柿本家は、待望のマイホームを、
手に入れる事が出来た訳だよ!」。
春実、「そのお陰で、久美子さんと私は出会えた訳で..」。
俊夫、「その前の時点で、春菜が良子さんと出会えて、
我々に大きな土地を安く譲ってくれた訳だよ!」。
三人同時に、「春菜かぁ~!」と、言い放ったのであった。
そして夜も更けた中川家は、三人で居間で寛いでいた。
すると夜も11時を過ぎた頃、家の呼び出しベルが鳴った。
その時、春実は、「来かぁ~」と、渋い顔付になった。
久美子は、「出るわね」と、言うと春実は、「私が出ます」と、
玄関に向かった。
春実は玄関のドアの鍵を開放して、ドアを開けた。
すると良子は驚いた。
良子、「春実...」。
春実、「来ると思ったがな#!」。
良子、「は..春菜は?」。
春実、「居ない#!」。
良子、「どこ...」。
春実、「今度はママが、ストーカーになるのかい#?」。
すると久美子が遣って来て、「事情は春実ちゃんから聞きました。
お話しましょうか」。
そして居間に通される良子だった。
俊夫、「待っていましたよ、春実ちゃんが多分良子さんが、
今日ここへ来るからと言う事で」。
良子は座り、俯いていた。
良子、「携帯にメールしても、返事が返って来ないの...」。
春実、「来る訳なかろぉ#!」。
久美子、「喧嘩されたそうですね..」。
良子、「.......」。
俊夫、「まあ、先程も春実ちゃんと、お話したのですが、有り得ない事態は、
時にして無常にもなりますね」。
良子、「反省したの私..」。
春実、「だからそれを今直ぐ、春菜に伝えれば、戻って来てくれるとでも思ったんかい#!」。
良子 → → → →!、久美子に転送完了!。
久美子、「良子さんに上げたつもりでしたよ!春菜..」。
良子、「へ!」。
久美子、「でも、春実ちゃんも、春菜もあなたから、心離れてしまった様ですね」。
良子、「一文無しです..」と、俯いた。
俊夫、「あなたは風だ!春菜は太陽。
風は旅人のコートを吹き飛ばす手立ては、より強く風吹かせることだった。
春菜はサンサンと太陽輝かせ、旅人はコートを自ら脱がせる様にさせた。
違いが解りますか?」。
良子、「あの子に脅かしていたのですね、知らぬ間に私は」。
久美子、「あなたは春菜を脅かして、引き付けていた様に思っていますが、
春菜は本当に心からあなたを、愛していたのですよ!」。
良子は急に泣き出し、「あの子は全て、私の望み通りにしてくれました。
過去に繋がり現代でも、私の幸せを繋ぎました」。
久美子、「それはあの子も、同じ思いですよ」。
良子、「昔別れた男とも結ばれました。
長男長女にも恵まれました。
全てあの子のお陰でした。
でも私はあの子に溺れました」。
この物語はフィクションであり、登場する人物、建物などは実際には存在しません。