第九章、恋心ステージ2
卸本町の蜃気楼、パターン2(過去からの訪問者)オリジナル
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そして次の週。
すっかり春らしくなった4月、相変わらず不景気は続いていた。
部長も何だか、柿本オフィスの部長に成っていた様で、
用が無くても、誰かが会社に連れて来ていた。
先週の話を聞き付けた、もう会社を退職したあの会社の社員も、
今でも個人で事業を営む連中も、何となく会社に足を運ぶ様になっていた。
すでにこのフロアーは、毎日同窓会の雰囲気だった。
相変わらず部長は毎日、直子にセクハラで尻を叩いていた。
アレから春菜は、防弾グッツを持たされて、各会社を訪問していた。
そんな或る日、休みで会社に遊びに来ていた大輔が居た。
大輔は椅子に座りながら、ズボンのポケットに手をつっこんでいた。
洋子、「あんたバイクの修理の達人だと、市内では有名になっているじゃないか!、
大したもんだよ、流石は父譲りで遊びも仕事もクールだね!」。
部長、「あの会社の誰かの息子か?」。
圭子、「杉浦君の息子よ!」。
部長、「おぉ!、今で言うイケ面杉浦か!」。
洋子は小声で、「春菜の彼氏なの..」。
部長、「あ~、それは好ましいことじゃが、一人面白く無いのが居る様じゃが..」。
良子、「##」。
大輔、「そんな事ね~よ!、バイクの修理の腕利きなんて、
この世の中に五万と居るよ!」。
部長、「今の若者にしては、立派じゃの!、自分を高く評価しないで、
謙遜する所は、大物に成りそうで、芯がしっかりしておりそうじゃ!」。
良子は不機嫌ながらも大輔に、「大輔、それで今日は春菜と何処かへ、
遊びに行かないの?」。
大輔、「心配しないの?、『成り行きで子供が出来たらどうするの?』って」。
良子、「春実がしゃべったか#!」。
大輔、「叔母さん抱き上げて、連れ去ってくれる人、
もう亡くなったから参ったなこりゃ!」。
良子、「大輔#!」と、激怒した。
部長、「何だ!、又現代でも良子は、春菜のボーイフレンドに、
焼餅やいているのか..」。
圭子、「たわいもない!、大輔が鼻水垂らしてる頃から、
知ってる子なんだけど」。
良子、「生まれて間もない頃からよ#!」。
洋子、「いい加減にしなさいよ!良子、あんた死ぬまで春菜に、
縋り着いているつもりかい?」。
春菜、「喧嘩しないで#!」と、激怒した。
部長、「今日春実はどうした?」。
圭子、「自分の会社よ..、直子も..」。
部長、「こりゃ~荒れるぞ!」。
大輔、「叔母さん春菜を嫁にくれ!」。
良子は急に動きが止まり、「な..なによ急にぶっきら棒に?」。
春菜も、「な..何言い出すの..」。
圭子、「大輔、あんた言う人が違うわよ!。
それは春菜の現世の産みの親、久美子さんに言いなさいよ!」。
洋子は良子を指差して、「これに言ったってしょうがなでしょ、
産んでないんだから実際には」。
その一言で、猛烈に頭に来た良子だった。
良子、「失礼ねぇ#!、いくら産んで無いって言ってもねぇ#、
この子を会社で物になるまで、どれだけの年月を、掛けたと思っているのよ#!。
人生修行の過酷な体験をさせて、それから手間暇掛けて、要約会社の軸になったのよ#。
それにねぇ!、この会社の優秀な幹部よぉ#、そう易々と結婚なんて許さないわよぉ#」。
部長、「その大輔君は、別に春菜を遠い何処かへ、連れ去って、
一緒に暮らそうとは、考えて無いのじゃろ?。
君もこの近くで仕事は、認められてるだろうから、
結婚すると言うだけで、当面は今まで通りの、
生活を望んでいるんだろうと思うが、どうだ?。
先程君も申しておったが、『バイクの修理の腕利きなんて、世の中に五万と居る』と、
己をよく知っておる。
それに君の目の奥底に、良子と春菜を無理やり自分本位で、
奪おうとは思っておらん様じゃからな」。
大輔、「爺いさん勘がいいな!、でも春菜は奪うぜ!叔母さん」。
良子は急に椅子から立ち上がって、「奪うと言うなら、この私を倒してからのしな#!」。
大輔、「望むところだ!、泣く子も黙る青森の女番長、大槻姉さん!」。
二人は睨み合った。
春菜はどうして良いか分からず、二人の間をおろおろするばかりであった。
春菜、「お願いだから止めてぇ!」。
はんべぞで訴える春菜。
良子は流石に昔は女番長で、
いくら昔から馴染みの子でも、視線の揺らぎが無く、
大輔を睨み付けていた。
大輔もやはり肝は据わっている、昔から喧嘩なら負けない、
街でも名の知られた男だった。
良子はその時、大輔を睨みながら机に置いて有った、湯飲みを手にした。
大輔は革ジャンに手を入れて、何かを掴んだ。
良子、「そんなちんけなナイフで、私が怯むと思うか#?」。
大輔、「叔母さんそれを投げて、頭に食らったて、俺は倒れはしないぜ#!」。
春菜はもう大泣きで、床にしゃがみ込んだ。
部長、「春菜心配せんでもいい!、見ていれば分かる。
二人とも怪我はせん!」。
そして大輔はゆっくりと、良子に近づいた。
良子も最高の緊張感だった。
良子の額からは、脂汗が滲み出ていた。
大輔、「叔母さん!、アメリカのタイマン知ってる?」。
良子、「知らないわよ#!」。
大輔、「お互いどちらかの手を繋いで握り、
武器を持っている手だけで戦うんだ!」。
すると良子は、湯のみを持っていない方の手を、前に出して手を開いた。
大輔は革ジャンのポケットから手を出すと、みかんを持っていた。
それを開いている、良子の掌に乗せた。
そして良子の肩を 一つ ポンと軽く叩き、
「叔母さんの春菜に対する気持ち、
よ~く解ったよ!」と言って、革ジャンの両ポケットに両手を入れて、
このフロアーから出て行ったのであった。
良子は固まりながら、片手に湯飲みを振り上げ、
片手にみかんを持っていたのだった。
部長、「だから心配せんでも良いと、言ったじゃろ#!。
ワシの言う事を聞かんから、泣き喚く事になるんじゃ!春菜..」。
この物語はフィクションであり、登場する人物、建物などは実際には存在しません。