第八章、寂れ行く街3
卸本町の蜃気楼、パターン2(過去からの訪問者)オリジナル
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すると年老いた部長は、椅子から立ち上がり、直子の座っている椅子に行き、
直子の尻をポンと叩いた。
部長、「おぉ~!、まさしく本物じゃ!、正真正銘の25歳の直子じゃ!、
貴重じゃのぉ~、このやんちゃな娘は..」。
春実、「御老体、女のケツの張り方で、違いを見分けるとは、
さぞかし若き頃は、暴れん坊将軍でござったの!」。
部長、「わ!、は、は、は、は!、ワシはそちらの方はもう、OBじゃ!」。
春菜、「な..なに、このコンビ?、徳川家康と水戸黄門の会話なの?」。
圭子、「その発想は、かなりサプライズよ!」。
良子、「何を遣っているのよ、部長#!」。
部長、「おや、その声は背の高い良子か?」。
春菜、「だからさっきから車の中で、以前あの問屋に勤めていた、
良子さんの会社に、直子さんが居るから見てください!って、言ったのに!」。
三人集と直子は大笑いで、圭子、「人の話は記憶に飛んで、実物見てから、
実感するのよ!、私の親と同じねアハハハハ!」。
洋子、「部長!、記憶力はさて置き、まだまだ現役でいらっしゃる!」。
直子、「やはり男の生命力は、性欲が司るのよ!」。
春菜と春実は同時に、「ご立派!」と、答えた。
春実、「91歳に引きこもり20歳が、負けてるぞえ!女のケツで年齢判断とはのぉ」。
春菜、「シブイ!」。
部長、「それよりもこの不景気は、始末に負えん。
春菜の言った通り、何でも機械任せにし過ぎじゃ!」。
直子、「そうよ#!、部長の言う通りよ!、こんなに機械仕掛けでは、
人間要らないじゃない!」。
部長、「本来人間に役立つ為の物が、機械の為に人間が居る見たいじゃぞ!」。
圭子、「そう言われてもねぇ」と、溜息を付いた。
良子は部長にお茶を入れ、和菓子も差し出した。
部長は、「お構いなく」と、軽く頭を下げた。
良子、「それで今は、隠居の身で悠々自適でお暮らしに?」。
部長はお茶を一口飲み、「そうでも無いのじゃが、
息子どもが今仕事に喘いでおってのぉ、新しい産業を改革しようにも、
銀行が貸し渋っていて、ワシは春菜のお陰で優良株から、先物から得ては居るが、
売ってもこの御時世では、到底開発資金の足しにはならん!。
バブル期で金に替えた財産なども、この老いぼれジジーが、
会社を辞めてからの、生活費に回ってしまい、
医者料と税金でもう、底を付きそうじゃ!。
長生きなんぞするもんじゃ~ない!」。
圭子、「そんな事有りませんよ、91歳にしては、お元気ですよ!」。
部長、「痩せ我慢じゃ!、人に頼ると直ぐ足腰が弱るでのぉ~、
老いぼれていても、若い者を頼りにせんようにしておる。
それにな!、ポックリ行く為には、体が丈夫で突然心臓発作か、
脳溢血でも起きん事には、体が弱れば病院行きで、
これから無理やり10年も生かされたら、
息子達に迷惑は掛かるは、自分も辛いはで、大変な事になるでのぉ」。
洋子、「深刻な問題だねぇ、まったく!」。
圭子、「家もそうよ、両親は二人共介護老人ホームで、
保険が利いても、月30万くらい掛かるのよ!」。
部長、「この頃の若いもんは、何故地べたに座っておるのじゃ?、
しかも昔騒いだ、洋子が欲しがっていた、携帯電話を見ながらニヤニヤして、
まだポンポン(バイクの事)で、走り回ってたバカどもの方が、
若者らしく見えたぞ!、あれでは明日の日本の未来は、絶望的じゃ!」。
良子、「今の若い子は、小さい頃は外で遊ぶと、変質者が横暴していた時代で、
危険なので、室内で遊ぶ事が多かった。
なので何処に行っても、自分の部屋感覚なんです」。
春実、「いずれにしても、部屋の中で引きこもっていれば、
発想は豊かにはならんのぉ」。
直子、「誰がそうしたのよぉ#!、
面白くもへったくれも無い、この街にしたのは誰#?」。
春菜、「何か歌にも有りませんでした?。
テレビも無いし、ラジオも無いし、車もそれ程走って無いし、
ギターも無いし、バーも無いし..」。
春実、「それを全部、否定に置き換えると、今の若者になる。
テレビもあまり見ない、ラジオなんて聞かない、車なんか乗らない、
ギターを弾くなんてかったるい!、バーなんか金も無いし、
酒も飲まないから行かない!」。
部長、「それでは今の若者は、何を追いかけているのじゃ?」。
春菜、「仮幻想、妄想、奇跡、サプライズ!、人頼り、
派遣の仕事が出る事、履き違えた自由、株価、貯金、ネット仲間、
ブログ人気、アニメの男の子女の子かな?」。
皆さん絶句だった。
洋子、「どうすりゃいいのよ#?」。
部長、「それじゃよ!、そのどうすればいいの?が、世の中悪くしておる!。
どうすれば良い?では無く、小さな事からコツコツ思い付いた事を、
実行する事に文明開化が有った。
嘗て或る自動車会社の設立者は、自分が信じた道を突き通す為には、リヤカーを引いて、
その中に工具を入れて、ポンポンの修理に回った。
バカにされ様が、何が起き様がいつか自分が信じた道は、
世界を制するモーター産業に成ると信じて、裸一貫で営んだ。
彼が信じた様に、世界に名を轟かせた。
じゃが彼は学歴は無かった。
学歴は時として、理屈の中で理論を潰す。
何か発想をしても、頭で考え頭で案を展開して潰す。
実際に実行して見ないと、分からない事は多いが、
頭の仮定だけで、実行に移さない事が多い!」。
春菜、「そうか!、小さい頃から実体験に乏しいから、
何か発想しても、現実味が湧かなくて、直ぐ諦めてしまう」。
部長、「昔の子供は、科学的根拠よりも、
自分が実験して、その理屈を知る事が多かった。
じゃが今の子供達は、孫でもそうじゃが、人と付き合う時にでも、
その人の情報が無いと、おしゃべり出来ない事が多いのじゃ!。
例えば同年代との交流なら、初めて会う人と話の切欠が思い付くが、
これが就職して複数の違う年代の人と、交流を持たなければ成らなくなると、
年配の人の情報が無いので、しゃべれない。
普通どんな年代でも、話の切欠で今日の天気や、最近起きた事件などで、
会話の切欠が出来るが、会社に入るまでは、家と学校の往復だけの育ちは、
社会生活には向かない、従い引きこもりになるのじゃ!」。
春菜、「派遣で働いていた時、正社員でも上司との交流を拒むの、
逆に派遣側の方が正社員に成りたいから、上司に誘われると呑みに付き合うの、
結局会社側の方針で、派遣は正社員には成れなかったけど、
でもプライベートで付き合う事をしないと、仕事の時にその上司の性格と、
自分の性格の互換が取れないから、書類もスムーズに通らない事が多くて、
結局本質的に会社で稼動していたのは、正社員よりも派遣社員だった。
正社員はそれにあやかり、大分楽をして来たけど、景気が悪化して、
派遣切りをすると正社員は、大変になるのでは無いかと思うけど..」。
洋子、「あたしゃ、人の事は言えないがね、景気を押し上げた我々の親が、
裸一貫で地道に土台を作って来た上で、私達は事業を展開して来た。
だがね、今はその地道な土台を作れないから、やたら皆人任せになるんだ!。
独自性より複製、つまり一つ当たると、それにあやかり、同じ行いをして、
値段競争になり、採算が取れなくなって減少すると、また同じ事を繰り返す」。
それは学歴でも同じ事さ、皆大学を出るから、学歴は在り来たり、
会社側はそれ以上の、才能を会社側は求める。
だが、才能の有る人材はすでに、ヘッドハンティングされるか、
自分で事業を始めるから、会社側が欲しくても確保出来ない訳さ!」。
春菜、「それ、昔の部長にも言われた!」。
部長、「結局学歴など、就職する時の優先順位に過ぎん!。
就職してからその人材が、会社を立てるか滅ぼすかは、
扱う側の指揮にもよるが、根本的に社員の団結がないと、会社は脆いものじゃ!。
今は何でもパーツを嵌め込む様に、派遣やら契約やら、
社長まで何処からか、引っ張って来る有様じゃ!、
それでは会社は、耐久性など無いに等しい!。
あの有名な自動車会社の社長は、あの人を慕う優秀なスタッフが居たから、
あの会社は世界に誇れる、自動車会社になったのじゃ!、
それはどの会社も同じじゃよ!、社長の熱い情熱に心動かされた人々が、
まだ灯されぬ、見えない今で言う妄想を、現実にしようと遥かに遠い、
夢の彼方へと旅を続けたのじゃ!」。
皆んなその言葉に感激した。
この物語はフィクションであり、登場する人物、建物などは実際には存在しません。