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ショートランド世界について 3

1 ショートランドの歴史


 5カ国に分裂中のショートランド(第1話当時は3カ国)ですが、過去二つの統一国家がありました。ここではその統一国家から現在の分裂時代まで、各国について簡単に説明します。



○ サーランド王国 ○

 この歴史上初の統一国家は、人間と獣人との長く激しい戦いの末に生まれました。建国と同時にショートランド暦の記録が始まったため、SL暦0年が建国年にあたります。

 別名を魔導王国ともいわれるこの国は非常に高い魔法力を誇り、その高々度魔法の粋を集めて、自らの力で無際限に魔力を生み出す大魔晶宮を首都サーランドに作り上げました。その後、大魔晶宮から魔力の供給を受けて備蓄する小魔晶宮が各地方都市に設置され、そこからいつでも魔力を引き出せるように、個人用の魔晶石も作られました。魔晶石を携帯することで、魔術師たちはいつでも魔力を利用できるようになりました。それだけではありません。この『石』の発明によって、すべての人々が魔法を使えるようになったのです。

 魔法による恩恵はさらに飛行船や転送円の開発に結びつきます。安全かつ迅速な移動手段、自然現象の制御などが次々に実現し、サーランド王国は栄華を極めました。

 サーランド時代にはまた、現在ではほぼ失われている二つの魔法技能がありました。だれもが日常的に使用した小魔法(0レベル魔法、キャントリップ)と、高度な術者だけが行使できた魔導技能マジックマスタリーです(小魔法と魔導技能については後出参照)。

 しかし、王国の栄華は長くは続きませんでした。この国を支えた魔晶石の存在が、二つの大きな弊害を生み出したためです。一つ目は、本人の能力が低すぎて魔晶石すら扱えない人間がいたことです。魔晶石の有無は選民意識を生み、石を持たない者は奴隷として生きるか、都市部を離れ、怪物が闊歩する危険な未開の森か山奥で暮らすしかありませんでした。

 二つ目の弊害は、魔晶石に頼るあまり魔導の探究を怠るようになり、そのため自力で魔法を使える魔術師が激減したことです。

 王国は衰退の一途を辿り、SL暦107年からは貴族の内乱が始まります。199年にすべての魔力を吸い尽くすゴーレム『魔神兵』が登場し魔晶宮が破壊されたことによって内乱は終息を迎えますが、同時に魔導王国サーランドそのものも完全に滅んだのでした。



○ ショーテス王国~新ショーテス王国 ○

 サーランド王国末期には、魔術師による支配を良しとしない、非市民を中心とした反乱軍が数多くいました。サーランド王国崩壊後、彼らは次代の覇権を争います。ですが、ショートランドの肥沃な大地を狙っていたのは、人間だけではありませんでした。サーランド時代には山奥や森の深部に押し込められていた怪物たちが、戦いの場に出てきたのです。最初は個々に動いていた彼らでしたが、215年ごろ竜王と虎族を中心に怪物軍が組織されました。

 個体での能力において勝る怪物らが組織だって対抗してきたため、たちまち人間側が不利になりました。その中で、カウレス=ショーテスをリーダーとした一団が台頭します。彼は三剱の剣士セリアス・ロイド=グーデルバーグらと共にバラバラだった反乱軍をまとめあげ、恵みの森で虎族の砦を落とし、ハイランド(現在のショーテスの町のある付近)の地で竜王を打ち倒すと、その地でショーテス王国の建国を宣言しました。218年のことです。

 建国当時は全国を統一していたこの国も、時とともに徐々に勢力を失い、301年に制定された自治都市権を足がかりとして、後発の三国(フィルシム、ガラナーク、ラストン)に領土を奪われ中央に孤立しました。相互不干渉の永世中立宣言をしたため、暫くの間は王国として危うい均衡の上に存続していましたが、431年国王が暗殺され、唯一の後継者である王女ローラナが亡くなったことで完全に滅びました。

 その後、ショーテスの町の支配権は色々な国に移りましたが、433年にガラナークが支配権を獲得して以来、現460年までガラナーク王国の支配下にありました。

 460年、領主マリス=エイストは、妻である魔術師ミーア=エイストが張った光の結界カーテン内でショーテス独立を宣言し、新ショーテス王国を再建しました。現在、この結界により、だれ一人としてショーテス内へ入ることができないといわれています。



○ ガラナーク王国 ○

 俗にいわれる「三国」の中で一番最初に独立したのが、ガラナーク王国です。この国はショートランドの南部の山脈に位置し、強力な軍事力と法律、そして信仰の力によって国を治めている宗教国家で、「神聖ガラナーク」とも呼ばれます。首都にはエオリス正教の総本山があり、国家はエオリス正教の大司教とノースブラド王家によって統治されています。

 山岳に囲まれた地形、優れた武器や鎧の生産から、鉄壁の防御をものしていましたが、432年邪神の降臨で王家はヴィンデーミアートリクス=ノースブラド(ミア王)一人を残し全滅、首都ガラナークは壊滅的打撃を受けます。以来、ミア王の早世、大司教の交代、ラストン王国との戦争、皇子の行方不明と不幸な出来事が相次ぎ、国力が安定しません。

 さらに、ハイブを召還した犯人が王家の人間(皇子の伯母)だったため、他国に対して一歩引いた姿勢を取っており、現在は極端な情報統制が敷かれているようです。



○ ラストン王国 ○

 次に独立したのが、東部に広がる平原、別名「世界の穀物庫」に位置するラストン王国です。この国は、魔法の力によって治められている議会制国家で、国王と大魔術師、貴族によって構成される議会が実権を握っていました。

 首都ラストンは魔法で守られ、知略に長けた国家色と相まって無類の強さを誇っていました。国民は10歳になると魔術師の資質の有無を検査され、素質のある者は相応の教育を受けて、国力の維持に努めました。一方、素質のない者は、貴族以外は奴隷として無料同然で売られ、労働力や実験材料にあてられていましたが、前国王ステビアがこの制度を廃しました。

 王家はエンカルーター家といい、血族ではなく、素養で選んだ人間を養子縁組し、その中で優秀な者が王位につく習わしでした。445年、前王が時期国王を決める前に早世したため暫くは議会が王権を代行していましたが、十数年のうちにガラナークとの戦争やハイブ騒動で国土のほとんどを失います。辛うじて、議会のわずかな生き残りがディバハで臨時政府を開き、ハイブ討伐隊を結成するなど活動していました。しかし、その臨時政府もカノカンナ軍の侵攻により崩壊し、ラストン王国の長い歴史はその幕を閉じたのでした。



○ フィルシム王国とカノカンナ王国 ○

 三国で最後に独立したフィルシム王国は、北部の森林と丘陵を中心に位置し、弱肉強食をモットーとした王国です。この国に住む人々は怪物たちと共存しています。初代、コォシュリスロゥテアステア=リーヴェン王(通称カラー)が怪物の王「竜王」と手を結んで発展した国で、正規軍の中にも怪物による軍隊が存在します。街の中でも公然と怪物が跋扈しており、三国中最も怪物による危険が大きいともいえます。

 現在のディーン王となってから王家は急速に求心力を失い、不満や造反が相次いでいました。そして遂に、460年年明け早々、魔術師で一介の冒険者上がりの領主リルケ=ステュワートに、一地方都市カノカンナの独立を許してしまいました。リルケは、侵出最大の難所であったディバハ湿地をどうやってか大群を率いて渡り、ラストン王国最後の街であるディバハを陥落、かの王国の歴史に終止符を打ち、カノカンナ王国を設立したのでした。





2 キャントリップ〔小魔法〕


 小魔法キャントリップは、魔力の扱い方を学ぶために覚える初歩の呪文で、別名(ゼロ)レベル呪文とも呼ばれます。常日頃、魔法とよく接するサーランド時代の人びとや現在のラストン人は、学校で授業の一環としてこれを学ぶため、魔力の扱い方が自然と身についていきます。そして普通のひとでもこの小魔法が使えるようになるのです。逆に、仮令たとえ魔術師であっても、ラストン人以外にはこれを使うことができません。

 キャントリップは、通常の呪文に必要な要素、つまり複雑な身振り手振りや難解なルーンの詠唱を必要とはしません。その代わりに、戦闘時や絶体絶命の場面など、本気のときの使用には耐えません。どれも身の回りに関わるものが多く、その効果は生活にちょっとした潤いを与えるようなものばかりです。代表的なものとして「食事の味を変える」、「うなずかせる」、「ほこりを払う」、「温度を上げる/下げる」、「甘いものを出す」、「植物を成長させる」、「色を変える」、「簡単な縫い物をする」などがあります。

 キャントリップの一日の使用回数は、その人の知力によって左右されます。ほかに、魔術師であれば1レベル呪文の記憶と引き替えに、より多くのキャントリップを使用することが可能です。





3 マジックマスタリー〔魔導技能〕


 魔導技能マジックマスタリーとは、サーランド王国期の魔術師が自らの魔法能力を強化するために編み出した、魔術師専用の技能です。

 サーランド時代の魔術師は、魔力を供給する魔晶宮の存在により、自らの魔力を高めるために時間を割く必要がありませんでした。その分、彼らは技(技能)を高めることに、より多くの時間を割いたのです。彼らは戦士が武器に習熟していくように呪文に習熟し、研究の末、同一の呪文でも通常より大きな効果をあげたり、一般には起こり得ない特殊な効果を生み出させることに成功していきました。

 この高度な専門技能を体系化したものが、マジックマスタリーです。ただし、マジックマスタリーの修得は、術者本人の資質に影響される部分が大きく、体系に組み込まれない個人専用の技能も数多く存在します。

 なお、サーランド王国滅亡以降この技能を伝える者はなく、現在は失われた技能とされていますが、噂では、亡くなったラストンの前国王やショーテスのミーア=エイストにはこの技を使うことができると言われています。

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