表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「魔法使い見習いと生意気な猫」  作者: れおん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/28

第22話:魔導王のスパルタ(?)教室

「……よいか、小娘ども。魔法とは根性ではない。ましてや、その頼りない杖を振り回す運動会でもない。……魔法とは、『欲望』を具現化する技術なのだ」

初心者ダンジョンの第一階層、安全なはずの通路の隅。

ノアはアルマの肩の上で、偉そうに(実際偉いのだが)ふんぞり返り、目の前に並んだポンコツ3人娘を鋭い金色の瞳で睨みつけていた。

あまりの低レベルっぷりに、ついに伝説の魔導王が重い腰を(物理的にも重いが)上げたのだ。

「……ねえ、ノア。……みんな、一生懸命なんだけど……」

「(黙れ、アルマ。一生懸命なだけでは、スライムの餌になるのが関の山だ。……いいか、まずはそこの『なまくら剣士』)」

ノアが肉球でキャスカを指した。

「……な、なまくらじゃないわ! キャスカよ! 私の剣は――」

「(うるさい。貴様の剣に足りないのは魔力ではない。『目的意識』だ。……あの岩陰に、最高級の干し肉がぶら下がっていると想像しろ。……その肉を薄く、完璧な厚さで切り分けなければ、貴様は一生、飯抜きだ)」

「……えっ、干し肉……?」

「(イメージしろ。剣先に魔力を集中させるのではない。……剣先を『肉を求める牙』に変えるのだ。……やってみろ)」

キャスカは困惑しながらも、木剣を構えた。

イメージするのは、滴る肉汁、そして空腹。

「(……い、いくわよ! ――お肉切り分け・燕返し!)」

木剣が閃いた。

すると、どうだろう。今までは剣の重さに振り回されていた彼女の動きが、一瞬だけ鋭く、岩肌を綺麗に一文字に切り裂いた。

「……できた!? 今、魔法の刃が……!」

「(……フン。食欲の力だな。……次は、『痒み止め師』ジャム)」

「は、はいっ! 先生!」

「(貴様の治癒魔法が甘ったるいのは、癒そうとする対象を甘く見ているからだ。……いいか、傷口を『熟れすぎたジャムの瓶の蓋』だと思え。……それを、魔力という名の手で、優しく、かつ正確に閉じるのだ。……中身をこぼさぬようにな)」

「ジャムの、蓋……」

ジャムは先ほどデコをぶつけたキャスカに手をかざした。

「こぼさないように……そっと、でもしっかり……」

彼女の手から溢れた光が、今までとは違う粘り強い輝きを放ち、キャスカのたんこぶを一瞬で消し去った。

「わあぁ! 本当にジャムみたいに治りました!」

「(……次は三秒のバフ娘だ。……アリスと言ったか)」

「はいっ! 応援なら任せてくださいませ!」

「(応援などいらん。……貴様の魔法が短いのは、単に『声が小さい』からだ。……いや、音量ではなく魔力の『声』だ。……遥か彼方のツナ缶のプルタブを開ける音が、全宇宙に響き渡るような……そんな、終わりなき残響をイメージしろ)」

「ツナ缶の……残響……?」

アリスは深く息を吸い込み、杖を掲げた。

「……響け! 永遠に続く……ツナの福音ふくいん!」

アリスから放たれた光は、三秒を過ぎても消えることなく、アルマたちの身体を優しく包み続けた。

「……すごいですわ! 身体がずっとポカポカします!」

「(……ふむ。……やはり、食に例えるのが一番話が早いな)」

ノアは満足げに髭を整えた。

それを見ていたアルマは、感心半分、呆れ半分で溜息をついた。

「……ノア。教え方は完璧だけど、全部『食べ物』が基準なんだね……」

「(当然だ。生きることは食べること。食べることは魔導だ。……さあ、小娘。……貴様もぼやぼやするな。……今の三人の『食への執着』を繋ぎ合わせ、その火の粉を『直火焼きの業火』に変えるのだ)」

「……うん、やってみる! ――みんなの想いを、一つに! ――ファイア!」

アルマが放った魔法は、アリスのバフを受け、キャスカが切り開いた空間を通り、ジャムの集中力で形を維持された。

それは小さな火の粉ではなく、堂々とした「火球」となって、通路の奥のスライム群を飲み込んだ。

ドォォォォン!!

「……やったぁ! 私たち、ちゃんと魔法が使えるようになったよ!」

見習いたちは手を取り合って飛び跳ねた。

ポンコツ四重奏は、今、ようやく「初心者レベル」への第一歩を踏み出したのだ。

「(……フン。……騒がしい奴らだ。……だが、少しは歯応えのあるパーティになったようだな)」

ノアは誇らしげに、マントの中で丸くなった。

だが、その時。

グゥゥゥゥ……。

と、ノアのお腹から、雷のような大きな音が響いた。

「(……アルマ。……指導料だ。……帰ったら、今の火球であぶった特製の肉を、我に捧げるが良い)」

「(……結局、それが目的だったのね、ノア……)」

初心者ダンジョンの奥深く。

少しだけ成長した少女たちと、世界一食いしん坊な指導猫の笑い声が、岩肌に反響していった。

だが、彼らはまだ知らない。

この成長を試すかのように、最下層で待ち構えている「本物の恐怖(と、とびきり美味しそうな獲物)」の存在を――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ