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「魔法使い見習いと生意気な猫」  作者: れおん


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第21話:初心者ダンジョンと、ポンコツ四重奏

「……おい、小娘。断言するが、この集団に『前途』という言葉は存在しない。……我の鋭い眼光を以てしても、開始三歩で泥沼に嵌まる未来しか見えんぞ」

放課後の王立魔法アカデミー、第一演習場。

「初心者訓練用ダンジョン」の入り口で、ノアはアルマのマントの中から、呆れたように仲間の顔ぶれを見渡していた。

「……ごめんね、ノア。……でも、実習は四人一組って決まってたから。……みんな、やる気はあるんだよ?」

アルマは震える手で初心者用の杖を握りしめていた。

彼女の隣には、同じく「見習い」の看板を背負った、個性豊かなクラスメイトたちが並んでいる。

一人は、魔法剣士志望のキャスカ。

「……ふっ、私の剣が血を求めているわ……」

と格好いいことを言っているが、腰に下げているのは魔法を付与し損ねた、なまくらの練習用木剣だ。しかも、剣の重さに振り回されて、たまによろけている。

二人は、ヒーラー志望のジャム。

「だ、大丈夫です! 怪我をしたら、私がジャムのように甘く癒してあげますからっ!」

と意気込んでいるが、緊張のあまり回復薬の瓶をジャラジャラと落としそうになっている。彼女の治癒魔法は、今のところ「かすり傷がちょっと痒くなくなる」程度だ。

三人は、バッファー志望のアリス。

「皆様、私の応援で能力を100倍にしてみせますわ!」

と胸を張るが、彼女の強化魔法は持続時間が三秒しかなく、しかも「やる気が出る」という精神論に近い効果しか出ていない。

「(……ほう。……なまくら剣士に、痒み止め師、そして三秒の応援団か。……アルマ、貴様を含めて、これはもはやパーティではない。……『迷子の集まり』だ)」

「(ノア、失礼だよ! ……みんな一生懸命なんだから!)」

こうして、才能ゼロの魔法使い(アルマ)、空回り剣士キャスカ、ドジっ子ヒーラー(ジャム)、三秒の歌姫アリスという、見習い界の四天王(最弱)によるパーティが結成された。

「……では、皆様! 行きますわよ! 勇気のバフを……えいっ!」

アリスが杖を振ると、アルマたちの周囲に一瞬だけキラキラした光が舞った。

「あ、なんだか身体が軽い気が――あ、もう消えた」

「(……三秒きっかりだな。……砂時計の方がまだ役に立つぞ)」

一行は、青白く光るダンジョンの入り口をくぐった。

内部は湿った岩肌が続く洞窟で、壁には魔力を帯びた苔が不気味に光っている。

「(……ふむ。……この空間、澱んだエーテルが充満しているな。……アルマ、気をつけろ。……低俗な魔物どもの気配がするぞ)」

「(わかってるよ。……あ、ほら! 向こうからスライムが!)」

通路の奥から、三体のグリーンスライムがプルプルと跳ねながら近づいてきた。

「私の出番ね! ――秘剣・燕返し(もどき)!」

キャスカが気合と共に木剣を振り回した。

が、スライムの弾力に剣が跳ね返され、そのまま自分のデコに柄が直撃した。

「いたっ!? ……くっ、奴、かなりの手練れね……!」

「キャスカさん! 今治します! ……えーっと、癒しの……ジャムパン! じゃなくて、ヒール!」

ジャムが慌てて呪文を唱える。キャスカのデコのたんこぶが、ほんの少しだけ赤みが引いた(気がする)。

「(……おい、アルマ。……こいつら、魔物と戦う前に自滅するぞ。……見ていられん。……王の戦い方を見せてやる)」

ノアがアルマの肩から飛び出した。

彼は空中で体を捻り、一番大きなスライムの脳天に、その「最近増量した質量」を叩きつけた。

「(――食らえ! 質量操作(物理)!!)」

グチャァッ!!

「……ピギィッ!?」

スライムはノアの重みで無惨に押し潰された。

伝説の魔導王(自称)の攻撃は、今や「自重による圧殺」へと進化を遂げていた。

「すごいですわ! アルマ様の猫さん、攻撃力が100倍ですわ!」

「(……100倍ではない。……ただの重力だ。……おい、アリス。感心している暇があるなら、アルマにまともなバフをかけろ)」

「あ、はいっ! ――力の源よ、アルマ様に宿れ!」

アリスが再びバフをかける。

アルマは一瞬だけ力がみなぎるのを感じ、杖を構えた。

「今だ! ――出でよ、小さな残り火! ターゲットを捉えて……放て!」

アルマが放った火の粉は、アリスのバフ(残り1.5秒)の効果で、いつもより少しだけ「パチッ」と大きな音を立ててスライムに命中した。

「……ピチッ」

スライムは少しだけ縮んだが、まだ元気だ。

そこへ、キャスカがふらつきながらも追撃を加える。

「……はぁ、はぁ。……とどめよ! ……せいっ!」

木剣がスライムの核を掠め、ようやく一体を撃破した。

見習いたちは「やったー!」と手を取り合って大喜びしている。

「(……たかがスライム一匹で、最終決戦に勝ったような騒ぎだな。……やれやれ、先が思いやられるぞ)」

ノアはスライムの残骸の上で、ドヤ顔で髭を整えた。

だが、そのお腹は先ほどの衝撃で「ぷにん、ぷにん」と激しく波打っている。

「……。……アルマさん。……あなたの猫さん、なんだか……美味しそうな匂いがしますね?」

ジャムがノアの匂いを嗅ごうと顔を近づける。

「(――寄るな、痒み止め師! 我の芳醇なツナの香りを嗅ぐ権利は、貴様にはない!)」

こうして、史上稀に見る「低レベル」なパーティによるダンジョン探索が始まった。

目指すは最下層の『虹色キノコ』。

だが、この初心者ダンジョンには、ノアの「鼻」が引き寄せてしまう、もっと厄介でジューシーなトラブルが待ち受けていた。

「(……おい、アルマ。……あそこの角を曲がった先に……非常に『美味そうな魔力』を感じるぞ……。……あれは、虹色キノコではない……もっと、こう、ジューシーな……肉だ)」

「(ノア、寄り道は禁止だよ!)」

第22話では、ノアの食欲が引き起こす「焼肉パニック」が、ただでさえ危なっかしい見習い四人組をさらなる混乱へと陥れる。

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