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第六章

蓮が「影の支配者」の能力に目覚めてから数週間。彼はトレーニングとダンジョン攻略の日々を繰り返していた。日中の人目がある時間は、協会にE級ダンジョンやD級ダンジョンの緊急募集で参加し、経験値を稼ぐ。そして夜は、自宅のトレーニングルームでシステムが課す過酷な訓練をこなし、着実にレベルを上げていった。彼のレベルはすでに25を超え、身体能力はA級ハンターに匹敵するほどに成長していた。


「よし、影よ、出でよ」


蓮が唱えると、彼の足元から漆黒の影が蠢き出し、三体のゴブリン影兵士と、一体の鉱山トロール影兵士が姿を現した。トロールの影兵士には、すでに「番犬ガーディアン」という新しい名前を与えていた。彼らの動きはまだぎこちないが、蓮の意思に少しずつ従うようになっていた。影兵士たちは、蓮の知力が高まるにつれて、その知能と連携能力を向上させていくようだった。


蓮は、影兵士たちとの連携を確認するため、夜の訓練場を借りて模擬戦を行った。影兵士たちは、彼の指示に従い、完璧な布陣で仮想の敵を追い詰める。この力があれば、もはや一人ではない。どんな困難なダンジョンでも、仲間と共に戦えるという確かな自信が芽生え始めていた。


B級ダンジョン、ソロレイド

もはやC級ダンジョンでは満足のいく経験値が得られなくなっていた。蓮は、更なる高みを目指し、危険な賭けに出ることを決意した。**B級ダンジョンへの単独攻略ソロレイド**だ。通常のハンターであれば、S級やA級の精鋭チームでなければ踏破できない領域。しかし、蓮には「レベルアップ能力」と、そして「影の支配者」としての力がついていた。


B級ダンジョンは、最低でもA級以上のハンター複数で構成されたチームでなければ入場が許可されない。だが、蓮には抜け道があった。ハンター協会には、ごく稀に「S級ハンターの同行」という名目で、特定の個人が特別に高ランクダンジョンへ入場できる特例がある。彼は、その特例を悪用する形で、B級ダンジョンへの申請を通した。もちろん、S級ハンターは架空の人物だ。彼の急激な成長データと、二重ダンジョンでの単独生還という異例の経緯が、わずかながら協会のシステムにイレギュラーを発生させていたのだ。


ゲートをくぐると、そこは鬱蒼とした森の中だった。B級ダンジョン「忘れられた森の廃墟」。周囲には巨大な植物型の魔物や、隠密行動を得意とする獣人型の魔物が潜んでいる。E級ハンターだった頃の蓮なら、一歩足を踏み入れただけで恐怖で動けなくなっていたことだろう。しかし、今の彼の表情には、一切の迷いがなかった。


「影よ、出でよ」


蓮が命じると、彼の影から一斉に影兵士たちが姿を現した。ゴブリン影兵士が前方と左右の警戒にあたり、番犬(トロール影兵士)がその巨体で蓮を護衛する。蓮は、彼らに「索敵」と「排除」の指示を出し、森の奥へと足を踏み入れた。


影兵士たちは、蓮の意思に完璧に従い、森に潜む魔物たちを次々と狩っていく。蓮は安全な位置から、自身の指示がどれだけ正確に伝わり、影兵士たちがどれほど効率的に動けるかを確認した。影兵士たちが魔物を倒すたびに、蓮の経験値バーが上昇していく。


「これなら…いける」


蓮は確信した。この力があれば、彼は無限に強くなれる。


監視の目と不穏な動き

しかし、蓮の行動は、完全にハンター協会から隠し通せるものではなかった。

彼の担当官である斎藤は、蓮のB級ダンジョンへの「特別申請」に驚きを隠せずにいた。S級ハンターの名前は偽名だが、システム上は「S級ハンター同行」となっている。


「…まさか、高橋ハンターが、ここまで急激に強くなっていたとは…」


斎藤は、蓮の成長データと、C級ダンジョンでの影兵士目撃情報(信憑性は低いと判断されていたが)を照らし合わせ、ある仮説を立てていた。それは、蓮が、人類未踏の、全く新しい能力に目覚めたのではないかというものだ。彼は、この件を上層部に報告すべきか迷っていた。もし蓮の能力が本物ならば、それは日本ハンター界の未来を大きく変える可能性を秘めている。しかし、同時に、その異質さゆえに、蓮自身が危険に晒される可能性も否めなかった。


その頃、ハンター協会の上層部、そしてさらにその裏に潜む「組織」が、蓮の存在に気づき始めていた。彼らは、過去にも類似の事例を追跡していたが、ここまで急激かつ異質な成長を遂げたケースは初めてだった。


「E級の、あの高橋蓮がB級ダンジョンに単独で入っただと? しかも、目撃情報では、魔物を操っているという…」


「調査を開始しろ。彼の能力の源、そしてその目的を徹底的に探れ。もし、彼が我々の計画にとって障害となるならば……」


彼らの冷徹な視線は、まだ森の奥深くで影兵士たちを率いて戦う蓮に向けられていた。蓮は、自らが知らず知らずのうちに、巨大な陰謀の渦中に引きずり込まれつつあることを、まだ知る由もなかった。彼の孤独な「レベルアップ」は、やがて世界の運命を大きく揺るがす戦いの始まりとなる。

第七章もお楽しみに!!!!

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