表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/6

第四章

蓮は、次のダンジョンへの挑戦を心に決めていた。簡易ダンジョンでのゴブリン狩りでは、もはや得られる経験値が少なすぎる。もっと効率的に、もっと圧倒的に強くなるためには、より上位の、危険なダンジョンへと挑む必要があった。しかし、E級ハンターが単独でD級以上のダンジョンに挑むことは、協会の規定で禁じられている。


彼はある手段を思いついた。ハンター協会には、急遽チームの欠員が出た場合や、経験の浅いハンター向けの「緊急募集」掲示板があった。そこには、D級、C級の下位ダンジョンで、手駒が足りないチームの募集がかけられていることがある。報酬は低いが、比較的安全な役割を割り振られることが多い。蓮にとって、それは最高の機会だった。


C級ダンジョン、新たな舞台

「高橋、お前本当にE級か?俺たちC級の募集に、よく応募してきたな」


蓮が応募したのは、C級の下位ダンジョン「古びた鉱山の坑道」へのレイドチームだった。リーダーらしき男は、粗野な言葉遣いだが、実力はありそうな雰囲気だ。チームメンバーは、蓮を含めて五人。皆、彼を訝しげに見ている。


「いえ、以前二重ダンジョンに遭遇して、運良く生還しまして……その、少しだけ強くなれたような気がするんです」


蓮は曖昧に答えた。彼の現在のレベルはすでに15に達しており、E級のステータスとはかけ離れていた。体つきも以前のガリガリからは想像もつかないほど引き締まり、その体から放たれる気配は、もはやE級のそれではない。彼をE級だと言われても、誰もが納得しないだろう。


リーダーは鼻で笑った。「まあいい。お前には後方支援と、俺たちのバックアップに回ってもらう。無理だけはするなよ、E級さん」


蓮は何も言わず頷いた。内心では、すでにこのC級ダンジョンなど、彼にとって取るに足らない存在になっていることを理解していた。彼は、このダンジョンで、自分の能力の限界を試したかった。そして、更なる高みへと上るための足がかりにしたかった。


坑道を進むと、D級レベルの鉱山ゴブリンや、巨大なコウモリ型の魔物が襲いかかってくる。他のメンバーが苦戦している間に、蓮はスキル「ダッシュ」で瞬時に魔物の間をすり抜け、弱点を突く。彼の剣は、以前の重い塊ではなく、まるで体の一部であるかのように軽快に舞った。


『経験値を獲得しました!』

『レベルが16に上がりました!』』


レベルが上がるたびに、彼の身体能力はさらに向上し、スキルも洗練されていく。彼は気づいた。彼が持つこの「システム」は、ただステータスを上げるだけではない。彼の戦い方、判断力、そして危機察知能力までもが、まるで一流のハンターのように研ぎ澄まされていくのだ。


「おい、高橋!お前、どこでそんな動きを…!」


リーダーが驚愕の声を上げた。蓮の動きは、E級はおろか、C級の熟練ハンターでも到達しえない領域に達していた。彼は仲間たちが苦戦している魔物を一撃で葬り去り、危険が迫る瞬間に「直感」スキルが発動し、味方を危険から救う。


蓮は、自分の能力を完全に隠すことはできなかった。しかし、彼らが理解できたのは、蓮が「急激に強くなった」という事実だけだ。具体的な能力の原理までは、誰も知り得ない。


「影の抽出」と職業の覚醒

ダンジョンの最奥。ボス部屋の扉を開くと、そこには巨大な鉱山トロールが待ち構えていた。その巨体と腕に持つ岩の棍棒は、C級ハンターの誰もが恐れる存在だ。


「ちくしょう!こんなボス、聞いてねえぞ!」


リーダーが顔を青ざめさせる。だが、蓮は冷静だった。彼のステータスウィンドウには、すでにトロールの弱点と、有効な攻撃パターンが予測されているかのようだった。


「スキル:ダッシュ!」


蓮はトロールの攻撃を軽やかに回避し、その巨体を駆け上がる。トロールの頭部に到達すると、彼の剣が閃いた。渾身の一撃が、トロールの頭部に深々と突き刺さる。


「グオオオオオオ!」


断末魔の叫びと共に、トロールが倒れ伏す。その体は光の粒子となり、蓮のレベルは一気に跳ね上がった。


『経験値を獲得しました!』

『レベルが19に上がりました!』

『おめでとうございます!あなたは特定の条件を満たしました。職業を「影の支配者」に覚醒させることができます。』

『「影の抽出」スキルを獲得しました。』


「影の支配者……? 影の抽出……?」


蓮の目の前に、新たなスキルと、職業の選択肢が提示された。彼は迷わず「影の支配者」を選択する。次の瞬間、彼の足元から、黒い影がうねり始めた。その影は、倒れたトロールの亡骸へと伸び、まるで意思を持つかのように絡みついていく。


「な……なんだ、あれは!?」


驚愕したのは、蓮だけではない。遅れてボス部屋に入ってきたチームメンバーたちが、その異様な光景に目を奪われていた。黒い影がトロールの亡骸から、まるで生命を宿すかのように立ち上がり、やがてそれは、漆黒の装甲を纏ったトロールの姿へと変貌した。その目には、青白い光が宿っている。


『影兵士:鉱山トロールの影が抽出されました。』


蓮は、呆然と立ち尽くす影兵士を見つめた。それが、彼自身の力によって生み出されたものだと直感した。彼は、死んだ魔物を、自分の兵士として使役する能力を手に入れたのだ。


チームメンバーたちは、その光景を前に、恐怖と畏敬の念にかられていた。彼らの目の前にいるのは、もはやE級の、弱々しい高橋蓮ではない。まるで悪魔のような力を持つ、未知の存在だ。


蓮は、影兵士となったトロールを見上げた。彼はまだ、この能力の真の恐ろしさと、それが世界にもたらす影響を知らない。しかし、彼の目の前には、最強への、そして世界の深淵へと続く、新たな道が広がっていた。

第五章もお楽しみに!!!!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ