魔力の可能性
立派な怪盗になるためには一分一秒が惜しい。
だからこそ知識のある先駆者に早い段階から教えを受けれることは好ましいことだ。
しばらくは独学で魔力の扱い方を掴んでいこうと考えていたが、どうやら父親から直接、魔力の扱い方の手解きを受けれるそうだ。
訓練といっても走り込みのようなものではなく。ましてや言葉もあまり理解できてない赤子に座学を叩き込むようなものでもなかった。
目の前で魔力の動かし方を見せては、時折レオンに触れ魔力の流れが詰まっているところにクロードの魔力を流し、どのように制御すべきかを感覚で理解させる。その繰り返しであった。
「変な癖がついては、瞬時に力を発揮できなくなるぞ」
クロードの魔力は鋭く、それでいて整然としていた。まるで完璧に計算された水流のように、滞りなく流れていく。
(なるほど……魔力って、ただ力任せに動かせばいいってものじゃないんだな)
レオンは自分の魔力の流れと比較し、明らかに無駄が多いことに気づいた。
(僕のは勢い任せで、ところどころ詰まってる感じがする……これをスムーズにするにはどうすればいい?)
考えながら試行錯誤していると、クロードがふっと微笑んだ。
「良い眼をしているな。力を抑えつつ、均一に流すことを意識しろ」
彼はそう言いながら、レオンの手を取ると、ゆっくりと魔力を流し込んだ。
レオンの体内を巡る魔力にクロードの魔力が干渉し、滑らかに整えられていく。
(おお……! こういう感じか!)
魔力の流れをできるだけ崩さないように意識しながら、再び自分の力で流れを作る。
すると、先ほどよりもはるかにスムーズな感覚が得られた。
「……ふむ。筋がいい」
クロードは満足げに頷く。
彼が教えたのは、魔力を制御し、意図した形で流すという、まさに魔力操作の基礎中の基礎だった。
「魔力とは、生きる力そのものだ。人が呼吸をするように、魔力もまた体の中を巡る。魔力を掌握することで、自身の体を完全にコントロールすることが可能になる。レオンよ。そなたは魔力の扱いが早かったからこそ独特の癖が付かぬようにこれからも定期的に指導をしてやろう。よいな?」
僕は何いってるか分かんなかったが元気に頷いた。