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コミカライズ化決定[1月30日 アンソロジー発売]私はただざまぁ回避したかっただけなのに〜悪役令嬢に転生したら溺愛されてしまいました。〜

作者: 猫山 鈴

よろしくお願いします。

 ある屋敷の一室で一人の少女もとい、"ソフィア・ルナハート"公爵令嬢は風邪を拗らせてベットで横になっていた。

 「はぁ…はぁ…」

「お嬢様、お可哀想に…」

 メイドのルーシィがそんなソフィアを看病しながら呟いた。


 "ソフィア・ルナハート"。ルナハート公爵の一人娘であり、まだ幼い少女であった。

 ソフィアは病に伏せながらある夢を見ていた。


 それは自分の部屋とは全然違う見た事ないけど、何処か親近感の湧く部屋の中だった。そしてなにやら自分は見た事のない小さな機械を操作していた。

 その機械には自分や見た事のある貴族の令息、令嬢が映っていた。ソフィアはその夢を見た瞬間、全てを思い出した。


 「あぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」

 ソフィアは叫び声を上げて、目を覚ました。

 「お嬢様!!?どうかなさいましたか!?」

 その声にびっくりしたルーシィがソフィアに慌てて駆けつける。

 「ごっごめんなさい。ルーシィ何でもないわ。ちょっと怖い夢を見てしまったの。」

 そう言ってソフィアはルーシィに微笑みかける。ルーシィは心配そうにしながらも部屋から出ていった。


 これ「lovers tale」の世界だ…。ソフィアは頭の中を整理した。先程の夢は恐らく自身の前世。そしてあの機械もといゲームに映っていたのはこの世界だ。

 「lovers tale」…それは彼女の前世にて人気だった乙女ゲームだ。貴族の令息を中心にして様々な男性と恋をする。よくある定番の乙女ゲーム。

 しかし攻略対象のビジュアルやらストーリーが中々の人気であり、友人のほとんどがこのゲームをプレイしていた。

 しかし問題が一つ。


 「な…何でよりによってソフィアなの?…」

 ソフィアはlovers taleの中でも悪役令嬢と言われる存在である。しかもこの国の第一王子であるクラトス・フォン・エルシオンの婚約者。

 クラトスはlovers taleの代表的な攻略対象。黒髪に赤い目が特徴の物静かな青年である。ヒロインが万が一、クラトスルートに入ってしまった場合、ソフィアは婚約破棄される。


 それだけならまだいい。問題がソフィアがヒロインを虐め抜いたことから国外追放される又は幽閉されるのである。元々のソフィアは長い金髪にきつい吊り目、紫の瞳を持った、かなりきつめの美人だ。

 そして性格もキツい。あと嫉妬心も強く、自身の婚約者であるクラトスと仲良くしてるヒロインを嫉妬から取り巻きと共にいじめまくるキャラ。


 「やばい…このままだと私…人生ゲームオーバーになっちゃう」

 国外追放されれば危険が一杯の国の外に放り出されて、野垂れ死ぬ可能性があるし幽閉されれば自由はなくなる。

 どっちにしても詰みである。


 「ど…どうしよ…確かクラトスとは生まれた時から婚約勝手に結ばれてた筈だし…」

 「俺がどうかしたのか?」

 声がした方を向くと、幼いクラトスが立っていた。


 「ク…クラトス様?ど…どうしてここに?」

 「?婚約者なのだから当然だろ?お前が病に伏せてると聞いてな…」

 不思議そうな顔をするクラトス。ソフィアの記憶ではクラトスは大きく成長した姿しか見た事がない。そしてソフィアをウザがっていた印象があった。

 そんな悩みをヒロインが聞いてあげて、"クラトス様を解放してあげて下さい"とか言ってソフィアと言い合いになる。

 それがきっかけでクラトスとヒロインが急接近。


 ….考えてみれば、ヒロインも何様だろうと思うが。解放も何も、親が決めた婚約だ。本人達の意思だけではどうしようもできない。


 「どうした?黙りこんで…」

 するとクラトスが心配そうに見つめてくる。この時はウザがっていないみたいで関係は良好らしい。

 「申し訳ありませんでした。殿下?私はただの風邪ですわ。殿下にうつってはいけませんので、また後日にでも…」

 そう言い、一人で考えたいこともあるので殿下にお引き取り願うことにした。

 「…しかし…」

 「ご心配には及びませんわ?寧ろこのような情けない姿を見せたことお詫び申し上げます。」

 なかなか帰らないクラトスを説得してお引き取り頂いた。


 「今のクラトスを見るに、元々嫌いってわけではないのね」

 ソフィアはその時閃いた。クラトスに対して、ソフィアの様に執着心を剥き出しにしない。ヒロインを虐めない。

 これだ。これさえ守れば我が身は守れる。

 これで婚約破棄されたとしても、ざまぁされない。自分の経歴に傷はつくかもしれないが、特別結婚したい訳でもないし家を継ぐという選択肢もある。


 「よし!決めた!」

 ソフィアはざまぁ回避を目指し決意を新たにした。



 そして数年の月日が流れた。ソフィアとクラトスはゲームに登場していた時まで成長を遂げた。

 そしてゲームの舞台となる王立学園に共に入学を果たしたのだった。

 ソフィアはやはりきつめながらも美しい。しかもゲームのソフィアとは違い、性格は穏やかで思いやりのあるものになった事もあってか、評判が良い。

 クラトスは幼少期の美しさが更にパワーアップして誰もが振り返るような美青年に成長した。 二人は生徒会として活動している。

 そして一番なゲームとの違いは…


 「ソフィーは今日も美しいな。流石は俺の未来の妻。君と人生を共に出来るなんて、なんて幸運なんだろう…」

 「殿下?そのぉ…恥ずかしいので…」

 「殿下ではなくクラトスと呼べと言っただろ?ソフィーは照れた顔も可愛らしいな」

 これである。


 なぜかクラトスがソフィアに甘々でデレデレなのだ。こんなシーンは見たことがない。

 ただ単にソフィアはクラトスにベタベタしないようにしたり執着心を剥き出しにしないという自分ルールを守り、(そもそもそういう感情を持ち合わせてない)一応、王妃教育をこなしていた。

 それでも相手の方が立場が上なので、クラトスから誘われれば共にお茶を飲んだり、二人で会ったりというのもしていた。

 他にも国王としての教育に悩んでるクラトスを元気付けたり、悩みを聞いたりした。

 自分の王妃教育の事でも聞いてもらいながら、婚約者としては仲は良好に保ってきた自覚はあるが…


 「なんでこうなるのぉ?」

 「俺といるのに他の事を考えるんじゃない」

 なんならゲームではソフィアがクラトスを探し回ったり、ベタベタしまくろうとしていたのが、逆転している。クラトスの方がソフィアを探し周り、隙あらばソフィアのいる教室に訪れる。

 (まぁ…ヒロインが登場すればそっちにいくわよね?)

 すこし胸が痛くなるのを誤魔化しながらソフィアはそう思っていた。だが



 「クラトス様ーー♡あ…ソフィア様ご機嫌よう」

 「ご…ご機嫌よう」

 出現したヒロインがヤバかった。見た目はゲームと同じ、桃色のふわふわの長い髪に緑の目をした癒し系美少女だ。

 彼女もまた、ソフィアとクラトス達の同級生である。ゲーム同様転校生としての登場。皆んなが彼女の可愛らしさに目を奪われていた。


 しかし性格が酷かった。攻略対象になる貴族令息達にベタベタしようとしたり、馴れ馴れしく話しかけまくる。

 婚約者がいてもお構いなし。婚約者にあたる人物達には攻略対象達に見せてた笑顔を消し、冷たい目で睨みながら渋々挨拶するという感じである。

 無論、クラトスも狙われていた。


 「クラトス様♡?婚約してて楽しいですか〜♡ソフィア様ってクラトス様の事な〜んにも分かってないみたいですけど♡」

 こちらをチラチラと見ながらクラトスの腕にしがみ付こうとするヒロイン。


 「触るな…」

 クラトスがヒロインの手を躱した。そして、冷たい目で睨みつける。

 「ク…クラトス様?」

 そんなクラトスの様子にビビるヒロイン。

 「貴様?俺の婚約者を愚弄するか!?我が婚約者であるソフィアは俺のことを一番理解してくれている!俺が悩めば、寄り添ってくれる。王妃として未来の国母として研鑽を重ねる真面目さ!俺の隣に立つのはソフィア以外あり得ない!

 まだ俺の婚約者を愚弄するなら…分かってるな?…」

 そうクラトスが言うとヒロインは顔を青くさせた。


 「す…すみませんでしたーーー!」

 ヒロインは逃げ去っていった。逃げ去りながら、

 「ゲームとちがうーーーー!」

 と言っていた。恐らく自身と同じ転生者で逆ハーでも狙っていたのだろう。


 そしてヒロインとクラトスが結ばれる事は無かった。



 そして更に数年後、学園卒業後

 「ソフィー俺はこの時を今か今かとずっと待っていたよ」

 クラトスとソフィアは結婚式を挙げる事になった。クラトスがどうしても早くソフィアを自分のものにしたいという我儘により結婚の時期が早まった。

 なかなかイレギュラーな事態である。


 「えっと…クラトス様?本当に私でよろしいのですか?私、自分で言うのも何ですが…可愛げのない女ですわよ?」

 「何を言ってるんだ?俺は何回も言ったはずだ。君は世界で一番可愛いと…」

 クラトスは愛おしげにソフィアを見つめた。



 クラトスには生まれた時から婚約者がいた。見た目はきつくて最初は怖いイメージさえあり、表面上は婚約者として優しく接していたに過ぎなかった。

 だがいつからだろう。彼女が一度風邪で寝込んでいた時。彼女は自分の事よりもうつってしまうとクラトスの方を心配していた。あろう事か、自分が風邪にかかった事を情けないと言い謝ってきたのだ。


 怖い性格と勝手に思い込んでいた自分に罪悪感を抱いたものである。それからも彼女と婚約者として共に過ごすうちに、

 彼女のふとした時に見せる笑顔の愛らしさ。自分が悩んでると隣で寄り添ってくれる健気さ。クラスメイトの悩みを受け止めようとする優しさ。

 クラトスはそんな彼女に惹かれ、いつしか自分だけのものにしたいと願う様になった。


 婚約者ではあるが、彼女が他の男に笑顔を向ければ嫉妬で狂いそうになる自分がいる。だからこそ結婚を早めてもらったのだ。


 そういえば自分にまとわりつき、ソフィアを愚弄したあの女…どうなっただろうか…?他にも複数の貴族令息を婚約者のいるいない関係なく手を出そうとして訴えられていた。

 その後は姿を見ていない。クラトスにとって、ソフィアを愚弄した者の末路などどうでも良い話なのである。


 なにより今自分の目の前には美しい純白のドレスを身に着けた婚約者がいる。それだけで幸せである。


 「ソフィー…。君の事は必ず幸せにする。だから俺とこの国を支えてくれ。」

 「……はい。末永くよろしくお願い致します。クラトス様」


それから仲睦まじい若き国王夫婦が国を更なる発展へと導いていったのは有名な話となった。


 

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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