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20話 日常を一変させる再会4

 カザナは学校指定の鞄からマイバッグを2袋取り出す。カートから手際よく野菜や肉をマイバッグに移し、自動のレジで会計を済ませる。いつものことだから慣れているが、オスカーにとってはそうではないらしい。物珍しそうに目を見開いて、観察している。


 カザナはマイバッグの1袋をオスカーに渡す。オスカーは袋を持つと、ずしりと重さを感じた。

「こ、これ重いね」

「そう? 私いつも自転車で買い物にきているから、2袋は余裕よ」

「自転車? 見世物の?」

 オスカーの脳裏には彼が幼い頃、王宮で見たサーカスの曲芸が浮かんだらしい。カザナはぶっと吹き出して、そして更に爆笑した。


「お、お腹が痛い……。違うわよ、生活で使っている自転車よ。ほら」

 カザナが笑いながらショッピンセンターのガラスの向こう側に止められている自転車を指差した。人が降りたり乗ったりしている。小さな子供が自転車に軽々と乗っているのだ。オスカーは感嘆した。


「すごい……」

 オスカーの小さな呟きに、カザナは微笑む。昔と変わらず、なんにでも素直に受け止める。そんな所がオスカーらしい。


「オスカーは、変わらないのね。何にでも素直に感動して」

 カザナは嬉しそうに返す。この2年間で成長したつもりのオスカーはむっとする。


「ほら。わかりやすいわ。顔でオスカーの気持ちが読めるわよ」

 2年間、オスカーの姉代わりを務めた経験は、伊達ではない。ぱっとオスカーの気持ちが読める自分に笑ってしまう。


 カザナは、警戒していた自分が半分馬鹿らしくなり、ほうっと気を抜く。

 だけど。

 まだオスカーの考えていることは分からないから、警戒を解いてはいけないと肩に力を入れ直した。

「さあてと、家に帰ろうっと!」

「あ……」

 戸惑うオスカーにカザナは笑顔を向ける。


「オスカーの部屋も案内するね」

 それはアンの時と一緒の笑顔。

 アンが王女と知ってオスカーは、衝撃だった。カザナが身に纏う天空族の王族が持つ、金色の髪に勿忘草の瞳の色彩にも。

 でも中身は変わらない、王女らしくない振る舞いも目立たない所も。それが嬉しくて。

「うん……」

 とオスカーは笑顔で答えた。


 ショッピングセンターの最寄りの駅から電車で揺られること5分。電車は、首都シルフィードのターミナル駅であるシルフィード駅に到着する。幾つもの電車が走り、止まる。綺麗に整備された駅は人で賑わっていた。スーツを着たサラリーマンやOL、親子連れ等が行き交う駅にオスカーは、目を丸くする。ウィル神界と天空界とでは文明の進み具合が違うと聞いていたが、ここまでとは思わなかったのだ。オスカーの驚愕ぶりに慣れたカザナは軽くスルーする。


「オスカー、自動定期のピタット君は持ってる?」

 カザナの問いかけに、オスカーは頷いた。どうやらウィル神聖王国の大使館から支給されたらしい。

「こうやるのよ」

 カザナが定期を改札に当てて、通過する。オスカーは紫の王眼を瞬きさせて、驚愕する。おそるおそる改札に提起を当てる。ぴっと音がして、改札を通過する。


「オスカー?」

 オスカーがいつまで経っても動かないので、カザナは不思議そうに見る。オスカーは感動した顔を振り向かせる。

「す、すごい! カザナ! ウィル神界では切符ははさみで切るんだ! でもここは、機械が認証するんだね!」

 少年らしくかつ可愛らしい反応にカザナはぷっと吹き出す。


「ひ、酷いよ。カザナ、笑うなんて……」

「ごめんね。オスカー、か、可愛くて……。男の子ねえ」

 からかわれたと察知したオスカーは、ぷいと横を向いて不貞腐れる。

 2年で、見た目や中身も成長してしまっている。前はこんな風に他の世界の文化や文明の違いなどに興味を持ってはいなかった。身長は10センチも伸びて、中身も若木の如くしなやかに成長している。


(大きくなったんだなあ……)

 別れた2年前とは違うのだ。その違いにふうと溜息を吐いた。

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