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1話 王女様からメイドへジョブチェンジ1

 カザナは、幼少の頃に風の杖に選ばれた神器使いでシルフィーディア王国の第一王女だ。

 

 この世界は3つから構成されている。四元素を治めるウィル神族、闇を治める魔族と風と光に祝福された天空界から成り立つ。魔族は西と東の大陸があり、2つに分かたれている。30年前にウィル神界と東の魔族の戦いが起こり、その一年後に天空界と西の魔族との戦いが起こった。ウィル神界と天空界は魔族に勝利した。また、ウィル神族、天空族共に平均年齢が数百歳という長命な一族である。大体が20歳前後で一次成長が止まり、二次成長で更に老いる。


 ウィル神族はウィル神聖王国という1つの国からなる。そしてこの天空界は風を司る風の王国シルフィーディアと光を司る王国ウェルリースとこの数百年で台頭した魔法化学の先進国であり、国民の投票からなる議会とその国民の代表である大統領が治める民主主義の政治形態を取る、深い森と湖の美しい国シルフィード国の3つからなっている。また、天空界はウィル神界より時代と文明が百年ほど進んでいる。

 

 ウィル神界の王は4つの力を司るウィル王、天空界は世界を見通す力と世界を巡る予言を司る予言の姫。そして東と西の大陸の魔界それぞれの王が居る。また、不干渉であったウィル神界と天空界は30年ほど前から交流を始めて、今は政治的にもそれぞれの王族が結婚したり、民間でも交流が活発化している。


  神器は遥か昔天空界の天使により天使とウィル神族と魔族を滅せられるように作られた武具だ。神器に認められる者のみがその武具を使うことが許される。炎と水、大地と風、光と闇と風光の7つがある。神器自体が出現しなくなり、神器は伝説の中に在ったのだ。だが、最近になって炎と水がウィル神界に風と光と風光の神器使いが天空界に現れた。

 また、神器使いは大体が悲惨な末路を辿る。神器との共鳴により千年生きるようになるのだ。長い人生に絶望し、自殺する者が多い。

 

「だから何が楽しくて王女である私がメイド! しかも侍女でなくてメイド? ご飯づくりとお掃除はやっているけど、それは大好きな二人のパパの為だからよっ! 異世界の王族の為にやれと? 私はこの世界を司る二大王家の第一王女よ!」

 ソウの命令に切れたカザナは、ばんばんと長官室のお高い机を叩いた。


「カ、カザナ……。実はね、やばいのよ」

 ブチ切れたカザナの勢いに押されたソウは、男言葉ではなく、身内の前でだけ使う女言葉を無意識に使ってしまう。

「はぁ?」

 カザナは、現ウィザード長官であるソウをジト目で睨みつける。


「そのね……。今のウィル王、リチャード=ウィル=カーライルには、天空界とウィル神界の両王家の血を引く王妃が居るの。それが私の部下だった現在はヒカル=ウィル=カーライル、かつてのヒカル=ウェルリース=ケッペルよ。ウィル旧王家の血を引くたった1人の存在」

 完璧に頭に血が上っているカザナは、両手を組んで椅子にどかっと座りこむ。王女らしからぬ振舞いだ。

 

「で?」

 上目遣いでソウに次の発言を促す。

 

「ちょっと! カザナ! あんた! 上司であるあたしに仮にもあたしは父親……」

「次!」

 カザナに叫ばれて、ひいっとソウは悲鳴を上げた。

 

「ウィル王リチャードと王妃ヒカルの間には二人の王子がいるの。1人は、王太子ライアン=ウィル=カーライル。それと実はヒカルからお願いされたのが、第2王子オスカー=ウィル=カーライル、現在10歳で離宮に幽閉されているの」

 ソウがカザナにびびって、口にしてはいけない言葉をぽろりと零した。

 

「幽閉?」

 カザナは、ソウのその言葉の二文字に眉を顰める。


「仮にも正妃の息子が幽閉? まあ、私みたいな例もあるから」

 自分が継母と折り合いが悪く、シルフィード国へ追放された存在であるからと自嘲気味にカザナは笑う。

「ちょっと! 自分のことをそんな風に言っちゃだめよ! あんたは、私とティムの可愛い娘なんだから!」

 先ほどまで実の娘同然のカザナに睨まれて動揺していた人間とは思えない反応だ。カザナは、ソウの言葉にはっとした。

「ごめんなさい……。ソウパパとティムパパの二人にいつも言われているのに……」

 カザナは、さっきまでの勢いはどこへやら妖精を連想させる可愛らしい顔を俯かせた。しょぼんとした娘にソウは長官室の机から立ち上がり、近づく。そしてくしゃりとカザナの頭を撫でた。


「それでね、ライアン王太子とオスカー第2王子はウィル王家の象徴である紫の王眼を持っているわ。この2人が厄介でね、まずウィル王のリチャードは、王家の分家筋出身でヒカルがウィル王家のケッペル家の血を引いているわ。つまり王家の血が濃いの。ライアン王太子は、幸い精神力が強くて王眼を制御出来るけど、この第2王子のオスカーがね、今までで最強の王眼使いなの」

 カザナは勿忘草色の双眸を瞬かせた。

 

「紫の王眼はウィル王家では12歳くらいまで自分の意志ではコントロール出来ないらしいわ。だから、紫の王眼持ちは12歳までは魔族に狙われやすいの。その両目を手に入れると凄まじい魔力になるらしいわ。代々男子のウィル王族はその王眼を魔族に狙われているの。リチャード王然り、ライアン王太子とね。それでとんでもない力を秘めた息子のオスカーを守る為にリチャード王は自分の結界を張った離宮へ息子を閉じ込めたのよ。今回カザナ、あんたに頼みたいのはそのオスカー王子付きのメイドとして潜入して、陰から王子を守って欲しいの」

 カザナの髪の毛をくしゃくしゃと撫でながらソウは、語る。

 

「それにね、あんたならオスカー王子の境遇が理解できると思うわ。だから今回ヒカルから息子を守れるウィザード隊員をお願いされた時にカザナが頭に浮かんだの」

 ソウの紫の双眸は優しくて、カザナは拒否できなかった。


「……わかったわ」

 元来お人好しのカザナは頷くしかなかったのである。

読んでくださってありがとうございました!

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