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16話 別離4

「助かった……」

 ふうとカザナがその場に崩れ落ちて、ぺたんと膝をついた。

「カザナちゃん! 大丈夫」

 カザナに駆け寄ってくるヒカルの腕をリチャードが掴んだ。

「な、何?」

「ヒカル、この天空界の姫は、お前の依頼でオスカーの警護をしていたのか?」

 ヒカルは、相変わらず頭の回転の早い夫に愕然として口をもごもごさせる。嘘をつくのが下手な自分の妻をリチャードはふっと微笑すると抱き締めた。


「ヒカル、可愛いな……」

 子どもであるオスカーと警護を依頼していたカザナたちを無視して、自分への愛を語るリチャードにヒカルは頬を紅潮させた。

「ちょっ、ちょっと……人前で止めてよ!」

 あまりの恥ずかしさにヒールの高い靴で夫の足をけ飛ばす。

「!」

 ヒールの高い靴は攻撃力抜群でリチャードは、あまりの痛みに飛び跳ねたくなるが、息子たちの手前堪える。


「……オスカー、あなたのご両親っていつもああなの?」

 さっきまでの王の威厳に満ちたリチャードを見ていたので、あまりの落差にカザナは冷たい目でオスカーに問いかけた。

「う、うん……」

 顔を赤らめるオスカーにカザナはぷっと笑う。さっきまでの冷たい印象が霧散して、可愛らしい年齢相応の顔になる。

「面白いご両親ね! でも仲が良くてうらやましいわ」

 ウィル王夫妻を面白いと言い切るカザナにオスカーは、唖然とする。自分の両親は、王家の人間としては個性的だ。

 だけど。

 面白いと言われて、恥ずかしくなりオスカーは顔をさらに赤らめる。


 その時だ。

 オスカーの濃い純粋な紫の瞳が輝いた。

 夫婦漫才を繰り広げていたリチャードとヒカルが、漫才を止めてオスカーとカザナに視線をやる。

 目の前の現象にカザナは、ぽかんとする。


「オスカー、今の何?」

 天空族のカザナは、オスカーの王眼が紫に輝いたのに驚愕する。

「あ……」

 オスカーは、カザナを凝視する。

「?」

 カザナは、きょとんと首を傾げる。その仕草が愛くるしい。

「アンが僕の番……?」

 オスカーの謎の発言に勿忘草色の大きな瞳を見開く。

「番?」

 鈴の音の如き清涼な声音で問いかける。


「ウィル王家の紫の王眼を持つ男子は、必ず番を妃にする。更に言うと番しか王族の男子の子は産めない」

 リチャードの声が後ろからした。先ほどまでの夫婦漫才を繰り広げていた人間とは同一人物とは思えない程威厳に満ち溢れている。

「リチャードさんの番は私よ。そして、番は互いに惹かれ合うわ。オスカーの番はカザナちゃん、あなたよ」

「私とオスカーが番?」

 ヒカルの発言にカザナの顔が強張る。

 話には聞いていた、ウィル王家男子の定められし妃。

 必ず惹かれ合う関係である番。


 かつて女王である母親から聞かされたウィル王家の話に憧れた。

 だが、今は違う。

 母親が亡くなった途端、年下の少女に溺れた父親に吐き気がした。

 男は嫌いだ、永遠の愛なんてないのだ。

 その自分に永遠の愛の相手である番?


「何かの間違いよ……。永遠の愛なんてないわ」

 氷のように冷たい声音にオスカーは驚く。先ほどまで笑顔で話していた少女とは同じ人とは思えない変わりようだ。

「ア、アン……?」

「姉弟ごっこはお終いよ、オスカー」

 戸惑うオスカーの声にカザナは、冷たく言い切る。


「あなたのお母さまであるヒカルさまからの依頼で警護についていただけの関係よ」

「でも、今僕の王眼が光った……」

「さようなら、オスカー。もう二度と会うこともないわ」

 冷めた視線をオスカーに注いで別れの挨拶をする。カザナは風の杖の神器と一体化する。カザナの身体が白い光で発光する。ばさりと白い翼を広げると、簡易の結界を呼び出して姿を消した。


「アン!」

 その場に残されたオスカーはかつての自分に優しく仕えてくれたメイドの少女の面影を求めて、その名を叫んだ。

 だが、その名を呼ばれても答える者はいなかった。

幼少期編完了です!

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