第4話:サラという少女
太陽が差し込んだ雲一つない快晴。羊と鶏の鳴き声が飛び交う。
シーナ「…んんぅ…」
窓からの日差しが顔に当たり、目を覚ます。昨日の疲労はとれたようだ。すっかり楽に動ける。
オリバー「今日はヤード村に行こうか。」
その村はサラさんが入院しているという。小さい商業町で異形の生息も少ない。異形による被害はないらしい。
歩いて30分ほど。ヤード村と書かれた看板があり、その先にかすかに人がいるのがわかる。商人や品を吟味する客だろう。
その商店街を通り過ぎ、人気のない場所に小さな療養所がある。
ドアの隣に綺麗な花が植えられている。中に入ると少し医薬品のにおいがした。
シーナは懐かしいにおいを感じた。カリヴァーの研究室に入った時だ。
窓際に風鈴が飾られ、良い音を奏でている。
カーテンで全体は見えないが幼女らしい足が見える。
オリバー「サラ、また来たよ。」
彼の後についてサラの顔を覗き込む。
可愛らしい寝顔と綺麗な赤髪。母親似なのだろうか。
後ろから男性の声がした。振り向くと衣服を着た細柄の男性だ。
衣服の男性「おう、来たのか。昨日は起きてたんだ。」
オリバー「そうか、よかった。あぁ、この子はリーファ。故郷を追い出されたんだ。」
男性はシーナに近づいて話しかけた。
衣服の男性「私はヤジロ。私も…故郷から出ていった。君と同じだな。」
シーナ「そう…なんですね。お互い大変ですね。」
オリバー「はっはっはっ。七歳に見えないね。」
ヤジロは私が七歳と聞いて驚いていた。
サラ「んん…」
オリバー「サラ!起きたのか。」
サラ「お父さん、来てたんだ。」
ゆっくり体を起こしてこちらをみる。
サラ「…貴方は誰?」
少し警戒した表情に変わる。
シーナ「わ、私はリーファ。貴方のお父さんに助けられて…」
サラ「それで?」
オリバー「サ、サラ。この子は悪い子じゃない。とても優しくて礼儀のある子なんだ。」
サラはうつむいて何かつぶやいている。
サラ「あ、あの。リーファさんってベイリーンから来たんですか。」」
それを聞いて私は背筋に電気が走ったような感覚がした。
なぜ私がベイリーンから来たと分かったのか、王女だとばれたのかもしれない。
何か言い訳をしないと怪しく思われる。何か口にしようとした瞬間、
「ヤジロ先生!…はぁ、はぁ、ワ、ワンズローがまた!」
ドアを激しく開けて一人の男性が息を切りながら言った。
ヤジロ「ああ、わかった。」
オリバー「私も行くよ。シーナ、サラといてくれるかい?」
シーナ「は、はい。」
部屋には私とサラの二人になった。
静寂の中、口を開いたのはサラだった。
サラ「ねえ、シーナさんってさ… 王女様ですよね。」
シーナ「い、うや。違います。」
(びっくりして舌かんじゃったぁぁ)
舌を出して痛がる様子を見るサラは安心した。
サラ「ふふ。クールなようで天然な所があるというのは本当だったんですね。」
シーナ「えぇ?私はポンコツじゃないよ。でも貴方、私のこと知ってる人はシーナ様とか王女様とか呼ぶのにさん付けだなんて、礼儀を知らないの?」
サラはきょとんとした表情を浮かべる。
シーナ「い、いや。なんでもない。シーナさんでもいいし、呼び捨てでもいいから。」
サラ「…ぷっ…」
シーナ「あ、貴方!今笑ったでしょ!」
二人は笑いを含めた会話をした。お互い今まであったことを話した。サラも基本魔術が扱えず、異形になることを住民から恐れられた。
この町は異端を受け入れる町でもあったらしい。それがだんだん受け入れてもらえなくなっているらしい。シーナはサラと話すたびに懐かしい感じがした。幼いころサラに似た世話人がいた記憶がうっすらある。しかし、ポツンと来なくなった。カリヴァーと出会ったのはその後だった。
話し終わるころには彼女たちはすっかり仲良しになっていた。