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常若の国から。(仮)  作者: 小石川沙姫
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case005:四ツ沼村事件なんてなかった


発展した科学は、その探査を外宇宙まで伸ばしている。

僅か百年前の空想は空想でしかなかったと証明されたが、新たなフロンティアが拓かれた。

月面都市や焔星に移民計画など、フィクションだった事が現実味を帯びてきた。


だが、世界は未だに謎に満ちている。


未確認生物や謎の飛行物体の目撃情報は後を絶たない。

殆どは合成だったり見間違え、光や影が写りこんだだけといった映像だが、極一部には鑑定しても合成などではなく、『何か』は確かに映っているが判別は出来ない、そんな物もある。


そういった世界の謎に迫るシリーズ第16弾、『謎の廃村、四ヶ沼村の真実』 をお送り致します!



私は永崎晴海。子役で芸能界入りをしたけれど、二十を過ぎればただの人。十代後半には仕事が減り、今はバラエティー番組で体を張るお仕事がたまにあるくらい。

今回は夏に向けて、オカルト番組の取材で某県の山中にあったという廃村に向かいます。


まあ、よくある噂話しで原因不明の感染症が蔓延し、この村に患者が集められて、その閉鎖空間で惨劇があって村は閉鎖、残っていた住民も感染症で全滅したとかいう話。

作り話なんだろうけど。


それにしたって、そんな所行きたくないよー。

でもお仕事なんだよね。今さら芸能界辞めても困るしなぁ。若手俳優さん辺りとゴールインして引退というのが理想的なんだけど、浮いた話はありません。ぐすん。


とりあえず今日は村があったという山の近くの町で取材があって、そこの旅館で一泊です。

有名ではないけど一応温泉があったのは役得だね。ゆっくり浸かって汗を流して、夕食となった。部屋ではなく食堂に。


「黒岩さん、お注ぎしますねー」

「おう、サンキュー」


ディレクターの黒岩さん、カメラの田端さん、あとアシスタントで隠岐さん。それと私の四人が今回のチーム。まあ、少数精鋭と言えば聞こえは良いが、深夜帯で私達が右往左往する場面を芸人さんがツッコミ入れるという、本当かどうかなどどっちでも良い訳で。


「しかし晴海ちゃん大きくなったね、昔はこれくらいだったのに」


グラス片手に、親指と人差し指を広げて見せる黒岩さん。

冗談のセンスが~‥‥うん、結構なベテランなんだけど、こういう所が売れない原因だよね。それで回ってくるのは、こんなロケっていう。子役の頃から知っているおじさんが一緒なのは

有難いけどさ。


「流石それhないよー。はい、田端さんも一杯」

「頂くッス」


田端さんは茶髪でピアスのチャラい感じの二十代。見た目はあれだが学生の頃から写真をやっていて、当時は賞とか取ったそうだ。本当は風景写真とかを撮って世界を回りたいが、名前の売れてない現在はこっちの仕事で、休日に個人的な撮影に出掛けるそうだ。結構しっかりしてるね。


「それにしても、町の人誰も村の事は知りませんでしたね」

「ですねー。明日大丈夫かなぁ」


隠岐さんと私はビールじゃなくて烏龍茶。

隠岐さんは真面目で地味な、私と同じ二十二歳。ショートカットの眼鏡っ娘。短大卒でこの業界に入った新人さんだ。

こういうロケは男性多いので女の子は嬉しいね。大変だと思うけど頑張って欲しい。


「それじゃ、頂こうか」

「「「「かんぱーい」」」」


夕食はそれなりに豪華で、お刺身に地元の鳥の鍋料理がメイン。お刺身はまあ普通にマグロとイカに甘エビと、どこでも食べれる解凍の物だが、お鍋はホロホロの鳥が美味しい一品だった。


「夕食くらいは美味しい物食べたいよね」


笑顔の黒岩さん。本当はもう一泊の所を一泊二日の強行軍にして予算をこちらに回したようだ。

村があったというのは実に百年くらい前の事で、取材しても大した成果は無さそうと最初から見切りをつけていたようだ。


「その分明日は大変だからね。今夜は英気を養っておいてくれよ?衛生写真で場所は確認したけど、半ば道なき道をって事になりそうだからね」

「一応、近くまでは山道あるんですよね?」

「地元の人に聞いてみたッスけど、国有林で年に一度くらい管理で入るのと、キノコ狩で山に入るくらいらしいッスね」


うわー、それはまともな道はなさそうだなぁ。


夕食を堪能した後は、朝も早目なので早々に寝る事にした。

黒岩さんと田端さんはもう少し飲んで行くそうで、追加で焼酎を頼んでいたけど、隠岐さんと部屋に戻る。

しばらく「付き合ってる彼氏とかいるのー?」などと女子トーク。隠岐さん、短大時代にバイトで知り合った彼がいるそうだ。あー、どこかに趣味の合うイケメンいないかなぁ!



おはようございます。

朝5時、起床。流石眠いけど、顔を洗って急ぎ身支度。

朝食は旅館ではなく途中コンビニに寄ってお昼の分と一緒に購入する予定。

大きな荷物は車に載せたままだったので、早速出発だ。

こんな時間なのに従業員の方はちゃんとお見送りしてくれた。ご飯も美味しかったし、一泊なのはちょっと残念。


コンビニは車で5分。早朝なだけあって、私達の他はお姉さんが一人店の外でコーヒーを飲んでるくらい。スレンダーで背の高いモデル体型が羨ましい美人さんだ。こちらを気にしているようだったので、軽く会釈をして店内に。

急いでお弁当のコーナーに向かい、朝食用は‥‥うん、定番のツナマヨと、それから‥‥キムタクご飯?地元のおにぎりでキムチと沢庵が入っているらしい。へぇー。これにしてみよう。

お昼には現地がよくわからないし、コロッケパンとメロンパン。あとはお茶と缶コーヒー。

各々が適当に購入し、店を出た。

お姉さんはまだこっちを見ていたが、他所の人が珍しかったのかな?


「‥‥対象は予定通りに‥‥‥はい‥‥了解です」


スマホで電話をしていたので、普通に通り過ぎる。美人さんは、電話掛けてる姿も様になってていいなぁ‥と、自称女優としては立ち振舞いを観察してしまうが。

黒岩さんの呼ぶ声に、慌てて車に戻った。



それから車は山に入っていく。途中で舗装が無くなり、砂利道をしばらく行くと拓けた場所に出て道は終わっていた。

小さなプレハブ小屋が建っているが人は居ないようだった


「天気、いいみたいで良かったですね。新緑が綺麗」


とりあえず、ここで朝食。森の中でご飯は悪くないね。

例のおにぎり、結構美味しかった。キムチだけど沢庵のおかげで辛味より甘く感じる。これもご当地グルメ?


「そろそろ始めようか」


ご飯を食べて一息ついた所で、ここから撮影開始だ。田端さん、隠岐さんが準備をしている間に、身だしなみをチェック。

さあ、お仕事頑張らないとね。


「おはようございます、現在朝の7時くらい、私達は謎の廃村があるという山に来ています。そんな所とは思えない、緑が綺麗な所ですね!」


「あ、あそこから入って行くみたいですね。この辺りは地元の人もあまり入る事はないそうです。噂の村が存在したのは朝河幕府の後期ですので、約150年前。この先に村は残っているのでしょうか?」


所々でレポートをしながら、辛うじて道らしき後がある山を登っていく。先頭は黒岩さん。草刈り鎌を持って先を切り開いてくれている。

ガシガシ刈りながらの行軍はキツイようで途中、田端さんと交代しながらだったけど。ガンバれ、男の子。

傾斜は緩やかで、気温もまだ5の月の始めとあって高くはない。天気も良いので、登山なんかには最高なんだろうけど、体力のない私には結構ツラい。

小休止を挟みながら、掻き分けるように3時間。唐突に視界が開けた。


「これは‥‥‥」

「何もないッスね」


膝下くらいまでの草が繁っている広場。衛星写真に写っていた場所はここであっているようだけど、村の後と思えるものは何もなかった。


「んー、やっぱり村なんかないかー。しかし番組的に何もなかったというのも困るねえ」

「途中も特に何もなかったですしねぇ」


恐ろしい獣の唸り声が~とか、行く手を遮る断崖が~‥とか。

いや、熊とか出たら困るけど。死んだ振りってダメなんだっけ?

一応、何かないかと周辺を四人で手分けして調べてみたが、成果無し。まあ、村の話自体が作り話なら当然かも。

少し早いがシートを敷いてお昼にする事に。


「君たち他所の人かい?」


メロンパンは本当にメロンを使ってるのは邪道よね、とか現実逃避をしていた、そんな時不意に掛けられた声。

振り向けば、ジャケットにジーンズ、リュックを背負いっているが、山の中ではやや軽装に見えるスタイルの男性が立っていた。短髪で彫りの深めな西方風の顔はイケメンだ。

地元の人────朝のお姉さんといい、イケメンとか多いな、そーいう土地柄なんだろうか。ちょっと似てる気もするし兄妹とか?そういや旅館の人にも美人さんがいたな。


「あ‥‥はい、テレビ番組の取材で」

「ああ、話は聞いてます。何もないでしょ、ここ。あ、私は役場に勤めてまして、今日は山菜取りに」


男性は苦笑いでそう言う。


「ここは以前ゴルフ場の開発の候補になったんですが、不況なんかで結局中止になりましてね、調査で伐採なんかはしたんですが、ご覧の通りですよ」


なるほど、それでここだけ広場みたいになってるのかな?


「では、昔ここに村があったという話は‥‥」

「聞いた事は無いですね。昔は山ばかりの土地ですから、稲作は為に村ごと移住した事例もあったそうですが」


朝河幕府の頃は税金をお米で納めてたので、農地の少ない土地は貧しかった。あの噂の下地として、この辺りが選ばれたのかもしれない、か。


「仕方ない、ここは撤収するとしよう」


黒岩さんが決定して、荷物をまとめ、さっさと下山よ。

───と、その前に。


「そういや、お兄さんご兄妹とかは?」

「え?いませんが‥‥‥」

「いえ、あの町、美人さんとかイケメン多いから、兄妹とか親戚なのかなーって。それじゃ、失礼します」


怪訝そうなお兄さんさんに別れを告げ、私達は元来た道を逆戻り。またあれを三時間か。収穫無しとかキツイわー。テンション下がるー。


「晴海さん、さっきの方みたいのが好みとか?」

「あー、うん、イケメンは正義よね!」


昨日の話の続きか、隠岐さんが聞いてきたので、そう答えたが、「好みはそれぞれよね」なんて呟かれた。

むう。西方顔はお気に召さないのかー。あとで彼氏の写真とか見せてもらおう。



そんな感じで、帝都に帰還。

企画の方はお蔵入り、代案として悪霊が出るという夜中の廃病院で肝だめしをさせられる事になった。ギャー。


こういうのではなく、普通のドラマとかやりたいです。

もしくは、イケメン彼氏が欲しいぃ!

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