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野犬? 【WEB】

作者: 雨澤 穀稼


   野犬?


 ひょんなものに、出くわすことがある。

 ひょんなものと言っても、今回は犬なのだが……。

 明るい内に出会う犬、飼い主様と楽しげに散歩する犬。

 リードを伸び縮みさせてタッタッタッタッタッタハァハァハァハァと駆け回る御犬様なら可愛いものですが……たまに可愛くないのもいますけど……。

 吠えられることはあっても多少の距離感さえ確保していれば、イレギュラーを除けば安全に近いと言えるでしょう。

 が、だ! しんしんと雪の降る夜……灯りの消えた家々が建ち並ぶ住宅地を、夜勤に向けて通勤の途中ふと……視線を感じて振り向いた先に……吠えるでも無く無言で黒い目がキラリと光る、壱匹の犬の影がジッと見詰めていたらばどうだろう……。

 首輪は無く勿論リードに繋がれていたりもしないのである。

 野犬だ……様子を伺うでも無くジッと無表情で……家壱軒分(いっけんぶん)向こうにすっくと四肢をピンと伸ばし尻尾をダラリとたらして、雑種ではあるがバセットハウンドが強く出ているフォルムで、しんしんと雪の降る中……薄暗な街頭に照らされてそこに野犬壱匹いたのですが……。

 えっと……これはヤバい奴だろうか……ふ〜むと野犬から目を離さずに考えてみる……犬の気持ち等分かろう筈も無いのだ……尻尾はダラリとしているし、目も真っ黒だし、微動だにしないのである……何を読み取れと言うのだ。

 暫くしんしんと降る雪が少しずつ積もって行く……遅刻する訳にはいかないしな……見つめ合ったまま悪戯に時間だけが経ってゆく……西部劇のガンマンの対決はこの様な感情なのかな等と不謹慎にも思ってしまうのである……でも、野犬くんから目が離せない……更に暫く見つめ合っていると……もしや……あやつは小心者の野犬では無かろうかと……頭を過ぎる。

 これは賭である……ゴクリと唾を飲み込む……埒があかないので……もう既に目を合わせているんだし、襲う気持ちならとっくに襲われているばすだ! と、壱歩! 壱歩! 壱歩! と長靴をパニュパニュと新雪を踏み締めながら野犬くんの方へと歩み寄って行く……野犬くんがハァハァハァハァと息を荒らげて虚取り出した……はあはあ〜ん! 怖くて固まっていたのだな! この小心者め! と、ダダダッと駆けて行くと……クルリと踵を返して、壱目散に野犬くんは駆け出して行きました。

 偶に立ち止まっては、此方を何度かチラ見して住宅地の角を曲がり去って行きました。

 ふぅ〜……やれやれ……助かった……と安堵。

 中型犬でも壱対壱で対面してみると、怖いものでありました。

 この寒空の中、野犬くんも怖かったのかなと……お腹を好かせていたのかも知れませんし、あたたかな今宵の寝床を探していたのかは分かりませんが……元は飼い犬だったんだろうなと、思うと何だか切ないな……。

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