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97.決心

思っていたより重い話に皆の顔色は悪く…

”可哀想だが王子は長くない。良かったではないか。近い将来あの卑怯な男(リンデル)から解放されるぞ”

『なんて事言うの!』


うすら笑いを浮かべとんでも無いことを言い出したユーリを叱責すると、アイーナの手を取ったユーリは


”ステイシアと取引をした。当初彼女は娘を贄にすることを拒んだ。そんな彼女に召喚の儀式を失敗させる方法があると持ち掛けた。彼女には娘を贄にしない代わりに、アイーナとフィーリアに渡る時に離縁する事を約束させた”


アイーナはユーリの言っている意味が分からず困惑していると、ユーリは楽しそうに事の顛末を語り出した。

ユーリとステイシアの双子の子は見分けがつかない位よく似ている。そんな2人が入れ替わっても分かる者はいない。ステイシア以外に唯一見分けが付く乳母に長期休暇を与え、儀式直前に用意された控室で最後のお別れの時に双子の産着を取替えた。そして儀式には息子のベックを差し出したのだ。


「だから漆黒の乙女の召喚が出来なかったんだわ」


そう呟くと父様は気まずい顔をした。ユーリの狡猾さに皆は顔を歪める。眉間に皺を寄せたルイス殿下は続きを読む。


神の怒りから乙女が召喚されなかったのだと思っていたアイーナは、神をも欺くユーリに恐怖を覚えた。そしてアイーナの心の中からユーリが消えるのを感じ別れを決断する。だがここまで来てもユーリの良心を信じたいアイーナはユーリに


『私は自分が産んだ子でなくても、愛する人の子なら愛おしいわ。だからステイシアが産んだ子を贄にしなければならない時、心が痛み涙が止まらなかった。どんな状況でも子供に罪はないもの。貴方は私の血を引く子を愛おしく思ってくれないの?』


”愛おしい?はは…愛する人を寝取った(奪った)男の血を引く子を愛せる訳がない。そんな事より早くアイーナの足枷・手枷から解放してあげたい。君は今まで通り私だけ見ていればいいんだ”


ユーリの中に良心も無いと感じたアイーナは別れを告げた。すると


『”私は貴方と共に歩めない。だからお別れましょう” と告げたの。すると彼から表情が無くなり、身の危険を感じ二歩下がり、直ぐに騎士に視線を送り助けを求めた』


直ぐに騎士2名がアイーナの前に立ちユーリを牽制する。顔を歪めたユーリは地を這うような低い声で…


”王太子妃殿下は乙女の渡が無く困惑しておいでの様だ。落ち着き私の心がお分かりになれば、昔に戻れるはず。王子殿下の快方を心よりお祈り申し上げます”


貴族らしく胸に手を当てそう言い一礼をしユーリは立ち去って行った。その場にへたり込んだアイーナを騎士が抱き上げ馬車に戻る。馬車には侍女が待っていて顔色の悪いアイーナに果実水を差し出す。少し落ち着いた所で戻る事に。そして


『!』


馬車の窓から双子の子を抱きかかえたユーリとステイシアは満面の笑みで馬車を見送る。馬車が2人の前を通り過ぎようとした時、ユーリが指で自分の唇を指さした。見なければいいのに反射的に見てしまうと


【 君は私だけのものだよ】


うすら笑うユーリとその言葉にショックを受けたアイーナは意識を手放してしまった。


「「「「「…」」」」」


部屋の空気は真冬の様に凍え息をするのも辛い。そんな中で一人ヒートアップしている人がいた。


「なんたる事だ!神を欺くなどあってはならん事だ!スティーブ!バンディス家はどうかしている」


神の慈悲により異世界から遣わされる乙女の儀式の不正にジン様の怒りが爆発し、ユーリの子孫である父様にジン様の怒りが向く。何も言い返す事も出来ない父様は項垂れジン様の叱責を受け止めている。

そんな父様に陛下が助け舟を出すが、ジン様の怒りは治まらず次は陛下に矛先が向く。


この事件に関わった子孫である皆さんの消沈ぶりは酷く声をかける事も出来ない。そんな中で私一人が冷静だった。確かにショッキングではあるが、この事実から何故乙女が召喚が始まり、今世で4人もの血の病を出したのか推察しなければならない。正直感傷に浸っている場合ではない。私が決断する日は迫っているのだ。


怒号が飛び交う陛下の執務室へ王妃様が来た。入室した時顔を強張らせた王妃様は、大きく深呼吸し


「皆さん。日は落ち夕食の時間となりました。食事を取り休憩なさいませ。根を詰めてもいい答えは出ませんわ」


そう言い休憩をとる様に言う。こうしてこのまま王城に泊まる事になり、女官に案内され貴賓室に案内された。各自一旦部屋に行き食事を取り、続きは明日の朝となった。私と父様は一緒に食事をするが食欲が無い父様はお酒ばかり召し上がる。呑みたい気持ちも分かるが体に良くない。父様の隣に移動し食べる様に促す。食事の世話をする私をじっと見ていた父様がやっと口を開き


「ユーリの子孫である私やザイラを軽蔑してくれていい…だが…」

「何変な事考えているんですか。父様やザイラはユーリではありませんよ。先祖の愚行を子孫が背負う事はありません。私にはいい父親と弟ですから。あまりご自分を責めないで下さい」


そう言い微笑んだ。すると少し表情を緩めた父様はスープに手を付ける。やっと父様と食事をし少し落ち着いた。今日は皆さん疲労困憊で話し合いはしない。就寝準備をしベッドに寝転がりぼんやりと天井を見ていた。ふと


「渡ってたって来た乙女達は幸せだったのだろうか?」


アイーナの場合は色々あり記録が多く残っている。しかし他の乙女の情報は少ない。乙女の中でもアイーナが一番不幸だった…あれ…もしかして…


『渡って来た乙女の幸福度が血の病に関係している?』


そんな気がして起き上がり、ガウンとローブを羽織り父様の部屋に急いだ。

お読みいただき、ありがとうございます。

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