85.成人
両殿下とディック様に陛下から真実が明かされる。そして最後の治療と成人の儀の事を話し…
「「「…」」」
陛下から話を聞き押し黙る両殿下とディック様。ヤマト制圧はかなり衝撃的だった様で、ルイス殿下とディック様の顔色は悪い。そして両殿下とディック様は父様と同じくヤマトの民が許しているのに、何故血の病が続くのか疑問に持つ。
『解決するとまた疑問が生れる。早く全て知りたいのに…』
あと少しで最後の治療となり、その数日後には成人の儀が行われる。それまでに全て知り身の振りを決めたい。ふとある事が気になりジン様に
「成人の儀と治療を終えた乙女は、ヤマトの世界へ帰る事が出来るんですよね?」
「ミーナ!」
父様が手を取り悲壮な顔をして見つめて来る。どうやら父様は勘違いしているようだ。まだ帰ると決めた訳では無くて確認したかっただけ。その旨父様に説明すると少し表情を緩めたが、不安げな眼差しに嘘でも帰りたいなんて言えなくなってきた。
と言うか実は私は帰る気は全くない。何も知らない幼子なら異世界に移っても順応できるだろうが、今ヤマトに帰っても苦労するのは目に見えている。
でも帰る気は無いが本当の両親に会ってみたい。ずっとこの世界に馴染めず自分が異質な存在だと感じ孤独だった。もしヤマトの民が暮らす世界に行けば違和感なく過ごせるのかもしれない。
「ミーナ嬢も文献を読み分かっていると思うが、成人の儀の後に迎える新月の深夜にヤマトの世界と歪みの森が近くなり、あちらに行く事が出来る。そのタイミングを逃せば二度とヤマトの地へ行く事は出来ない。そして…」
「!」
ジン様は怖い事を言った。あくまでも推測でしかないが、私がここに留まりたいと思っても贄なった娘つまりケイミー嬢が帰りたいと願えば、私の意思関係なくヤマトの世界に帰る事になるかもしれないという。
「でも、過去の乙女の記録では…」
そう漆黒の乙女はヤマトに帰ったが、贄になった娘が戻らなかった事例がある。今回はその逆パターン。それなら父様が願う様に、ケイミー嬢が戻り私もここに留まる事が出来るかもしれない。そうジン様に言うと父様が身を乗り出した。するとジン様は
「贄の娘と漆黒の娘二人がこちらに残った事例はない。だから確実そうなるとは言えんのだ。期待させたくないからヤマトに帰る事になるかもしれん事を頭に入れておいてくれ」
ジン様の言葉に父様が肩を落とした。私も頭が真っ白になり何も考えられない。沈黙する私達に咳ばらいをした陛下が一旦休憩を挟む事を提案した。気を利かせた陛下は父様と2人で話せるように、別室を用意してくれ陛下の執務室を出ようとしたら
「ルイスに渡したアイーナ嬢の日記を休憩後に開示しよう。何か分かるやもしれん。それにアイーナ嬢に関しても恐らくバンディス家と相違がある。この辺も王家は誤解を受けたままなのでな」
「誤解?」
それを聞いた父様は驚いた顔をし少し考えて
「ならばユーリの日記も開示しましょう。但しアイーナと別れた後のユーリは精神が不安定で内容はかなり辛辣な上に見るに堪えない内容です。心していただきたい」
それを聞いた皆は顔を強張らせた。こうして休憩をとる事になり、私と父様は騎士に案内され応接室に向かう。
「ミーナは本当にここに残りたいのか?」
応接室に入るなり不安げな父様はそう言った。本心だと告げるとやっといつもの父様に。そして父様と2人になり気が抜け、だらしなくソファーに寝転がると父様もソファーに深く座り足を組んだ。
少しの沈黙の後、父様は
「私の願いが叶い愛する娘達と過ごせることを切に願っているよ」
「ケイミー嬢は母様似?」
「幼い頃はそうだったが、ヤマトの養父母との生活で代わったいるやもしれんな」
そう言い父様は遠い目をした。そんな父様を複雑な思いで見ていた。ずっと離れていても実の娘は可愛いのだろう。もしその娘が帰って来たのなら、私はいない方がいいのかもしれない。
勿論父様がそんな事を望まず私も愛してくれているのはよく分かっている。でも…やっと実の親と過ごせるケイミー嬢の邪魔はしたくない。
薄情だが私は実の両親への想いは薄くやはり父様を親だと思っている。だから父様には幸せに過ごして欲しい。だから…
「私ね…成人の儀が終わりここに残れることになったら、この国を出て一人で生きていくわ。勿論年に1回くらいは帰省するよ」
「ミーナ!」
父様は隣に座り私を抱きしめた。バンディス家の皆もザイラも大好きだし、ほんの少しだが母様に対しても情はある。でも森に閉じ込められた反動か、外の世界で自分の意思で自由に生きていきたという思いが強い。その想いを父様に伝えると
「少し時間をくれ。困惑している」
父様はそう言い押し黙ってしまった。親不孝なのかもしれない。でも成人したら自分の意思で決めていきたい。強くそう思い父様の手を取り寄り添い、父様が落ち着くのを待った。
どの位経っただろう。やっと目を合わせた父様は少し涙目で微笑み
「まだまだ子供だと思っていた娘が、こんなに立派になり巣立とうとしている。私の方が子離れできないダメな父親だ。これからはミーナの行く先を応援するよ。ただ…」
「ただ?」
父様は前と同じくいきなり何処かに行かないで欲しいと願った。私は必ず相談する事を父様と約束した。そしてやっとお茶とお菓子をいただき一息つく。父様もかなりお疲れなのか、珍しくお茶に砂糖を入れ飲んでいる。目が合うと恥ずかしそうに
「疲れた時は甘いものだな」
「そうね。砂糖もう一つ入れる?」
他愛もない親子の会話を楽しみ、心の中で育ててくれた父様に感謝をした。
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