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8.何者?

治療の日になり朝から慌ただし屋敷の中で一人ぼんやりしているミーナ

今日は月1回の治療の日だ。それに朝から明日の舞踏会の準備もあり屋敷の中は慌ただしい。当事者の私は出発時間まで自室でロダンダの紹介本を読んでいた。

ロダンダは温暖で海産物が豊富な国。国王が国を治め領地を管理する貴族もいる。しかし貴族はあまり力が無くどちらかというと大地主的な立ち位置で、貴族同士の揉め事はあまりない。

紹介本を読む限りいい印象だ。私が住むボルディン王国は身分が全てで貴族同士は殺伐とし上辺ばかりで嫌いだ。ロダンダの方が生きやすいかもしれない。

デュークの叔父さんは確か大きな港町で宿を営んでいると言っていた。本をめくりロダンダの玄関となる港町のページを読む。港町は国外からの客が多く活気があり、異国の文化も混ざり興味深い。


「異国から人が沢山くるなら宿も繁盛し忙しいだろうなぁ…その分お給金がいいかも!」


自分で働き収入を得れたらご褒美に自分に何か買おう。そう思うと楽しくなって来た。ロダンダでの生活を妄想していたら出発の時間が近付き慌ててエントランスに向かう。いつもは馬車1台だが今日はホテルに泊まるので2台で教会に向かう父様と私が一緒に乗り、もう1台にはホテルに先乗りするマーガレットさんとアンと従僕が乗り出発する。

車内では父様が珍しく書類を読んでいる。いつもは私と他愛もない話をするのに忙しい様だ。私も本を数冊持込んで本を読んで過ごす。

本に没頭していたらあっという間に教会に着き、マーガレットさん達を乗せた馬車は先にホテルに向かい準備をする。

いつもどおり裏から教会に入ると神官さんが待っていて、いつもどおり父様と治療室に向かう。痛いのは嫌だけど今日は父様が一緒で心強い。治療室に着くとジン様と父様が挨拶をしている。すると奥の扉が開き誰か入って来た。


「リアム様?」


先月お会いしたリアム様がお付を連れて出て来た。ご挨拶しようとしたら父様が私の前に立ち視界を塞ぐ。そして温和な父様が発したことも無い冷たく低い声で  


「失礼だが成人前の女性の治療に殿方が同室するのは品位を疑う。退室いただきたい」


するとリアム様のお付きがリアム様を背に庇い父様に失礼だと苦言を呈する。するとジン様が間に入り仲裁している。

お付の背から顔を出し私に手を振るリアム様。彼は楽天家の様だ。一応軽く会釈をする。


「侯爵。先ほどまでリアム殿の治療をしておったのだよ。同室にならない様に配慮したが済まなんだ。リアム殿は治療を終えた故退室なさって下さい」


さっき手を振っていたリアム様の左手にはまた包帯が巻かれていた。もしかして私と同じ病気?もしそうなら同じ痛みを小さい頃から受けているのかも…少しリアム様に親近感を待つとリアム様が


「侯爵様失礼いたしました。決して邪な気持ちがあり治療室に居た訳ではございません。包帯が解けてしまい巻きなおしていたのです。直ぐにお暇致します」


そう言ったリアム様は綺麗な礼をして扉に向かう。そして私の横を通り過ぎる時に凄く小さな声で


「あとでね!」

「へ?」


びっくりして振り向き出ていくリアム様を見ていたら父様に手を取られ引き寄せられた。まるで“彼を見るな”と言っている様だ。

そして椅子の座らされ気が付くとジン様が向かいに座って私の手を取っていて…


「いったぁーい」


他に気を取られていて気が付くと同時に針を刺され激痛が走る。大きくなって久しぶりに涙した。ジン様はハンカチで涙を拭いながら労ってくれ、そして笑顔で


「後6回だからね」


その言葉地味に凹みます。

テンションがまた地まで落ちた私は休憩室へ移動する。騎士のマットと神官さんの後をついて歩く。父様はいつも通りジン様と話がある様だ。

今日も騎士がついてきたため、教会の散策に行けない。休憩室は1人だからソファーに寝転がりぼんやりしていた。


“コンコン!”

「へ?なに?」


ソファーから身を起こし部屋を見渡すと窓の外にリアム様が居た。ビックリして固まっていると彼は手招きしている。

ちゃんと淑女教育を受けた令嬢なら護衛騎士を呼ぶ所たが、生憎身分だけ令嬢の私は何も考えずに窓に近づく。

リアム様はジェスチャーで窓を開けてと言ってきた。父様に知れたらきっと叱られるのは必至。でも同じ境遇かもしれないと思うと、話してみたくなり窓を開けてしまった。


「ありがとう。ミーナ嬢!君とじっくり話してみたかったんだ」

「ちょっと!部屋に入る許可はして無いわ!」


許可なく満面の笑みを浮かべ窓から入ってきたらリアム様。当たり前の様にソファーに座り込みニコニコしながら私を見ている。


「こんな所見られたら逢引していると勘違いされるし父様に叱られるわ!」

「伝えたい事があるんだ。話したら直ぐ帰るよ。俺も護衛を巻いて来てるからさ!」


人懐っこい笑顔をするリアム様。その笑顔を見てると許してしまいそうだ。


『やっぱりこの人は人たらしだ』

少し警戒しリアム様を見ていたら、急に笑い出すリアム様。


「やっぱり貴女は愛らしい。思っている事が顔に出る様だ。やっぱり俺怪しく見えるよね⁈」

「はい」

「やっぱりか…自分で言っても説得力無いけど、身分はしっかりしてるからね。それに真剣だから」

「…」

「あー信じて無いな!」


話せば話す程軽く感じる。それより話は何なの?にこにこしながら私を見据えていたリアム様は急に真面目な顔をして


「明日の舞踏会は気を付けて。貴女と縁を持ちたい男達が狙っている」

「私を?ナィナィ!」

「ダンスも応じないで欲しい」

「私も嫌だけどそう言うわけには…」


入ってきた時と違い真剣な眼差しに困る。よく見ると真顔は凄い美丈夫で今まで会った中で一番だ。


『…って言っても森に引きこもりだから、比較する人は少ないんだけどね』


そんな事を考えていたら、まだ真剣な表情をしたリアム様は話を続けた。


「王太子とのダンスは避けれないだろうが、ザガリー公爵家のディック殿とは踊らないで欲しい」

「父様と王太子以外は受ける気ないわ」

「そうして。もし誘いがしつこいようなら中庭の噴水に逃げておいで。俺が匿ってあげるよ」

「・・・」


正直リアム様とはまだ信頼関係を築けていない。何も考えてない様で結構私警戒心が強いんだからね!


「困ったら父様に頼るわ。私まだ貴方を信用してませんから」

「だよね~。でも何があっても俺は君の味方だから…」


“コンコン”「お嬢様?何かありましたか?話し声が…」


外に控える騎士マークが入って来ようとしている。思わず扉を見ると施錠をちゃんとしてあるから、すぐ入って来られる事は無さそうだ。リアム様に“帰って”と言おうとしたら目のまえに居ない。


「ミーナ。明日は俺も参加しているから俺を捜して!」

声がする方を見たらリアム様が窓枠に手をかけ軽く窓から外に飛び出した。


「えっ!ちょっと!」

「着飾った貴女を楽しみにしているよ」


慌てて窓に行くとお付の方が私の方を見て深々と頭を下げてリアム様と去って行った。


「お嬢様。失礼します」


異変に気付いたマットが鍵を開けて入って来た。何とか誤魔化さないとこれ以上騎士や侍女に干渉されるのは嫌だ。


「何かございましたか?声が…」

「ごめんなさい。ここ数日のダンスレッスンで疲れてた様で、ソファーでうたた寝していて寝言を言っていたみたい。恥ずかしいわ…父様には言わないで」

「・・・寝言でございますか?」


探るような視線に必死で表情を作り怪しまれない様に誤魔化す。ヤバかったがマークにはバレなかった。そして難しい顔をし溜息を吐いてマークはまた部屋の外へ出て行った。


『絶対明日の舞踏会何か起こるわ…行く前からもう嫌だ』


行きたくない気持ちと意味不明なリアム様に困惑しどうしていいか分からない。リアム様は何者なのだろう…本人曰く身元はしっかりしているらしいが…謎過ぎて見当もつかない。


『もういいや…考えるのも疲れた』


投げやりになっていたら帰る時間になり父様が部屋に迎えに来た。父様の表情は険しい。


「ミーナ。帰ろう」

「はい」


廊下を歩き裏口から馬車乗り宿泊予定のホテルへ。しかし…車内の雰囲気は頗る悪い。さっきから父様の眉間の皺が尋常では無い。もうホラーだ!ナーシャが居たら泣くレベル。重い空気に押し潰されそうになっていたら父様が


「明日は王太子妃を選ぶ目的で開かれる舞踏会。成人予定の令嬢は必ず殿下とのダンスが義務付けられている。病気のお前も例外無くだ」

「はい。覚悟してます」


父様は握った拳に力を入れてまっすぐ見据えて


「ダンス中に求婚されても、その場で断っていい」

「…父様の迷惑にならない?」

「問題ないから断りなさい」


たかが侯爵である父様が王太子の申込を断って良いのか不安はあるが、何か決心した父様の表情をみていたら大丈夫な気がして来た。

心強い味方がいて安心したのも束の間、ホテルに着き部屋に入ると先客が…


「母様…」


部屋に母様が居てアンに指示をしている。見るとアンにドレスをトルソーにセットさせていた。どピンクに白フリフリのボリュームのあるドレスに目を擦り二度見してしまった。


「ステラ!其方とは当日会場で合流の筈だ…何をしている」

「明日の舞踏会の為に娘の準備に決まっています。我がバンディス侯爵家の1人娘のデビューなのです。完璧に準備せねばなりません。なんせエスコートは王太子殿下なのですから!」

「「はぁ?」」


父様と私がフリーズしている間に母様は気にせず準備を進める。目の前に絶対似合わない大ぶりな宝飾品に原色の化粧品にやっと我にかえり父様の袖を引っ張る。やっと意識が戻った父様が母様に詰め寄る。


「そんな話は私は聞いていない!」

「今言いましたわ。貴方が別邸に戻った後に両陛下と宰相様から直々に申し込まれました。光栄な事でお受けしましたわ」

「なんて勝手な事を!当主である私に伺いも立てず其方は何様のつもりだ!」


父様の凄い剣幕に圧倒されその場に屈んでしまった。するとマーガレットさんが駆けつけてくれ支えてくれる。それに気付いた父様はひと呼吸しマーガレットさんに


「マーガレット嬢。ミーナを別室に」

「畏まりました。お嬢様…顔色が良くありませんわ。あちらでお休みください」

「大丈夫…だか…」

「ミーナ。休みなさい…後でちゃんと説明するから…」


顔色が悪い父様に何も言えず、マーガレットさんに支えられ寝室に行きベットに横になる。マーガレットさんはお茶を用意しようとしたが断り一人にしてもらった。

隣の部屋から両親の言い争う声が聞こえて来る。もぅ…意味がわからない!

色々考えていたら気が遠くなって来た。まるで頭が考える事を拒否しているようだ…


ゆっくり意識が浮上し、ふと窓を見ると既に日が暮れ窓に月の光が差し込んでいる。部屋は静かで隣で争っていた両親の声もしない。喧嘩は終わってるようだ…

この後に父様はちゃんと説明してくれるだろうか⁈

お読みいただき、ありがとうございます。

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