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74.ヤーマン

ここロダンダの屋敷で心の整理をしようと思った矢先に…


「エドガー殿はヤーマン領に赴き領主と商談前にこの茶器の工房を訪れて…」


そして工房に着いたエドガー様は驚く光景を目にした。何故ならフィーリアの奥深い領地でこの変わった茶器は作られ、その領民は黒に近い焦茶色の髪と瞳をしていたそうだ。

そしてその領地ではフィーリア語と、この領地だけで使われる聞いた事も無い言葉が使われていたとエドガー様は殿下に話した。思いもしなかった話題に固まる私。そんな私を見てを嬉しそうなリアンド殿下は


「貴女が知りたがっていた貴女のルーツはフィーリアのヤーマンではないだろうか⁈」

「ヤーマン…」


ボルディンから消えたヤマトの記録は王子であるリアンド殿下も知らないはず。だから私の黒髪に近いヤーマンがルーツだと推測したのだろう。


リアンド殿下はエドガー様から預かった、ヤーマンの歴史の本を取り出しあるページを開いた。そのページにはヤーマンの人々の肖像画が載っていた。

確かにヤーマンの人々は焦茶色の髪と瞳をし、顔の作りも彫りが浅く雰囲気は私と似ている。新たな発見に興奮気味のリアンド殿下。でも本当のルーツを知る私はどう反応していいか分からない。


「恐らくミーナ嬢の母君がヤーマンにルーツを持つ女性なのでしょう」

「…」

「ミーナ嬢?」


私の反応の悪さに不安になるリアンド殿下。でも真実を明かすとなるとヤマトの事から話さないといけない。この件に関しては私の判断で言える事ではない。困っている私を殿下は戸惑っていると勘違いし、殿下は私の手を取り優しく包んでくれる。そんな私を気遣ってくれたキーファ様が


「突然の事でミーナ嬢も心の整理が必要でしょう。殿下。今日はこの辺りで…」

「そうだな。ゆっくり休んで、明日またお話いたしましょう。父君との話も心の整理がついたらお聞かせいただきたい」


こうして殿下からヤーマンの歴史本をいただき部屋に戻る事になった。


『思わぬ情報に父様との話をする事が出来なかった… って言うか話す事もまだ纏まってなかったけど』


こうして部屋に戻ったのは日が変わる少し前だった。このあと就寝準備をしベッドに入るが気が立ってなかなか寝付けず、ランプを点け殿下(正確にはエドガー様)にいただいた【ヤーマンの歴史】本を読む。


ヤーマンはフィーリアの原住民では無く、遥か昔に他の大陸から移住した民族であること。そしてフィーリア人が開拓を諦めた山奥の盆地に村を築き、フィーリアに定住したと書かれている。


『ヤーマン人は元はヤマト村の人なのかも知られない… あっ!だからなの⁈』


思い出したのは私と同じく【漆黒の乙女】だったアイーナ嬢。彼女は愛する人とフィーリアに移住する事を望んでいた。もしかしてその理由はヤーマン人が元はヤマト人と知ったから? そうであるなら辻褄が合う。

そんな事を考えながら本を読み進めると、婚姻について書かれたページが目に付いた。


「!」


そう。ヤーマンでも女性は愛する男性ひとに自ら糸を紡いで機織り身につける物を仕立て贈る習慣がある。これはヤマトと似ている。


『読めば読むほどヤマト人とヤーマン人は同じ民族なのが分かるわ』


本を読み進め新しい情報にますます目が覚める。


“コンコン”

『?』「はい?」


誰かが扉をノックをし返事をすると…


「またこんな暗い部屋で遅くまで本をお読みとは! また体調を崩しますわ!」

「あ…ごめんなさい。寝付けなくて」


どうやらまた巡回中の騎士から私がまだ寝ていないとバーバラさんに報告が上がり、バーバラさんが様子を見に来た様だ。

結局本を没収されて温かいミルクの飲まされ、幼子の様に布団にぬいぐるみを入れられた。そして部屋を暗くしたバーバラさんは視線で早く寝る様に告げやっと退室して行った。

でもやっぱり寝付けず、眠りについたのは空が白み出した頃だった。


結局朝は起きる事が出来ず、ベッドから出たのはお昼前だった。慌てて身支度を始めると気配に気付いたルチアさんが手伝いに来てくれる。ルチアさんがバーバラさんが怒っていたと言い、ルチアさんからも注意を受けてしまった。そして着替え終わる頃にバルデスさんが軽食をもって来てくれ部屋で食べていると殿下が部屋に来た。

慌てて最後のフルーツを頬張りお出迎えしご挨拶するとハグする殿下。慣れなくて顔が熱くなる。

そしてソファーに座り雑談をしていたら


「父君かはお話は聞けましたか?」

「はい。ですがまだ整理がついていなくてお話出来る状態では無くてですね…」

「申し訳ない。急かす意味で言った訳ではありません。それに…」

「それに?」


そう言うと殿下は顔を赤くして横を向いてしまい会話が途切れて気まずくなる。会話のキャッチボールは殿下で止まっているので、殿下のボール待ちの間にゆっくりお茶菓子を頂いていた。

するとやっと目線を合わせた殿下は


「貴女の心の整理がつき、お話しを聞けば貴女は帰ってしまわれる。私は例え将来の約束が無いとしても、共に過ごせる今が至福なのです。ですからゆっくり…そう!ゆっくり心の整理をなさるといい」

「あ…気遣いありがとうございます。でもいつまでもお世話になる訳にいかないし、家に帰り父ともまだ話す事がありまして…」


そう言うと殿下に手を取られ、殿下は両手で私の手を包み表情を変えた。その表情は見た事が無く知らない人に見え


『もしかしてこの雰囲気…求婚プロポーズ⁉』


ただならぬ雰囲気に無意識に助けを探すと、いつも部屋の隅で控えてくれているルチアさんも居ない。焦っていたら殿下が笑い出し


「まだ求婚プロポーズするには早いみたいですね。私は長く病を患い()()()()。だから貴女が心を向けてくれるまでいつまでも待ちます。だから無理やり答えを出さないで下さい。心が決まった時は告げて欲しい」

「…ありがとうございます。まだ皆さんのお心に答える余裕が私にはありません」


そう応えると優しい眼差しを向け、身を乗り出し私の頬に口付けた。


「!」


突然の事で一気に発汗して熱くなる。すると


「本当に貴女は愛らしい…」


そう言い今度は額に口付けた。キャパオーバーな私は仰け反ってしまう。すると微笑み何もなかった様に座り直し優雅にお茶を召し上がった。

この後は気まずくなることも無く普段通り他愛もない話をし、キーファ様がお迎えに来るまで会話を楽しんだ。

結局この後、殿下はまた外出され一人部屋に籠る事になった。

お読みいただき、ありがとうございます。

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