71.帰る
帰り支度をし馬車に向かうと…
隠し部屋を出てすこし行くとジン様が立っていた。優しく微笑み
「仲直りは出来たようだね」
「色々ご心配おかけ致しまいた」
「なに。ミーナ嬢は歴代の乙女に比べ頭が良く優しい子だから苦にもならんよ」
ジン様はそう言い笑っている。隣にいる父様も同調し一緒に笑う。後で乙女の記録を読んだが、成人の儀の前に事実を知らされた乙女は発狂するか、絶望し憔悴するかのどちらかで教会も養父母も苦労したそうだ。
『じゃぁ私の家出なんて可愛いものなんだ』
そう思うと気が楽になった。そしてジン様が馬車の待機所まで付き添ってくれ、教会の廊下を歩いていた。蟠りが解け父様とジン様と会話が弾み楽しい。こんなに楽しいのは久しぶりの様な気がする。そして後少しで待機所という所で見習い神官さんが走って来てジン様に耳打ちする。そして溜息を吐いたジン様が私に
「殿方たちが貴女に会いたいそうだ。どうする?嫌なら馬車を裏に回させるが」
「治療後お待ちいただいたのに、ご挨拶無しでは失礼になるので…」
そう言うと父様が頭を撫で満足気にジン様に
「本当にウチの娘はいい子で私は幸せです」
「恥ずかしいからやめて!」
こうしてデレる父様と待機所まで来た。美丈夫4人が待ち構えていた。4人は私を見るなり破顔し駆け寄る。そしてルイス殿下が一番に私の手を取り、ご自分の両手で包まれ
「痛みますか? 貴女のおかげで私は生きていける。故に私の命は貴女のものだ」
いきなり怖い事を言うルイス殿下に苦笑いしていると、反対側の手をリアンド殿下に取られ
「今日はどちらにお帰りになられますか? ロダンダの屋敷にお帰りになられるなら、出発を急がないと今日中に帰れません」
「いや。ミーナ嬢には城でお過ごしいただく」
相変らずルイス殿下は強引だ。私の意思を聞かず事を進める。二人の殿下の後ろでディック様とハワード様が苦笑いをしてる。殿下達の手を振り払いディック様とハワード様の元へ行きご挨拶すると、2人は圧が無く自然に会話する事ができた。そしてハワード様が手を取り
「恐らく私がミーナ嬢との縁を望んでも貴女は私を選ばないでしょう。私は命の恩人の貴女を人生をかけ幸せにしたかった。しかし私では役不足なのだと痛感し、当主がお決めになった令嬢との縁組を受け、成人の儀の後に婚約する事にしました」
「そうなんですか。おめでとうございます」
お祝いを述べると何故か苦笑いをするハワード様。そしてハワード様は最初で最後だと言いハグを求めた。嫌では無かったのでハグをすると
「貴女の恩は一生忘れません。今後貴女が助けを求めた時は一番にはせ参じ力になると誓います」
「ハワード様…ありがとうございます。お幸せに」
そう言い腕を解いた。私はここに残るか分からないのに執着し待つより、愛してくれる女性と幸せになった方がいい。そう思いディック様に視線を向けると…
「私はまだ貴女を諦めていませんよ」
「へ?えっと…」
焦っていると横からルイス殿下が割った入り、エスコートをし王家馬車に誘導する。抗うが男性の力に敵うわけもなく慌てて
「殿下。私は今日はロダンダの屋敷に帰るつもりです」
「何故ですか!」
「一旦帰り屋敷の皆さんにお世話になったお礼を言いたいのです。それに荷物もまだ残っているし」
「…」
押し黙る殿下に駆け寄った父様が放してくれ、ジン様がリアンド殿下を呼びディーンが控える馬車まで誘導させた。そして馬車に乗せられあっという間に馬車は発車する。馬車内でルイス殿下を無下にして申し訳なく思いながら、目の前に座るリアンド殿下を見ていた。殿下は何も言わずただ微笑み見ている。まるで自発的に話すのを待っているかのようだ。
「えっと…父様と話しをして色々分かり、父とも仲直り?したので屋敷の皆さんにお礼を述べ、心の整理が出来たら家に帰ろうと思います」
「そうですが…侯爵からお聞きしたお話を伺っても⁈」
やはり長年研究してきた殿下は真実を知りたいようだ。今はまだ聞いたばかりで整理が出来ていないから、数日待って欲しいと告げると私の手を通り了承してくれた。
「お疲れでしょう。数日は静養され今後のことはゆっくりお決めになればいい」
「はい」
そう返事すると何故か殿下は隣に移動し、腕を伸ばし私の頭を殿下の肩に乗せ
「到着までお休みください」
「大丈夫ですよ」
すると顔を覗き込んで笑い
「かなりお疲れだ。無理しないで」
気が張っていたのか殿下の優しい声で一気に気が緩み、巨大な睡魔を呼び視点が合わなくなって来た。
「いい子だ…」
そしてこの後意識を手放した。
「う…ん」
目が覚め見上げるとそこにはディーンが微笑んで見ていた。どうやら馬車で寝てしまい屋敷に到着し、寝ていた私をディーンが運んでくれている。ふと廊下の窓の外を見ると外は真っ暗で長い時間寝ていたようた。
「今何時?」
「9時半を過ぎたところだ」
「もう大丈夫だから下ろして」
それに対してディーンは微笑むだけで下ろす気はない様で、そのままゆっくり廊下を歩く。そして部屋に着くとソファーに下ろし、待ち構えていたバーバラさんに会釈し退室していった。
「お嬢様。夕食はどうさないますか?」
「あまり空いてないからいいわ」
「治療されたのです。少しでもお召し上がり下さい。トムが美味しい葉物を収穫しお嬢様を待っていましたよ」
「うっ!」
トムが収穫した野菜を無駄に出来ず、部屋にサンドイッチを用意してもらい美味しくいただいた。そしてバーバラさんに湯浴みを促され湯に浸かり疲れをとる。
やっと就寝準備が出来た頃は日が変わる時間で、バーバラさんにベットに押し込まれ部屋の電気を消され、強制的に寝かされた。馬車でたくさん寝たから眠れないと思いきや、おやすみ5秒だった。
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