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7.舞踏会

ロダンダに関する本を買い家出に向け動き出したが…

屋敷に戻ると父様とヴォルフが待ち構えていた。先触れが出ていた様で教会での事は既に父様の耳に入っているだろう。


「ミーナ。着替えたら私の執務室に来なさい」

「…はい」


本当はまだ話す気分では無いが拒否できる雰囲気ではない。遅れて来たマーガレットさんに付き添われ部屋に戻る。相変わらずテンションの高い彼女と正反対にテンションが上がらない私。


「お嬢様。この本…隣国ロダンダの…」

「あぁ…それね。友達がロダンダに叔父さんがいるらしく話を聞いて興味が出たから知りたくて。病気が治ったら近い国だし旅行に行くのもいいかもね」

「さっさようでございます」


ロダンダと聞いて顔色を失くし、テンションが急降下するマーガレットさんに少し違和感を感じつつ着替えを進める。


「はぁ…」


父様の執務室前で気が重い私。扉を開ける勇気が無く、どのくらいこの扉の前にいるだろう。暫くすると執務室の扉が内側から開いた。


「うっ!お嬢様。びっくりしました。さぁ旦那様がお待ちです」

「はぃ・・・」


執務室に入ると父様はデスクで資料を読んでいた。ソファーに座ると直ぐにお茶と茶菓子が出ていた。大好きなグランクッキーと先日料理長と一緒に作ったブルンのジャムがある。本当なら大好きだから飛び付くが、今は気が重く食欲がなくそれどころか胃が痛い。

とりあえずお茶を一口飲むと父様は資料を引き出しになおし対面に座った。


「テッドから報告を受けている。無事治療は終わったようだね」

「はい」

「今日会ったリアム・マディス殿とは初対面ではない様だがどこで会ったのだ?」

「数日前に一人でナーシャの家に行く途中に、“歪みの森”の注意看板の前にいらっしゃり、注意喚起するためにお声をおかけしました。その時は名乗りはお受けしておらず、先ほど正式にご挨拶頂きました」

「…分かった」

「リーガル公爵家の遠縁と仰っていましたが、マディス家なんて聞いたことがありません。異国の方なのですか?」

「恐らくな…素性がはっきりしないお方とはあまり交流しない様に」

「はい」


父様はお茶を飲みながら私をじっと見ていて居心地が悪い。溜息を吐いた父様は


「来月に次の成人を迎える貴族を集めて舞踏会が行われる。陛下から全員参加が義務付けられ、ミーナお前も参加せねばならない」

「えっ!私は淑女教育良受けていないので無理」

「明日からヴォルフとマーガレット嬢から習う様に」

「でも病気があるから」

「大神官ジン様から許可を得ているので大丈夫だ」

「・・・」


今日は本当に嫌な事しか起きない。テンションは地の底まで落ちて、復活するには数日かかりそうだ。

今まで成人を迎えるにあたり舞踏会なんて催された事なんて聞いたことない。父様の説明によると次期王になられる王太子殿下のお相手選びの為らしい。不安になり父様に


「私…王太子妃とか無いよね。病気持ちだし社交界デビューして無いし」

「あぁ…ミーナが嫌がる相手に嫁がせる気はない」

「でも王家に反抗できないのでは?」

「心配しなくていい。お前は私が護るから」


真剣な父様の表情に私の事を考えてくれているのを感じられ涙が出て来た。父様は隣に座り抱きしめてくれる。


「悪態ついてごめんなさい」

「いい…だが知っていて欲しい。ミーナは私の子で愛しているよ」

「うん」


こうして一応?父様と仲直りし部屋に戻ると、直ぐにヴォルフとマーガレットさんが来た。


「お嬢様。今日から舞踏会に向けてダンスは僭越ながら私が。所作はマーガレットがレッスン致します。時間がございません。早速初めて参ります」

「え!今から⁈」


こうしてハードな“淑女教育”がすぐに始まった。


朝から晩までレッスン漬けでアンから家事を習う事も異国ロダンダについて調べる時間もない。アンは『だから家事なんて必要ないでしょ⁉︎』って顔をしている。

アンにはやりたいのに時間がないと言ったけど苦笑いを返された。


10日程経ち遊びに来ない私を心配してナーシャが様子を見に来た。


「ミーナどうしたの?窶れてるじゃん!」

「ナーシャ…」


今日は午後からダンスレッスンだが、疲弊している私の息抜きにお休みにしてくれた。

気を利かせた使用人達が私の大好きなスイーツをたくさん用意してくれ、部屋でナーシャと2人にしてくれた。


「全く来ないから病気かと思ったわよ」

「病気の方がよかったよ」

「窶れてるじゃん。何があったの?」

「実は…」


ナーシャに王太子のお相手探しの目的で、貴族全員参加の舞踏会が催される事になり、詰め込みで淑女教育を受けている事を話した。


「でもあんた病気があるのに」

「ジン様が許可したらしいの」

「…」


この後レッスンの愚痴を鼻息荒く、息をするのも忘れてナーシャに話す。

少し引き気味だが相槌を打ちながら聞いてくれるナーシャ。お茶を目の前に置いたナーシャは


「分かった。とりあえずお茶を飲んで落ち着きな」

「うん!」


すっかり冷めたお茶を一気飲みし、クッキーを口に掘り込む。糖分を摂取したら頭が回り思い出しナーシャに


「前にディーンに会ったけど、話し合った?」

「うん。ちゃんと話し合ったよ。ディーンは不器用ね。話し合えば分かるのに」


よかった…仲直りした様だ。それなら…一応部屋の中を確認してナーシャの隣に移動し小声で


「じゃーディーンについてロダンダに行く話は?」

「行くに決まってんじゃん!渡った先で職と住処が決まってるなら安心だし、ディーンも一緒だしね」

「やった!」


ナーシャに抱きつき歓声を上げる。ここ数日の疲れも一気に吹っ飛んだ。ナーシャは頭を撫でて労ってくれる。

この後ロダンダ移住計画を詳しく話してくれた。

表向きはナーシャはディーンと婚約し、ロダンダの叔父さんの元へ行く事にする。

結婚はロダンダに行きディーンの仕事が落ち着いてから。実際はロダンダに渡ったらお互い自由。相手はお好きにどうぞだ。


「ディーンは兄さんがいるから実家の心配は要らないけど、ナーシャあんたは?一人っ子でしょ!」

「それなら解決済み」

「?」


元は次男坊のディーンを婿養子に迎えナーシャの家を継ぐ予定だった。しかしディーンが叔父さんの処に行く事になり、話し合いになったそうだ。そこで二人は熱烈なカップルを演じて別れなくないと涙したそうだ。


「娘と孫がかわいい父さんとジィちゃんが折れてくれ、甥っ子のジムを養子にする事になったの」

「知らない間に着々と話が進んでるじゃん」

「後は成人の儀の後にどうやって上手く家を出るかね」

「船はディーンんが手配するって」


家出計画が順調なのを実感したら、目前の舞踏会も頑張れる気がして来た。


「会いに来てくれてありがとう。頑張れそうだよ」

「舞踏会までちょこちょこ会いに来るわ」

「よろしくお願いします!」


こうして夕暮れまでナーシャとガールズトークを楽しみ、騎士にナーシャを送ってもらい楽しい1日を終えた。



翌日からまたハードなレッスンが始まる。

初めに比べれば注意される事も減り、ヴォルフの足を踏む回数も減ってきた。

ダンスレッスンか終わると父様が湯浴みをして執務室に来るように言う。

疑問に思いながら素直に湯浴みをして父様の執務室に向かう。

入室許可を得て入るとトルソーにクリーム色のステキなドレスがあった。


「綺麗!」

「舞踏会で着るドレスだ」


私は同年代女性の中でも小柄で皆んなが着る様なボリュームのあるドレスは似合わない。このドレスはボリュームを抑え胸下から切替わりアイラインのドレス。シルク地の上にシフォンが重なり、装飾が少なくても貧相に見えない。シフォンには輝く小さい石がたくさん縫い込まれ、踊ると光を放ち美しい装飾が施されている。私の顔を覗き込んだ父様が


「気に入ったかぃ?」

「うん。最高だわ!」


舞踏会は嫌でしかないがドレスは嬉しい。マーガレットさんがトルソーからドレスを取り試着を促す。

部屋に戻り髪を結ってもらいドレスを着てみる。前月採寸したばかりでサイズはピッタリで着心地もいい。

着替え終わった頃に父様とヴォルフが来た。

扉の前で固まる二人。


「ドレス負けしてる?」


二人が黙るから不安になる。

『美人では無いがそこそこの出来上がりだと思うんだけど…』


「「綺麗だ…」」

「へ?」


予想外の発言に固まる。父様は柔らかく微笑み手を差し伸べ


「レディ…一曲お相手いただけますか⁈」

「喜んで!」


初めて父様と組みヴォルフの手拍子で踊り出す。


「ミーナ…顔を上げて踊りなさい」

「はい」


顔を上げたら父様と目が合った。優しい瞳に少し涙目の父様。やっぱり父様は大好きだ…


「早いものだ…あっという間に嫁ぎ、私の手から離れるのだなぁ…」

「…寂しい?」

「当たり前だ」

「なら嫁がない」


苦笑した父様は急に腰に当てた手を解き、手を取りターンした。急に一回転しびっくりした。


「王太子殿下がミーナを望んでも、嫌なら断りなさい」

「いいの⁈」

「お前には拒否する権利がある」

「?」


父様の真意を聞こうとしたらヴォルフの手拍子が終わりダンスが終了。父様は綺麗な礼をする。呆然と父様を見ていたらヴォルフが終わりの礼を促す。


「ダンスは上手くなったよ。舞踏会まで後数日だからこの調子で頑張りなさい」

「はい。父様はさっき…」

「それから舞踏会前日は治療がある。治療を終えたら屋敷には帰らずホテルを予約してある。舞踏会当日はホテルから王城に向かうからそのつもりで」

「えっあっはい」


父様はハグして額に口付け部屋を出て行った。ポカンとしている私にヴォルフが父様とのダンスのダメ出しを始め、そのままレッスンに突入となった。


『お前には拒否する権利がある』

父様の言葉が耳に残った。この後何度か真意を聞いだが、“時期ときが来たら話す”としか答えてくれない。


一抹の不安を感じながらも淑女教育を受け続けた。


先程最後のダンスレッスンを終えて今湯浴み中。

明日は朝から王都の教会に行き治療を受ける。明後日に舞踏会があり明日から数日は忙しい。治療の事を考えていたら、ふと何故かリアム様の顔が浮かんだ。彼も明日治療に来るのだろうか?もし会っても父様と一緒だから話すのは無理かなぁ…

舞踏会参加が決まってから父様は警戒レベルはMAXだ。やっと収まって来たがエスコートの申し込みの手紙が毎日大量に届いた。全て父様が断りの返事を送ってくれ、当日は父様がエスコートする事になった。

私は社交界デビューもして無い上に、貴族男性の知り合いもいないのに、面識の無い男性のエスコートはマジ勘弁だ。

番犬並みに警戒心の強い父様が、リアム様と話すなんて許してくれる訳がない。


ナーシャやディーン以外に出来た知り合いだから仲良くなりたいけど…


お読みいただき、ありがとうございます。

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