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68.征圧

父と再会し真実を聞くためにあの部屋へ…

「その愛くるしい顔をよく見せておくれ」

「見てもあまり変わってないよ」

「いや…すっかり大人の女性になったよ」


そう言い額に口付けをくれる父様。やっと再会が落ち着いたところでジン様が父様に


「ここより()()()()で話した方がいいんじゃないか?」

「そうですね」

『あの部屋?もしかしてリアンド殿下か言っていた隠し部屋!』


知らないフリをして2人のやり取りを聞いていたら私の手を取り立ち上がる父様。そしてジン様が治療室の扉を開け、父様が私をエスコートしてジン様の後を歩く。暫く歩くと教会奥の居住区に入り一際大きな扉が見えて来た。そしてその大きな扉をジン様が開けて振り返り


「儂は部屋におるから何かあればベルを鳴らしなさい」

「心遣いありがとうございます」


その部屋は隠し部屋では無くジン様の私室のようだ。ジン様の部屋を通り過ぎ暫く歩くと突き当たった所で父様は立ち止まり、首にかけてあったチェーンを引っ張り出すと、チェーンには鍵が付いていた。

その鍵を手に取った父様は壁の前に屈んで何かを探しているようだ。そして壁の下を押した。すると…


“カチッ!”


変な音がして壁の一部が外れそこに小さな穴が現れた。驚いた見ていたら父様はその穴に鍵を差して回し…


“ぎぃ…ぃ”


鈍い音がし壁の継ぎ目が動いた。状況が分からず口を開けて見ていたら、目の前に人が1人通れるくらいの穴が空いた。そして父様は私の手を取り壁の中は引き入れる。薄暗い部屋で父様はランプを手に取り灯を点すとやっと部屋の中が見えた。


なんの変哲もない書斎のような部屋で、壁一面に本棚があり、デスクには書類と本が山積みになっていた。父様は私をソファーに座らせ部屋の隅のカウンターに置いてあるアルコールランプを点け、ケルトを置きお湯を沸かしだした。侯爵である父様が自分でお茶を入れいるのに驚き見ていたら


「ここは私の隠し部屋で、この部屋の存在はジン様しか知らない。だから従僕や侍女はおらず、ここではなんでも自分でやるんだよ」


そう言いティーポットに茶葉を入れお茶を入れてくれた。カップから香るお茶は森の別邸でいつも飲んでいたお茶で、懐かしい香りに緊張が解けてきた。そして父様もソファーに座りやっと話せるようになり、足を組んだ父様は天井を仰ぎぽつりと


「まだ、探せていないんだ」

「何を?」

「愛する2人の娘を私達に元に止める術を」

「止める?」


父様の発言の意味が分からず固まってしまう。娘2人って?私とケイミ嬢のこと?

まだ固まる私に気づいた父様が咳払いをし、立ち上がり本棚から古い本を持って来た。その本は特急禁書だ。ロダンダの屋敷で読んだ事があるから箱をみて直ぐ分かった。その本はかなり古く父様が手袋を嵌めて私に隣に座るように言い、隣に座ると重厚な箱から本を取り出され題名が目に入る。


『ヤマト繁栄から消失までの歴史…』


ジン様から借りた本にも【ヤマト】と地名が書かれてあった。どうやら私のルーツは【ヤマト】にあるようだ。


そして本の初めのページにはヤマトが消失した経緯が書かれていた。

内容を要約すると…


この国は遥か昔は複数の民族が共存しており、現ボルディン王の祖先ボルディン家が大陸を統一しボルディン王国となった事。

そして大陸の中心には昔【ヤマト】という集落があり、黒い瞳と髪をした一族が生活をしていた。そのヤマトの人は他民族と異なる言葉を使い優れた技術や知識を待っていた。そのヤマトは集落で生活し他との接触をさけ、その地で静かに生活していた。

ヤマトはこの大陸の統一を目指したボルディン家によって滅ぼされ、それに貢献したバンディス家が後にヤマトの地をボルディン王より与えられバンディス領地となった。


「と言う事は私はヤマトの子孫になるの?」

「そうだよ。そして我が領地にある歪みの森がヤマトの集落があった場所だ」


このボルディンに無い色をした私は外国の血が入っているとは思っていたが、まさか滅んだヤマトがルーツだっとは…。想像の上をいってしまい言葉が出ない。すると父様はページを捲り視線を落とし


「この先(の話)は辛く悲し話になる。ミーナ…真実を知る勇気はあるかぃ?」

「うん。もう色々あり過ぎたから耐性?が付いたから大丈夫。何でも来いだよ」



そう答えると父様は微笑んで頭を撫でてくれた。そして話は進み…


ヤマトの集落は今は絶滅したヒーラという葉が尖った針葉樹に囲まれた地にあり、外からの侵入をゆるさない要塞の様になっていた。ヤマトは大陸の中心に有り大陸を統一するにはヤマトを治める必要があった。そして統一を目指すボルディン家はヤマトも治める為にヤマトとの接触を模索していた。

しかし言葉が通じず手をこまねいていたある日。ヤマト集落に隣接するバンディス家にボルディン当主のマルコが赴き、バンディス家当のリックと嫡男のジョルノが出迎えた。出迎えたジョルノと会った時マルコはある事に気付く。出迎えたジョルノが見た事もない織り方をしたタイを身に着けていたのだ。気になりながらもマルコはヤマトの交渉役をバンディス家当主に命じた。


隣接しヤマトの事はある程度知識が有ったリックは苦い顔をする。何故ならヤマトの人は賢いうえに、見た事も無い武具を持ち俊敏で騎士では歯が立たない。そんなヤマトを相手にせねばならないのだ。難題を押し付けられ青い顔をしたリックは、帰るマルコを見送る為にジョルノと玄関に向かった。そして挨拶をしていると、マルコは他意はなくジョルノにタイの事を聞いた。

すると明らかに狼狽えるジョルノに何かあると感じたマルコが詰め寄る。そして…


『何故今まで黙っていた!』

『言えば引き離されてしまう』


そうジョルノはヤマトの長の娘ハナと恋仲になり、ハナからヤマトで作られたタイを贈られていたのだ。それを知ったリックはジョルノにヤマトの情報をハナから聞き出し、長と会う場を設ける様に命じた。そして話を横で聞いていたマルコは渋るジョルノに


『ヤマトを滅ぼす事はしない。もし我がボルディンに属するならヤマトの地名を残し、その長の娘と其方が夫婦となり其方が治めればいい』


ハナを愛していたジョルノはハナと夫婦になれるならとマルコの命を受け、後日ハナと会いボルディン王国へ属する事を説得した。


「でもヤマトの人は他との接触を持たなかったって…」

「詳細は残されていないが、偶然が重なり2人は惹かれ合ったようだ。人を愛する事に障害はないのだよ」

「私にはまだ"愛"は分からないわ。それより続きを教えて」


そう言うと苦笑いをした父様はページを捲り、その後の話をしてくれる


ジョルノは何度もハナを説得しヤマトにボルディンが目指す王国に属する事を勧めた。それと同時にヤマトがボルディンに属したらハナに妻になって欲しいと求婚した。ハナはジョルノを愛していたが、それ以上にヤマトを大切に思っておりジョルノ申出を拒んだ。

ジョルノは一度でいいから長に合わせて欲しいと懇願したが、ハナはこれも突っぱねてジョルノとの別れを決断するほど意思は固かった。

結局ハナを失いたくないジョルノが折れ、父であるリックに説得役は出来ないと告げ家を出る覚悟を決めた。だがリックは怒るどころかあっさり認め、それ以上ジョルノにヤマトの話をしなかった。安心したジョルノは今まで通りハナと逢瀬を繰り返し仲を深めていった。


そしてある日の深夜。珍しく寝付けず何気なく部屋のカーテンを開けると西の空が赤く光っている。その方向はヤマトの集落がある方角。嫌な予感がしジョルノは急いで馬を出しハナの元へ急いだ。


「まさか…」

「…」


ジョルノがヤマトの集落に着くとボルディン家の騎士団と、父親とバンディス家の騎士が燃え上がるヤマトの森を見つめていた。


『父上!』

『ジョルノ何故ここに!』


父親に詰め寄るジョルノにボルディンの騎士が


『東の木々が少ない所の火が納まり、そこから中に入れます。突入しますが同行されますか?』

『わかった共に行こう』

『父上!説明して下さい』


そう言い父親に詰め寄るジョルノ。そして父の口からとんでもない話を聞き、その場に膝から崩れ落ちた。実はヤマトとの交渉に失敗したジョルノに、ボルディン家の間者が付きハナとの逢瀬を監視していたのだ。そして攻め込む機会をうかがっていた。これまでもボルディン家に反発する者達には武力行使で領地を広げて来たボルディン家。その事を知らなかったジョルノは警戒心を持っていなかったのだ。

そして数日前にハナから村の祭りのために村を出ていた男たちが戻り、集落に人が集まる事を聞いていた。それを知ったボルディン家がヤマトを征圧する為に、集落を囲む木々に火を着け逃げ場を奪い抵抗できない様にした。


「そんな酷い!」


あまりにも酷い仕打ちに頭に血が上り怒りが私を支配すると、父様が私を抱きしめ


「ヤマトはヒールの木に囲まれていたが、木を焼き払ってもヤマトの家屋に火が及ぶことがない事をボルディン側は知っていたんだ。火災に合い動揺したヤマトを征圧する予定だったんだ」

「っという事は…」

「ヤマトの人々に害は無かったのだが…」

「だが?」

「被害者は出なかったが、何故かヤマト人々は消えてしまったんだ」

「消えた⁈」


意味の分からない父様の言葉に固まる。父様は私の背を撫でながら話を続ける。


ヤマトの森は空が白み出す頃に火は沈下し、バンディス家当主リックと騎士達は集落へ踏み込む。ハナから聞いていた通りヒールの木々が全焼したが、集落の家屋には火は及んでいなかった。

静まり返った集落を不気味に感じ騎士達は息をのむ。家屋に忍び襲ってくるかもしれない恐怖に、騎士達は抜刀し全ての家屋の確認する。しかし人っ子一人居なかったのだ。


「いなかったて事は逃げれたの?」

「いや、火の勢いもだが集落を騎士が包囲しており、集落から出て来たヤマトの人はいなかったと、騎士は証言したんだ」

「じゃぁ!ヤマトの人達はどこに行ったの?」

「それは未だ解明されていない」


ヤマトの消失については分かったけど、まだ分からない事だらけだし、父様が先ほど言った《2人の娘を止める》の真意も不明だ。


頭の中で色々考え疲れてきた所で、父様が棚から焼き菓子が入った箱を取り目の前に置いてくれる。箱の中には私の好きなグランジャムをサンドしたクッキーが入っていた。


ここで一旦休憩をする事になり、大好きなクッキーを頬張り今日ロダンダの屋敷に帰るのは無理なのを感じていた。


『て言うかこの話は今日中に終わるの?』


また不安を感じつつ、とりあえず今は甘い物で自分を労ったのだった。



お読みいただき、ありがとうございます。

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