63.初?
近付く美しい殿下のお顔が…初キッスの予感か?
“コンコン”
「「!」」
「リアンド様。キーファにございます。急ぎの用向きにつき戻って参りました」
我に返り仰反ると眉を顰めた殿下が立ち上がり扉に向かう。
『今…私…』
自分の行動に驚いていると治療日からずっと王都にいたキーファ様が入室される。
「ミーナ嬢。ご機嫌麗しゅう。お元気そうで何よりでございます?」
そう言うと殿下一瞥し後頭部に手をやりバツが悪そうに
「私はタイミングを間違えたようですね。殿下睨まないで下さい。他意は無かったのですから」
「…」
険悪な雰囲気に慌てて
「キーファ様もお元気そうで何よりでございます。急ぎの用向きでは無いのですか?」
するとまだ機嫌の悪いリアンド殿下に
「殿下の影武者をルイス殿下が怪しみ、そろそろバレてしまいそうです。一度王都にお戻りいただきたい」
「分かった。詳しく話せ」
そう殿下は今王都にあるロダンダ貴族の屋敷に滞在になっていて、そこにはリアンド殿下の影武者が滞在し誤魔化している。私はリアンド殿下とキーファ様のやり取りをお茶を飲みながら聞いていた。
「出発は深夜だな」
「左様でございます」
すると殿下は私の前に跪き手を取り
「また暫く屋敷を空けます。騎士を増員させましてのでご安心ください」
「あっありがとうございます」
さっきの事を思い出して思いっきり挙動不審になる私。そんな私を見た殿下は笑いながら私の頬に手を置き
「本当に貴女は愛らしい。さっきの事は一瞬の気の迷いかもしれませんが、私は一歩貴女に近づけたと感じました。私は今幸せを感じています」
「えっと…困惑していてなんて言っていいか分からなくてですね」
しどろもどろの私に優しい眼差しのリアンド殿下は、王都に戻っている間に教会の行き”父様の隠し部屋”について調べてくれると話した。
「ありがとうございます。私も前向きに父様に会いに行く事を考えてみます」
「慌てなくていいんですよ。心のままで…」
そう言った殿下は頬に口付け耳元で
「次会う時にもう少し貴女に近づきたい…」
「!」
一気に頬が熱くなるのを感じ、顔を上げるとキーファ様が微笑んで見ている。
『恥ずかしい!』
こうしてリアンド殿下が王都に戻られる事になりご準備される為、私は執務室を後にし自室へ戻った。まだ顔が熱くてドキドキが止まらず、未知の感情に戸惑い部屋の中で意味も無くウロウロ歩き回っていた。
すると窓から門扉が目に入り馬車が停まっているのが見えた。気になり見ていると騎士さんの対応からは揉めている様子はない。
気になり暫く見ていると馬車は走り去り、騎士さんが荷物?を持って屋敷に歩いてくる。
『馬車で届け物?』
疑問に思っていたが今はそれどころでは無く、ソファーに寝転がり天井を見つめていた。
“コンコン”
「!」
うつらうつらしていてノック音に驚いて起き上がる。するとバルデスさんで許可を出すと、大きな箱を持って入って来た。
「エドガー様からお届け物にございます。割れ物の様でデーブルまでお運びしてよろしいでしょうか?」
「ありがとうございます。お願いします」
先程の馬車はエドガー様の従者だった。確かハワン列島に商談に行かれていて、1ヶ月程帰らないって言ってた。って事はハワン列島から送ってくれたの?
箱を開けるとそこには綺麗なグラスのセットが入っていた。
「うっわぁ!綺麗なグラス!」
箱には淡いグリーンのティーカップ?のセットが入っている。そのフォルムはどう見ても熱い紅茶を入れるティーカップだ。
「このグラスにお茶なんて入れたら割れちゃうじゃん!」
すると箱に手紙が入っている。それを手に取り開封すると
『今暖かいハワン列島に滞在し、新たな出会いに毎日刺激ある日々を過ごしております。
以前お伺いした時にお約束した変わった茶器を見つけましたのでお送りします。
ガラスですが耐熱で熱い茶を入れても割れる事はありません。ちゃんと試しておりますのでご安心下さい』
「へぇ〜こんな薄いガラスなのに割れないんだ」
新しい品に目と心が喜んでいる。ウキウキしながら手紙の続きを読むと
『今滞在するハワン列島は温暖な気候と陽気な人に囲まれ、ここに永住しようか悩むほどです。叶うなら隣に貴女がいて同じ景色を見たい』
口説き文句に苦笑いして手紙をしまい、グラスを眺めていた。するとルチアさんが部屋に来てリアンド殿下が呼んでいると伝えに来た。さっきの事があり答えに詰まると、ルチアさんがリアンド殿下が急遽出発されると言う。その言葉に慌てて殿下の元へ急ぐ。
玄関には簡素な従者の装いをしたリアンド殿下とキーファ様がバルデスさんと話していた。私に気付いた殿下が駆け寄りハグをする。まだ心がざわつく私は途端に顔が熱くなる。
「庭師が夜半に雨が降りそうだと言うので、出発を早め今から王都に向かいます」
「そうなんですね。お気をつけて」
殿下は次の治療の数日前にはまた戻ると言い、代わりにキーファ様が3日後に屋敷に戻って来てくれるそうだ。そして殿下は次の治療をどうするか考えておくように言い急いで出発された。
ぼんやり玄関で殿下が去った門扉を見ていたら庭師のトムさんが通りかかり声をかけてきた。
「お嬢様こんな時間に散歩ですか?」
「え?そうでは無いのですが…夜の散歩もいいかもしれませんね」
「でしたら」
そう言うとトムさんが面白い事を教えてくれた。生体はまだ解明されていなが、夜更けに雨が降る時に"ラプン"という虫が、羽を光らせ跳びまわるそうだ。
「この湿気を含んだ風と雲の流れから今夜は雨が降ります。だから恐らく"ラプン"も飛ぶでしょう」
「へぇ~"ほたる"みたいですね?」
愛想笑いをしトムさんが困った顔をしている。恐らく私が言った"ほたる"だ。勿論私も"ほたる"なんて言葉を知らないのに無意識に発したいた。恐らくこの知らない言葉は私の出生に起因しているのだろう。ばつが悪そうにトムさんは"ラプン"が多く飛ぶ裏庭を教えてくれ仕事に戻って行った。
夕食後に夜に散歩に行く事し早めに夕食をいただく事にした。夕食後にジョセフさんに付き添ってもらい裏庭に散歩に出た。すると…
「うっわぁ!キレイ」
薄暗い裏庭に光が飛び交い幻想的だ。興奮していたらジョセフさんに頭に1匹のラプンがとまりピカピカと光を放つ。普段は勇ましいジョセフさんが可愛らしく見えて笑ってしまった。
こうして少しの時間ラプンが放つ光に癒されいたら、遠くで稲光が見えた。
「お嬢様。そろそろお戻りを。恐らく間もなく雨が降り出します故」
「はい。お付き合いしていただいて、ありがとうございました」
こうして部屋に戻り少しすると雨が降り出し、更に風も吹いて嵐になってしまった。
窓から激しい雨を見ながら、今の自分の心みたいで苦笑いする。
こうしてまた屋敷に一人になり数日寂しく過ごし、3日後にキーファ様がある人と一緒に屋敷に戻って来られた。
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