62.父の手紙
放置していた父の手紙を読む気になり読みだすが…
「やっぱりか…」
父様の手紙を読み進めていると推測していた通り侯爵家は禁忌を犯していた。だがその事についてはこの手紙は書かれていない。そしてユーリの事もありザイラと私は姉弟とし離して育てたと書いてある。父様は私とリアンド殿下が調べユーリに必ずたどり着くと思っていたようだ。
『ユーリは乙女と5歳も離れていた為、贄となった妹の事も渡って来たアイーナの事も分かるため兄妹には出来なかったようだ。そして遠縁としたため2人の間に愛が生れてしまった。だからミーナとザイラは姉弟にしたのに、その血筋故かザイラはミーナと血が繋がっていないと知ると、ユーリの様にミーナに心を向ける様になってしまった』
この文から父様の苦労が見て取れる。ザイラが私に向ける愛情はやっぱり男女のものだったのだ。本当はザイラにユーリの話をして諦めさせれば解決するのだが、この話は侯爵家当主にしか継承されておらず、まだ全てをザイラには話せないそうだ。そして次の文を読んで身震いをした。
『バンディス家にはまだ秘密がある。これについてはステラも知らない。ミーナが望めは何時でも話そう。しかしかなり残酷な話で聞くには相応の覚悟がいるよ。心が定まったら森に帰っておいで。私はここでミーナを待っているよ』
「まだあるの?」
この文で一気にテンションが落ちてしまった。そして父様の手紙には王家に関する事とも書かれていた。どの文献にもこの血の病の始まりや原因は書かれていなかったが、どうやら国王とジン様そして侯爵家当主の父様は知っている。そしてその事実は私の出生に関わっているそうだ。手紙には
『この事実を知ればミーナの実のご両親も知り得る』
”実の親”この言葉に何とも言えない気持ちになる。実の親を知って私はどう感じるのだろ。渡って来たという事は、実の親はこの世界には居ない。つまり会う事も出来ないし話をする事も出来ないのだ。勿論自分の出生は知りたいけど複雑である。
「やっぱり逃げてないで全てを知らないと…」
そう思い父様の最後の便箋を読み出す。そこには母様の事が書いてあった。
『本来、母親の役目を担うステラがミーナを愛し育てる筈だった。ステラも渡って来たミーナを娘と思い愛し育てようとしたが、ミーナがステラを拒否し私にしか懐かず、私がミーナを養育する事になった。その直後にステラが次子となるザイラを身ごもり、ステラはザイラと一緒に本宅で過すようになった。ステラがミーナを遠ざけ冷たくしたのには訳があるのだ。勿論ザイラをユーリの様に乙女に心が向かない様にするためでもある。その為ミーナには冷たく酷い母親に感じただろう。しかし本来のステラはそんな悪い人では無いんだよ。そこは知っておいて欲しい。全てを知った時にステラの心がミーナにも届くはずだ』
「…」
母様を庇う父様の内容に嫌悪する。今は大人になり説明を受ければ理解できるかもしれない。しかし幼子には無理な話。私が懐かなかったからって、あんなに無下にするなんて理解できない。私はまだ子供を持った事はないけど、幼い子にあんなに冷たく出来ない。幼子が母に受け入れられずどれほど孤独だったか… 多分私は父様から真実を聞いたとしても、母様を受け入れるのは無理だと思う。
深夜の薄暗い部屋で父様の手紙を読み沸々と怒りが込み上げて来た。本当の両親から離され病人にされ苦痛を味わいそして隔離。そのうえ親の愛を受けれなかったのだ。私は聖女では無いから許せるわけ無い。気が着くと手を力一杯握りしめている自分の手が視界に入る。
『私こんなに怒れるくらい強く元気になったんだ』
そう”怒り”は体力がいる。少し前まで自暴自棄だった私が、このロダンダの屋敷の皆さんに癒されて前を向けた。ロダンダの皆さんに感謝しかない。
そう思っていたら誰かが部屋の扉を小さくノックした。びっくりして思わず立ち上がてしまった。返事をするとバーバラさんで許可をすると入室するなり顔を顰める。
『あ…これ絶対怒られる』
案の定深夜まで暖炉も入れていない肌寒い部屋でいた事を注意される。静かにしていたのによく分かったなぁっと思い聞いてみたら
「外を巡回中の騎士からお嬢様のお部屋から灯りが漏れていると報告を受けたのです。夜更かしするとまた調子が悪くなってしまいますよ。お早くお休み下さいませ」
「はぁ…い。ごめんなさい」
こうして手紙を直しバーバラさんにベッドに押し込まれた。灯りを落としたバーバラさんが退室し目を閉じるが手紙に興奮し寝付けず、結局外が明るくなった頃にやっと眠りについた。
「あ…やっちゃった」
目が覚めたらもうお昼になっていた。目の前にはルチアさんがいて、昼食をどうするか聞いてくる。
「あの…殿下は?」
「ミーナ様をお待ちになるとお仰り執務室にいらっしゃいます」
ビックリして時計を見るともうお昼の時間を過ぎている。殿下とご一緒する旨をルチアさんに伝え、直ぐに身支度をしダイニングルームへ向かう。
部屋に着くと殿下が迎えてくれ申し訳なくて平謝りし着席した。そして給仕がされ食事を始める。
今日も新鮮なお野菜と魚が並び思わず口元が緩む。食べながらリアンド殿下に父様の手紙を読んだと伝える。殿下は何も言わずに私の話を聞いてくれ、そしてザイラの話をしようとしたら殿下が手を制しウィンクをして
「この後執務室でお聞きしましょう」
「あ…はい」
確かに使用人のいる前で話す事ではない。残りのお茶を飲み干し殿下と執務室に移動し父様の手紙の内容を殿下に話す。すると殿下は驚く事を話す。
「まだ確証を得ていないので推測の域を出ませんが、バンディス侯爵は教会で何をずっと調べておられる」
「調べ物ですか?」
殿下の発言がピンとこない私に殿下は丁寧に話してくれる。
「ここの資料や本を大方読んだミーナ嬢なら分かると思いますが、数年前から行き詰まっております。そんな時にある光景を目にし調べているのです」
「何を見たんですか?」
すると組んでいた足を解き前屈みになった殿下は
「バンディス侯爵ですよ」
「へっ父様?」
そう言うと頷く殿下。唖然とする私を後目に殿下は話を続ける。
「数年前に治療の後、与えられた控室に行かず教会内をフラフラ探索していたらとんでも無い所からバンディス侯爵が出て来たのです」
「てんでもない所って?」
聞くとジン様の部屋前の廊下の突き当たりの壁が動き中から父様が出てきたそうだ。リアンド殿下はそんな所に隠し部屋があるのも驚いたが、その時間はいつも私が治療後の休息の時間で、父様はジン様と面会している事になっていた。
「その時に侯爵が隠れて探している事はあなたに関する事だと思い、それから治療後は侯爵を監視するようになりました。すると…」
なんと昨日殿下がジン様から預かって来た”教会所蔵-特急禁書”をテーブルに持って来て、これと同じ箱を、父様が隠し部屋に持って入ったところを目撃のだ。
「見間違いでは?」
「いや。この禁書と同じ箱だったので間違いない。ここに新たな情報が隠されていると思うんだ」
「やはり、私が自宅に戻り父様と話し合うべきなんですよね…」
そう言ったもののまだ心がざわつき踏ん切りがつかない。すると殿下は私の手を握り
「慌てる事はありません。まだ成人の儀まで2か月あるのです。貴女の心のままにすればいい。どんな時でも私は貴女の味方です」
「殿下…」
殿下のお心に胸の奥が温かくなって来た。殿下の温かい視線と手に癒されていると殿下が身を乗り出し、綺麗なお顔が近づくが…嫌じゃない自分がいる。
そして殿下が吐息が感じるほど近づくと…
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