60.情緒不安定
治療の後リアンド殿下はどこに行ってしまったのだろう⁈
無事残り3回目の治療を終えた夜。ダイニングルームで一人のんびり夕食を頂いている。今日は料理長が治療を終えた私の体調を気遣い、赤身のステーキと濃い緑の野菜サラダを出してくれた。バーバラさんに聞いたらどれも貧血予防になる食材らしい。確かに今回は4人分の採血をしたからか、いつもより少しふらつく感じがする。しっかり食事をし部屋に戻ろうとしたらバルデスさんがきて
「本日はお疲れ様でした。お早くお休みくださいませ。あとご報告がございます」
そう言うとバルデスさんは上着から手紙を取り出し渡してくれた。受取り差出人を見るとリアンド殿下からだった。
「リアンド殿下とキーファ様は明後日お戻りの予定にございます」
「えっ?そうなんですか?」
「恐らく詳細は殿下のお手紙に書かれていると思いますのでご確認下さいませ」
バルデスさんにお礼を言い部屋に戻った。そして早めに湯浴みをしてリアンド殿下の手紙を読む。冒頭に治療(採血)を受けてくれたお礼と、私の体を気遣う言葉が並びリアンド殿下の為人が分かる。
そして
『恐らく貴女がこの屋敷に滞在する事を不満に思うルイス殿下が、私に間者を付け貴女と共にしないか監視するでしょう。ですので数日王都と港町で過ごし監視の目を欺くので、数日は屋敷には戻りません。ですが安心して下さい。騎士を増員させ貴女をお護りいたします』
「だから治療後直ぐにここを出たんだ」
殿下の行動に納得し手紙の続きを読むと王都に訪れジン様と話をしてくると書かれていた。何の話をしにいくのか分からないけど、ここ数日は新たな情報は無く行き詰っていたので、何か新しい情報が得れる事を期待する。
リアンド殿下の手紙を直し未だ読んでいないジン様と父様の手紙と睨めっこしている。恐らく自分でいくら調べても核心までは辿り着けないのは分かっていて、あの二人から話を聞かないといけないのはよく分かっている。しかしまだここを出る勇気がない。何故なら王都に戻ったら陛下やルイス殿下に身柄を確保され軟禁されそうで怖いからだ。
前回の乙女の渡りで王子が乙女を軟禁した話を聞いてしまったが為に良くない想像をしてしまい怖いのだ。そしてルイス殿下に会ってからは、屋敷に来た当初の様に情緒不安定定になってしまっている。こうして不安なままベッドに潜り込みこの日は無理やり眠った。
そしてそんな精神状態で数日過ごしたある日。庭で花壇の水やりをしていたらバルデスさんが足早に来た。バルデスさんは眉尻を下げていて嫌な予感がする。すると
「今門前にバンディス家の馬車が到着し、弟君のザイラ様がお見えになりご面会をご希望されておいでです。如何なさいますか?」
「ザイラが来たんですか⁈」
可愛がっていた弟のザイラ。腹違いだが血のつながりがあると信じていたが全くの他人だった。今会っても前みたいな関係でいれる自信がない。それにザイラは私に姉ではない好意を向け始めている事も気付いている。中々返事が出来ずに立ち尽くしていたら
「弟君だからと言って無理にお会いする必要はございませんよ」
「ありがとう…先日の治療の後から私…情報不安定なんです。だから…」
そう言うとバルデスさんは私の手を両手で包みこんで
「心落ち着かれるまで他の者に心を配らなくていいのですよ」
「バルデスさん…」
バルデスさんはそう言うと断る為にザイラの元へ向かった。私は裏手の使用人入口から部屋に戻り窓のレースカーテン越しに門扉を見ていた。バルデスさんがザイラに説明をしているようだ。遠くてはっきりとザイラの表情を見る事は出来ないが、苛立っているのは雰囲気で分かる。
そして少しするとバルデスさんは屋敷に戻りザイラが帰ったと知らせてくれる。そしてザイラからの手紙を渡して来た。
「ザイラ様はお嬢様を心配しておいででした。姉想いの優しいお方でございますね」
「…」
バルデスさんの言葉にまた心がざわつき返事が出来ない。私の様子に気付いたバルデスさんは礼をし戻って行った。こうして未開封の手紙が3通になりその存在が更に私を苦しめる。
こうしてリアンド殿下がお戻りになるまで情緒不安定でまた引きこもる事になった。
そして治療(輸血)から7日後にリアンド殿下がやっと屋敷に戻って来た。
「ミーナ嬢…今戻りました。私は昼食が未だで宜しければお付き合いいただけませんか?」
殿下が扉の外から声をかける。少し考えて…
「私は頂いたので…お茶でしたら…」
「ありがとう。一人で食べると味気ないので嬉しい」
そう言った殿下はダイニングで待つと言い戻って行かれた。朝から気力が無く夜着のままだ。流石に王子にそれでは失礼に当たるので着替え髪を整えダイニングルームへ。
部屋の入ると殿下が待っていて、足早に来て手を取りご挨拶される。数日ぶりの殿下は少し痩せておいでで、恐らくルイス殿下の監視の目を欺くのにご苦労されたのだろう。そして殿下が椅子を引いてくれ着席すると給仕が始まる。殿下には昼食が出され私にはお茶とケーキが出た。殿下が気を使い他愛もない話をし食事が進む。そして食べ終わった殿下は
「ルイス殿下の監視がしつこくてね。撒くのに時間がかかったよ。それとジン様から新たな話を聞けたので早く貴女に知らせたくてね」
「新たな話?」
そう言うと殿下は優しい眼差しを向けて頷く。
「前の乙女が何故フィーリアに行こうとしたか分かったよ」
「本当ですか!」
私も疑問に思っていた事だ。フィーリアは同盟国だがロダンダに比べ行き来する事が少ない。なぜならフィーリアは遠く船で5日もかかるからだ。私と同じように森に籠っている乙女がフィーリアに関わる事は少ない。考え込んでいたら殿下が驚く事を話す。
「ジン殿の話では乙女には慕っている男性がいたそうだ。そしてその男と役目を終えたらフィーリアに移り住み将来を約束していた」
「えっ!!」
驚きの話に仰け反り椅子から落ちそうになる。慌てて座り直し殿下を見据えると微笑んだ殿下が
「少し元気になった様ですね。では話の続きは執務室でしましょう」
「はい。よろしくお願いします」
こうして執務室に移動し殿下から前の乙女の話を聞く事になった。新たな情報に滅入っていた気分が少し浮上していくのを感じていた。
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