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59.残り3回

治療(輸血)をする事に決め治療の日まで教会と王子の対策に忙しく…

「貴女は笑っている方がいい」

「助けていただいたのに連絡も無くすみません」


そう言い深々と頭を下げた。するとドルツ先生は私の手を取り優しくハグしてくれる。顔を上げると先生は目尻の皺を深め微笑んでいる。

そう。今日は治療の日でここロダンダの屋敷に王都からドルツ先生が治療に来てくれている。何故なら私が治療(輸血)は受けるが教会に行く事を拒否したから。そしてキーファ様がジン様に掛け合ってくれ、教会ではなくこの屋敷で治療を受ける事になった。そして治療(輸血)をする条件として医師はドルツ先生にお願いする事と、治療を受ける方々と接触しない事を条件にした。

ジン様は快諾して下さったが、王家(特にルイス殿下)が難色を示した。そして調整を繰り返し最後は治療を受ける4人とも接触しない条件を了承してくれた。

また採血は滞在している部屋で行い、輸血を受ける皆さんは屋敷の外に設営された仮設テントで受ける。

治療を受ける事を決めてから日がなく大変だったけど、屋敷の皆さんの協力で無事今日を迎える事ができた。後でみなさん感謝を伝えに行こうと思う。

そんな事を考えていたら助手さんがやって来て、テキパキと採血の準備を始める。そしてドルツ先生に


「急なお願いを受けて下さり感謝いたします」

「頼ってもらえて医者として嬉しいよ」


ドルツ先生はそう言い笑ってくれた。そして先生はカバンからジン様と父様から預かった手紙を取り出し渡してくれた。一瞬躊躇したが受取り握りしめる。そしてドルツ先生は私の手を取り椅子に座らせて採血前の診察をする。採血するにあたり問題はなくこの後採血をする準備に入り、バルデスさんが外のテントに採血が始まる事を知らせに退室した。そして助手さんが指先を消毒し…


「っつ!」

「大丈夫…ちゃんと採れてますよ。もう少しで終わりますから頑張りましょうね」


こうしてやっぱり痛かった採血は終わり、助手の女性が私の血が入った瓶を箱に入れて足早に退室した。この後外のテントで殿下達に輸血が行われる。今日はドルツ先生の他に医師が4名同行していて、殿下達の処置をされるそうだ。こうして私の役割は終わり指に包帯を巻いて一息つく。

そしてタイミングを計ったかのようにルチアさんがお茶とケーキを用意してくれ、ドルツ先生とお茶を頂く事になった。

先生は気を使い他愛もない世間話をし、時折面白い話をして笑わせてくれる。甘いケーキに満足し痛みを忘れかけていたら…


「あれ…外が騒がしい…」


外で男性の言い合う声が耳に届いた。無意識に立ち上がり門扉が見える窓に寄ると…


「あ…」


ルイス殿下がリアンド殿下に食って掛かっている。それをディック様とハワード様が止めている。そう兄弟喧嘩が勃発していた。何が原因なの?

遠い目をしてその様を窓から眺めていたら…不意にディック様が見上げ私と目が合った。そしてディック様が破顔し手を振った。その様子を見た他の2人も見上げて…


「「ミーナ嬢!!」」


ルイス殿下とハワード様がと手を振り私の名を呼んでいる。


『ここで隠れたら余計にややこしい⁈』


仕方無く小さく手を振ったらリアンド殿下とディック様が表情を曇らし、ルイス殿下とハワード様は嬉しそうに大きく手を振る。困ってしまいドルツ先生に助けを求めた。

すると苦笑いした先生は私の前に立ち、下の皆さんに頭を下げてカーテンを閉めてくれた。

下ではまだ言い合いが続いていて、困った顔をすると先生は私の手を取りソファーに座らせてくれた。そして


「よく頑張りましたね。後2回ありますが自分の心に素直になり受けるか決めて下さい。もしまた望むなら来月も私が来ますよ」

「ありがとうございます。私最後まで治療(採血)を受ける事にしたのです。だから来月もよろしくお願いします」

 

そう言うとドルツ先生は頭を撫でて微笑んだ。相変わらず痛くて嫌だけどやるべき事をすれば文句も言われないだろう。やっと一息付いてドルツ先生と助手さんと話をしていたらバルデスさんが部屋に来た。

困り顔のバルデスさんに嫌な予感しかしない。


「治療を終えられた皆様がお嬢様にお会いになりたいと、外でお待ちになっておいでです。いかがなさいますか」

「…」


正直会いたく無い。でも外で待たれていると思うと気が重い。だから


「バルデスさん。ご挨拶はお受けしますが、長々お話しするのはまだ無理です。それを了承いただけるのなら…」


そう言うとドルツ先生は立ち上がり


「私は王都に戻るので殿下達には私から話しておきましょう。そして必ず騎士をつけて下さい」

「色々ありがとうございました。また来月もよろしくお願いします」


こうしてドルツ先生はお帰りになり、私はエントランスのベンチで騎士さんの迎えを待っていた。そして外からジョセフさん来てくれて外に出るとルイス殿下とハワード様が馬車の前で待ち構えていた。


『あれ?リアンド殿下とディック様は?』


疑問に思っていたらジョセフさんがお2人はお帰りになったと教えてくれた。


『帰った?リアンド殿下はどこに?』


疑問に思っていたら目の前が急に暗くなり…


「何をするどけ!」

「ミーナ様はお受けするのは()()()()()でございます。それ以上は」

「一介の騎士が私に指図するか!」


どうやら距離詰めたルイス殿下の前にジョセフさんが割って入ってくれたようだ。屈強な騎士のジョセフさんの背中は大きく前が見えない。ルイス殿下は語義を強めジョセフさんに退くように命じるが、ここはボルディンだがロダンダ。ルイス殿下の権限は通用しない。するとハワード様が


「我々の気持ちが先走り失礼をいたしました。ですが、お顔を拝見して貴女を感じたいのです。ぜひお言葉をいただけませんか?」

「えっと…」


確かに”ごきげんよう…はぃさようなら”は流石に酷いかもしれない。ここは穏便に済ます為に…


「ジョセフさん。ありごとうございます。大丈夫です」


そう言うと振り返ったジョセフさんに頷き視線で大丈夫だと告げる。少し考えたジョセフさんは横にずれ控えてくれる。

するとルイス殿下とハワード様が一歩前に出たので、つられて私も一歩下がる。一瞬殿下の表情が曇り


「やっと貴女の瞳に私が映ることができた。私は今とても幸せを感じている。それに治療を…いや…我々の為に(採血を)受けてくださり感謝しております」

「…まだまだ気持ちの整理が付いていません。ですから今はそっとしていただきたいのです。皆さんの病を治す役目は最後まで完うします。そして治療が全て終わった暁には私を自由にしていただきたい」


そう言うとほっとした顔をしたハワード様に対し、眉間の皺を深め明らかに不満顔のルイス殿下。そして怒気を含んだ声で


「”自由”とはどう言う意味だ?」

「えっ?」


雰囲気をガラッと変えたルイス殿下に恐怖を感じ思わず隣に控えるジョセフさんの裾を掴んでしまう。

不穏な空気に息がし辛い。ジョセフさんを掴む手が震え出したのが自分で分かった。すると…急に目の前が茶色に染まり


「殿下。お戻りを」

「ティムどけ!」

「ミーナ様にお目にかかるのはご挨拶のみでございます。落ち着きミーナ様をご覧になって下さい。殿下の威圧に怯えておいでです。紳士の振る舞いをなさって下さい」

「つっ!」


なんとティム様が前に立っち殿下の視線から守って下さった。そして殿下は大きな溜息を一つ吐き


「済まなかった。また会いに来るのでお顔だけでいい見せてほしい」

「…」


返事をできずにいるとティム様が殿下の肩を抱いて馬車に戻り、あっさりと帰って行った。


なんとか無事治療(輸血)を終え残すところ治療(輸血)は後2回となった。

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