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58.禁忌

殿下のお休みの挨拶にときめいてしまったミーナ。夜も眠れずに…

「お嬢様。ご起床のお時間でございます」

「ゔぅ…むり…」


結局昨晩は寝付けず空が白み出した頃に寝ついた為に猛烈に眠い。目が開かない…

起こしに来たバーバラさんに謝り昼まで寝る事にした。そしてお昼前に自然に目が覚め身支度していたらバーバラさんが来てくれ手伝ってくれる。まだ頭が動いておらずソファーに座りフリーズ中。すると誰か来てバーバラさんが応対してくれた。来たのはキーファ様で殿下の使いだと言う。許可を出すと入室したキーファ様からご挨拶をいただく。


「殿下が宜しければ昼食を共にと申されておられます。いかがなさいますか?」


断る理由もなくお受けしキーファ様とダイニングルームへ向かう。朝食を抜いたせいでさっきからお腹が鳴りっぱなし。恥ずかしくて必死に喋りお腹の音を誤魔化す!でも…


『キーファ様は笑ってるからやっぱり聞こえているよね…』


苦笑いし誤魔化しながら廊下を歩いて行くと…


「あれ?」


ダイニングルームが見えてきたら扉の前でうろうろしているリアンド殿下が見えた。私に気付いた殿下は駆けて来てはにかみながら手を取り口付けた。


「お顔色がよく安心しました。昨晩無理をさせてしまったのでは無いかと心配しておりました」

「ご心配おかけしました。夜更かししてしまい朝起きれなくて…」


熱を持った視線を向けられ昨晩を思い出して焦ってしまう。


「殿下。いつまでレディーを扉の前でお待たせするおつもりですか?お早くお部屋へ」

「あっすまない。ではどうぞ」


キーファ様が声をかけて下さりやっとダイニングルームへ。部屋はいい匂いがして限界の私のお腹が空腹を主張しだす。ふと殿下とキーファ様を見ると微笑んでいる。絶対腹の虫の音がバレてる。隠して無駄なことに気付き諦めて顔が熱くなるのを感じながら席につき食事をいただく。やっとお腹が満たされて一息ついた時に殿下が


「ミーナ嬢がよろしければこの後に執務室で昨日の続きをしたいのですが…」

「はい。よろしくお願いします」


そう返事すると嬉しそうな殿下。この後また衝撃的な話を聞くなんてこの時は知らなかった。

そして食後はそのまま執務室は移動する。執務室に着くと早早速ジン様から聞いた”血の病"について話してくれる。大方文献に書いてある事が多く目新しい話は無かったが、一つ引っかかる点が…


「殿下質問があります」

「何でも聞いて下さい」

「文献では同時期に病を発症するのは1、2人であったと書いてありました。でも今回は4人と多い。それについてジン様から何か聞いていますか?」


あまり深く考えず殿下に質問したら殿下は眉間に皺を作り黙ってしまった。そんなに言いにくい事なんだろうか? 殿下が話してくれるのをお茶を飲みながら待つ。すると…


「恐らく…前回の乙女の渡で禁忌を犯したようです」


そう言うと難しい顔をした殿下が話し出す。

禁忌とは三代前のボルディン王の時に起きた。王が王太子の時にロダンダから王女を妃に迎え2年後に王子を儲けた。だがその王子は生まれながらに"血の病"に罹っており、1歳を迎える前に乙女を呼ぶ為に儀式を行う。そしてその願いは神に届き"漆黒の乙女"が渡って来た。後は私と同じで乙女は成人するまで王子に血を分け与え、王子は病を克服し無事成人を迎え乙女に求婚した。しかし…


「えっ!断ったんですか⁈」

「そうなんだよ。それまで必ず乙女と王子は婚姻していて(断るのは)初めての事だった」


その時渡って来た乙女はアイーナ嬢と言い、王子の妃を拒みボルディンではなくフィーリア永住を望んだ。しかし乙女に執着した王子は乙女を軟禁し強引に既成事実を作り乙女を手に入れた。その時に乙女は身籠り王子から逃げる事が出来なくなってしまった。


「酷い…」


すると険しい顔をしたリアンド殿下は


「貴女も危うかったとディーンから聞いているよ」

「スミマセン ソウデシタ…」


私もルイス殿下の誘惑に乗ってしまうところでした。ボルディン王家の血筋は執着心の強い人が多いのだろうか? って事はリアンド殿下も⁈

思わず仰け反るとリアンド殿下は悲しそうな顔をして


「私もその血が継いでいるんだ。そう思うと複雑だ」

「いや、でもリアンド殿下はロダンダで育ったから…えっと…だっ大丈夫?ですよ!多分?」


慌ててフォローすると苦笑いする殿下。そして溜息を一つ吐き殿下は話の続きをする。

そして諦めた乙女アイーナは泣く泣く妃となり子を生んだが、その子も"血の病"を持って生まれた。


「えっ!文献では二代続けて出た事はないと書かれていたし、乙女が産んだ子が罹った記録は…」

「その代の事は記録に残されておらず、ジン殿と王と王子しか知らない。まさか王子が乙女を辱めたとは言えないからね」

「それが禁忌…」

「悲劇は未だあるんだ」


話には未だ続きがありアイーナが産んだ王子の為に直ぐに儀式が行われた。しかし…


「儀式は失敗し何度行っても乙女は現れなかった」

「…」


そして王子は3歳を迎える事なく短い生涯を閉じた。そして王位は王弟の子が継ぐ事になる。

悲しい話に胸が苦しい。言葉が出す黙っていたら殿下が


「まだあるんだよ」

「へ?」


そう悲劇は未だ続いていた。ボルディン王家は代が変わり王子が成人を迎え妃を娶る頃には、もう"血の病"は出ないだろうと思われていた。何故なら過去の記録でも続けて出た事はなく、三代も続く事ないと考えられた。

そして程なくして妃が子を授かったが王家は不安に包まれる。何故かと言うとバンディス侯爵家当主の妻も同時期に妊娠し出産予定日が同月だった。


昔から"血の病"のを受ける男系男子が生まれる時、必ずバンディス侯爵家にも女児が生まれる。そして不安を抱えたまま妃は王子を出産した。そして10日後にバンディス侯爵家の夫人も出産し…


「生まれた子は男児だった」

「なら大丈夫じゃないですか⁉︎」


そう言うと殿下は首を振った。結果から言えば王子は発病した。しかも発病は遅く10歳を迎えてからだった。

王家は儀式を望んだが贄になる女児はいない上に侯爵家が儀式を拒んだ。なぜならその男児は家を継ぐ事になり贄にできないからだ。

こうして儀式は行われず、病弱な王子は度々重病に罹りながらも成人を迎えた。そして直ぐ妃を迎え子を儲け、22歳という若さで亡くなってしまった。


『まるで呪いを受けたかのようだわ。乙女アイーナの呪いだろうか…』


複雑な気持ちでいたら殿下が咳払いをして怖い事を言い出す。


「確証は無いのだが、調べたところバンディス侯爵家も禁忌を犯している可能性がある。そうでなければ三代に渡り病が続くのは異常な事。また病の子が誕生するのにバンディス家に女児が生れないのは歴史上無かった事だ。バンディス家が禁忌を犯したとしか思えない。しかし王子の権限を使っても分からないのだ」

「うちが...」


物騒な話に思わず身震いすると殿下は隣に移動して来て抱きしめてくれた。殿下の温もりに癒されていたらふと父様の言葉が頭をよぎる。


『成人したら全て話そう』


やはりジン様と父様と向き合わなければならない。頭では分かっているけど…まだ…無理…かも。


俯くと殿下は背を撫で慰めてくれる。殿下の温かく大きな手に少し落ち着いて来た。


「無理しないで下さい。私は真実を知りたいが貴女が涙するのは見たくないのです」

「ごめんなさい。やっぱりまだ無理みたい…」

「急がなくていい。私は貴女の味方ですから」


また分からない事が増えてしまった。でも一つ収穫がありボルディン王家とうち(バンディス家)が禁忌を犯し神の怒りを買った事は分かったが、一向に全容が見えて来ない。このままだと私はずっと"血の病"に囚われ続け自分の道を歩くことが出来ない。

楽しい事も辛い事も経験したい。それと恋をして失恋もしたい。そして愛する人と家庭を持ち母親になりたい。その為には…


「殿下!」

「あっはい」


奮起し声量ボリュームを間違え殿下を驚かせてしまった。でもそんな事気にしている間は無く決意を殿下に聞いてもらいたい。 すると殿下はそっと腕を解き真っ直見つめて真剣に私の話を聞いてくれる。


「私。最後まで治療(輸血)をします。そしてちゃんと全て知った上で自分の道を決めます。だから協力をして欲しいのです」


目を見開き驚いた表情をする殿下。部屋隅で見守るキーファ様は心なしか涙目だ。こうして3日後に迫った治療を受ける事を決め、この後に殿下とキーファ様と治療の日の相談をする事になった。

何故なら治療は受けるが私は()()()()行きたくない。心が定まるまでここを出たくないのだ。

私が治療を受ける事になりキーファ様は喜んでいるが殿下は困惑している。そんな殿下に聞きたかった事を言ってみた。


「殿下達は私の血をどうやって受けているのですか?」

「手の甲が足首をナイフで少し切り、傷口から貴女の血をうけるんだよ」

「うわぁ!私より痛そうだ。ごめんなさい…痛いのは私だけだと思い被害者面(悲劇のヒロイン)してました」

「いや貴女は被害者だよ。それに(治療の)痛みは自分を癒してくれるものだから耐えれるさ」

「でも幼い頃に嫌で逃げたんでしょ?」

「あっあれは私はまだ子供で…」

「あの時私は予定外の治療で拗ねて数日部屋に閉じこもったんですよ」


意地悪をしてそう言うと眉尻を下げて謝罪する殿下。ちょっとやり過ぎたと焦り笑って謝罪を受けた。この後お茶休憩を挟みその後は忙しくなる。リアンド殿下は恐らく治療日当日は教会とルイス殿下が迎えに来るだろうと話す。その前に教会には行かない事と伝えておかないと…


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