47.独り
プチ家出に成功し生まれて初めて1人になり…
「お目覚めでございますか?」
「おはようバーバラさん」
キーファ様のご厚意でロダンダの屋敷でお世話になり生まれ初めて1人で朝を迎えた。身なりを整えて窓の外を見ると海が見え、海面が朝日に照らされキラキラして綺麗だ。
『昨晩は夜で見えなかったけど、こんなに海が近いんだ…』
窓を開け放ち深呼吸し潮風をいっぱい吸い込むと何故か懐かしく感じる。暫くぼんやり海を見ていたらバルデスさんが来て
「朝食の準備ができてございます」
「ありがとうございます。あっこれを王都の教会本部の大神官のジン様と、こっちはバンディス侯爵に届けてくれませんか」
「畏まりました」
そう昨晩寝る前にジン様と父様に手紙を書いてあったのだ。この屋敷に着いてからキーファ様に教会を出てから起こっていた事を聞いていた。キーファ様は人伝に私が無事に安全な場所で保護されてるとジン様と父様に伝えてくれている。
『でもどうやって?』
『ロダンダとボルディンは友好国でボルディンに移住しているロダンダ人は多い。その者達に協力してもらいました』
『でも直ぐにここが分かってしまうのでは?』
『沢山の者を介しているので、恐らく居場所を突き止めれるのは早くて明日の朝でしょう。ですから安心して今晩はお休み下さい』
2人に無事を知らせてあるけど、やはり自筆で知らせて方がいいだろうと思い、昨晩寝る前に用意してあったのだ。
手紙をバルデスさんに預けダイニングで朝食をいただく。海が近いからか魚介類が多く朝から豪華だ。食事を終えるとバーバラさんが騎士を連れて来た。敷地内が治外法権とは言え念の為に護衛が付くそうだ。
「ミーナ様。護衛のエミリオでございます。屋敷の外に出られる時は必ずお側にお付け下さい」
「あ…はい。エミリオさんよろしくお願いします」
そう言うと彼は胸に手を当てて騎士の礼をしてくれる。この後屋敷を見て回りたくてエミリオさんに案内をお願いした。屋敷の外はとても広く花壇も手入れがされとても綺麗だ。そして昨晩は暗くて気づかなかったが、敷地は頑丈な柵や門扉に囲まれ外部からの侵入は難しそうだ。それに門には騎士の詰所があり騎士が常駐している。
『これだけガードしてあったら安心して過ごせそうだ』
そう思いながら敷地内を見て回っていた。すると地響きがして無数の馬の蹄の音が遠くからして来た。
「ミーナ様。屋敷内にお戻りを」
「はっはい!」
エミリオさんの緊迫した声に慌てて走ろうとしたら
「失礼」
「うっわぁ!」
エミリオさんは私を抱き上げそのまま駆け出した。屋敷玄関には他の騎士とバルデスさんが険しい顔して待っていた。玄関に着いたらエミリオさんは私を下ろし、待っていたバーバラさんと共に部屋に急いで戻る。
「エミリオさん何が…」
「恐らくボルディンの騎士団だと思われます」
「!」
私の居場所が分かり迎えが来た様だ。でもまだ帰りたく無い。不安になり足が止まってしまうと
「ロダンダは貴女の味方です。貴女がここにいる事を望むのなら、我々がお守り致します」
「エミリオさん…」
そして私の手を握ったバーバラさんが
「キーファ様からお聞きだと思いますが、ここはボルディンや他国の者は手を出せません。ご安心下さい」
「バーバラさん…皆さんありがとう」
お2人の優しい眼差しに安心し急いで部屋に向かう。部屋の外にはエミリオさんが居てくれ、部屋の中はバーバラさんが一緒に居てくれる。バーバラさんの入れてくれたお茶を一口飲んだら、外から男性の怒鳴り声が聞こえて来た。
『こっ怖い…でも誰が来たのか気になる』
この部屋は角部屋で海が見える窓と反対側の窓は門扉が見える位置にある。閉められたカーテンの隙間から覗き込むと…
『やっぱり王宮の騎士団だ…それに』
そう王宮の騎士団とルイス王太子殿下が凄い剣幕でこの屋敷の騎士と睨み合いになっている。何を話しているのかは聞き取れないが、恐らく私を出せって感じだろう。
キーファ様や屋敷の皆さんがどんな者が来ても護ると言ってくれたけど、本当にロダンダの騎士は王太子殿下相手に怯まず対峙し一歩も引かない。そんな皆さんの想いが嬉しくて胸が熱くなり泣きそうになる。するとバーバラさんが私の背に手を添え
「我がロダンダの騎士は不撓不屈の猛者ばかりです。ご安心下さい」
「ありがとうございます。皆さんを信じています」
そしてバーバラさんに促されソファーに座ると温かいお茶をいただき大人しくしている。暫く様子を窺っていいると怒鳴り声は止んだ。
諦めて帰ったのかと思ったら部屋に誰か来た。バーバラさんが応対するとバルデスさんで困った顔をされている。何かあったのか聞くと
「ルイス王太子殿下がお見えになっております。流石に敷地内に入る事はなさらないのですが、ミーナ様本人のご意志を直接確認したいと仰り、うちの騎士団だと睨み合いになっております。このままだと殿下は門扉の前に野営をする勢いで困っております」
「あ…」
ルイス王太子ならやり兼ねないかも…このままずっと待っていられたら私の心が整わない。ならさっと会い帰ってもらう?
『でも説得されそうだ。今弱っている私が殿下に抗える訳ない…』
困って黙り込んでいたらバーバラさんが
「ミーナ様のご意志を確認するのは殿下でなくてもよいのでは?ミーナ様と面識がお有りの方ならば、ミーナ様のご負担も少ないかと」
「それ!ありがとございます。バーバラさんの案いただきます」
そしてバルデスさんに誰が来ているのか聞いた所、殿下の側近のティム様が同行している事が分かった。そしてバルデスさんにティム様になら会ってもいいとボルディン側に伝えて貰う。
そして暫く部屋で待っていたら、侍女のルチアさんが来て応接室にティム様を案内したと知らせてくれる。こうしてエミリオさんとルチアさんと応接室に向かった。
応接室の前にはバルデスさんが待っていて状況を教えてくれる。ボルディン側はティムさんと護衛に騎士が2名同行している事と、私の返事と身の安全を確認したらすぐに帰る事が約束されているそうだ。あと一つ
「先方はミーナ様がロダンダに騙されているかもしれないと言い、ティム様とミーナ様2人での面会を望まれております」
「騎士さんの同席も無いって事ですか?」
「はい。いかがいたしましょうか?」
ティム様とは面識がある。温厚なお方で無体な事はされないだろうし、外に騎士さんが居てくれるなら大丈夫だろう。早く平穏な生活に戻りたくて先方の申し出を受けた。
こうして一人で応接室に入ると顔色の悪いティム様がいらした。
私の顔を見るなり安堵の表情を浮かべ、目の前に来て私の手を取り跪いて
「ご無事で安心しました。皆心配しております。何か事情があるのは分かっておりますが、まずは貴女の無事を実感したい」
そう言い私の手の甲に口付けソファーに誘導してくれる。そしてティム様は
「今回の事はミーナ様のご意志で、ロダンダに強要された訳では無いのですね」
「はい。ロダンダの皆さんは私が一人になりたいという願いを知り、協力して下さいました。必ず帰りますので、暫くそっとして欲しいのです」
「分かりました。私が責任をもって殿下を説得しますのでご安心を」
「へ?」
想像していなかった返答に驚き固まってしまった。
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