46.検問
ドルツ医師の手助けで教会を脱出したミーナ。このまま無事にロダンダの屋敷のたどり着けるのか?
「!」
馬が嘶き馬車が停まった。あの薬局を出てからそんなに経っていない。
『もしかして…もぅ追手が⁉︎』
不安になり扉から離れて身構えていると扉が開き…
「ここで乗り換えになります。降りて下さい」
「えっ?乗り換え?」
どうやら追手ではなくてホッとし従者の手を借り馬車を降りると、そこは倉庫の様な何もない場所だった。そして乗っていた馬車の向かいに荷馬車が止まっている。そして従者の男性と平民の女性が話をしている。そして女性が私を見据えて
「今からこの荷馬車に移っていただきます。お嬢様の身を隠すために少々窮屈でしょうが、我慢いただかなければなりません」
「窮屈?大丈夫です!文句は言いません。よろしくお願いします」
そう返事すると従者も女性も驚いた表情をしている。そして…言われた通り少々?窮屈な姿勢ではあるが荷馬車に乗り出発する。私が乗って来た馬車には先程の女性が乗り、私と反対の方向へ走って行った。
『恐らく彼女は私の身代わりをしてくれたんだ。なんか大罪を犯した逃亡犯みたいだわ…』
身代わりになってくれた彼女に心の中でお礼に言い、乗り心地の悪い荷馬車に揺られ目的地を目指す。どのくらい走っただろう…。足が疲れて来たし息苦しい…でも我慢だ。
順調に進んでいたのに急に荷馬車が停車した。恐らくまだ王都内で(ロダンダの)屋敷に着くには早すぎる。一瞬追手なのかもと身構えていたら、語義を強めた男性の声がして来た。
「王城からの命で王都を出る全ての人や物の確認をしている。運んでいるのは荷だけか?」
「左様でございます。積荷は他国から仕入れた絨毯でございます」
「検める」
そう言い偉そうな男性が荷台に登ってきた。隠れている私は息を潜める。
『大丈夫!前に沢山あるから!』そう言い聞かせじっとする。
「本当に絨毯ばかりだな!こんな汚い絨毯しかない荷馬車に、ご令嬢が隠れる場所など無いだろう。いいぞ!通って」
「はい。ありがとうございます」
従者はそう言い再度馬車を走らせた。王城からの命という事は陛下が?いやルイス王太子かもしれない。そう思うと思わず身震いしてしまう。こうして検問?を無事通過し、暫く走ると荷馬車はまた止まった。そして従者の男性が
「お嬢さん少し待って下さいね。手前の絨毯を移動させるので…」
「お手数をおかけします」
そう私は荷馬車に積まれた絨毯に身を隠していたのだ。絨毯は立て積まれ、倒れないようにロープで固定されている。その絨毯の把の一番奥の絨毯に包まれていたのだ。
正直立てて積まれているために、長い時間立ちっぱなしで足が痺れている。それに苦しくは無いが絨毯に巻かれて視界が無いうえに、積まれた他の絨毯に圧迫されている。従者は順番に絨毯をどけ、やっと私が隠れている絨毯に辿りついた。そして…
「大丈夫でしたか?ここからは別の馬車で屋敷に向かいます。もう楽になさって下さい」
「色々ありがとうございます」
こうして絨毯から解放され荷馬車を降りると目の前に立派な馬車が停まっている。聞かなくても分かるロダンダの馬車だ。扉にロダンダの国章が施してある。
そして馬車の前には4人の騎士様が待っていた。装いからロダンダの騎士だと分かる。その中で1番年長者らしき騎士様がエスコートしてくれ馬車に乗り込んだ。やっぱり馬車は乗り心地はよく、走り出すと疲れて直ぐに睡魔に負けてしまった。
「お嬢様。到着いたしました」
「へ?」
気が付くと馬車は停まっていて先ほどの騎士様が扉から声をかけている。どうやらロダンダの屋敷に無事に着いたようだ。ほっとして体から力が抜けていく。
生れたての仔馬の様の脚がガクガクして真っ直ぐ立てない。すると騎士様が
「失礼」
そう言い抱き上げてくれた。お礼を言うと微笑んでくれる。こうして騎士様に運んでもらい屋敷の中に。屋敷は森の別宅より少し大きく立派だ。玄関を入ると執事らしき初老の男性と侍女らしい中年の女性が3名出迎えてくれた。
「キーファ様から伺っております。ご自宅だと思いお寛ぎ下さいませ」
「お世話になります。えっと…取りあえず休みたいのですが」
「ではお部屋へご案内致します。騎士殿お疲れのお嬢様をお部屋までお願いできますか?」
「畏まりました」
執事さんと侍女さんが先導し騎士様がそのまま運んでくれる。皆さん優しいそうで少し安心する。
部屋に着くとソファーに私を下ろし騎士さんは退室された。
「自己紹介が遅れましたな。こちらの館を任されております管理人のバルデスと申します。そしてこの者がお嬢様のお世話をさせていただきます侍女のバーバラでございます。バーバラご挨拶を」
「バーバラでございます。こんな可愛いお嬢様にお仕えさせていただけ光栄でございます。祖母だと思い何でも申しつけ下さいませ」
2人共別宅の使用人の様に気さくで安心する。そしてバーバラさんが
「何があったかは存じませんが、まずは湯浴みなさった方がよさそうですね。準備いたしますのでお待ちくださいませ」
絨毯に巻き巻きされて埃まみえの自分に苦笑いしていると、バルデスさんがお茶と茶菓子を用意してくれた。甘いお茶とお菓子で少し緊張が解けて来た。2人が退室し一人になり、改めて家出したんだと実感する。足のぶるぶるも収まり窓へ行き外を眺める。窓からは海が見え夕陽が水平線に沈み空には星が瞬きだした。
『はぁ…本当なら今頃は別宅に戻り父様と夕食を…』
父様を思い出すと胸が痛い。何も言わずに逃げて来てしまった。あれだけ突然居なくならないでと言われたのになぁ…
でもあのままあそこに居たら、父様に酷い事を言っていただろう。
「流石に無事である事と、暫く1人にして欲しい事は伝えないとなぁ…」
そんな事を考えながら窓の外を見ていたら馬車が到着した。暗くてよく見えないが…
「キーファ様?」
慌てて窓を開けると手を振るキーファ様。直ぐに部屋を飛び出しエントランスへ向かう。階段につき下を見ると、キーファ様とバルデスさんが話をしている。あれからの事を色々聞きたくて階段を駆け降りる。そして私に気付いたキーファ様は微笑み向けてくれる。
「無事到着し安心しました」
「色々ご配慮いただきありがとうございます。あの後どうなりましたか?」
「もう大変でしたよ。王都はパニック。いゃーミーナ嬢にも見ていただきたかったですよ」
そんな大変な事になってるのに笑っているキーファ様。いい人かと思っていたけど、案外腹黒なのかもしれない。
「色々話して差し上げたいのですが、リアンド殿下に馬車でお待ちいただいているのと、出航の時間がありますので手短に話を…」
そう言いキーファ様は必要事項だけ伝えて港へ向かわれる。
お見送りしようと外に出ると馬車の窓のカーテンが少し開いている。多分あそこに殿下がいらっしゃるんだ。
でも…お会いし話すメンタルは今はない。一歩下がるとキーファ様が
「あの馬車には寂しい男が乗っています。後ろ手でいいので振っていただけるとその男は救われるでしょう」
「…」
少し悩んで振り返り馬車に背を向けて小さく手を振った。
それを見たキーファ様が私の手を取り感謝を述べられてから馬車に乗り込み港へ向けて出発した。
暗闇に消えていく馬車を見送り。寂しさが込み上げて来た。
「これで良かったのかなぁ…」
何度も自分に問いかけ、家出1日目を終えた。
お読みいただき、ありがとうございます。
続きが気になりましたら、ブックマーク登録&評価をよろしくお願いします。
『いいねで応援』もポチしてもらえると嬉しいです。
Twitter始めました。#神月いろは です。主にアップ情報だけですがよければ覗いて下さい。




