43.愚痴
お見合いを強制され超不機嫌な弟を宥める事になり…
「もうお茶会には行きません」
普段菓子類は食べないザイラがチョコを凄い勢いで食べている。かなりストレスを溜めているようだ。とりあえずザイラが落ち着くまで愚痴を聞き頷き続ける。
今日のお相手はマーデラス公爵家のルキア嬢。噂どおり凄い美人でスタイル抜群だったそうだ。彼女とザイラはアカデミーの同級生で1級の時に同じクラスだが接点は無かったらしい。久しぶりに会った彼女は豪華なドレスを纏い美しかったと話す。
「そんな美人さんならザイラにぴったりじゃない」
「色を売る女性の様に肌の露出が多い女性は嫌です」
「でも殿方は凹凸がはっきりした女性が好ましいと聞いたわ」
「私を他の男と同じにしないでほいし。いくら姉上でも怒りますよ」
「あ…ごめんなさい」
誰にでも優しいザイラがここまで嫌がるなんて、お相手の令嬢はどんな女性なんだろう?
少し冷静になったザイラに聞くと気位が高く自分に自信のある令嬢で、終始お見合いの主導権をとり自分の夫になる殿方は王国一の幸せな殿方だと言い切ったそうだ。かなりキツイ性格のようで私は絶対仲良くなれないタイプだ。
この国は身分重視で高位貴族程プライドの高い人が多い。だから母様が望むお家の令嬢はそんな感じの女性が多い。
やはり貴族令嬢とは友達になれそうにないと思っていたら、ザイラが驚く事を言った。
身分重視の母様もこの縁は拒絶し憤慨しているそうだ。ザイラから話を聞くと、公爵夫人もかなりの曲者で初めから母様とザイラを下に見て高圧的な態度だったようだ。公爵夫人は(ザイラの)姉が“漆黒の乙女”で王太子から求婚を受けている事と、歪みの森の管理する一族で王国でも信頼されている家柄だから顔合わせを受けたといい、他の侯爵家なら断っていたと言い切った。そして公爵夫人はウチと身分が釣り合わない事を強調し母様に
「これだけ歴史も王家からの信頼が厚い侯爵家はなぜ陞爵されないのでしょね⁈まぁウチと縁を持てばザイラ様の代で公爵は確実でしょうね」
と言い自分の地位を誇示したそうだ。母様はプライドを傷つけられ父様を尊敬しているザイラは憤り、帰宅後直ぐに断りの文を出したそうだ。
冷静に話しているザイラだが怒りは相当な様で、幻覚?ザイラの頭上に湯気が見えた気がした。
この後もずっと二度と顔合わせはしないと言うザイラ。彼には今何を言っても耳に入らないだろう。あえてそれには触れず別の話をする事に
「そう。明日は治療の日で終わったら別宅に帰るわ。ザイラはどうするの?」
「…」
何故か少し俯き黙り込む。別宅に戻れると喜ぶと思ったのになぁ…。どうしようかな悩みながら様子を見ていたら顔を上げて
「私は暫く別宅には行きません」
「えっ?そうなの?」
「はい。父上が明後日から隣の子爵領の視察に行くようにと…」
そう言えば後学の為に他の領地に赴くと言っていたなぁ…。誘われていたけど一人で行くようだ。あの発言があってからザイラとは微妙なのよね…
今ザイラはお年頃だから波風立てずに姉弟関係を保ちたい。それに私も色々考えたい事もあるし、お互い離れた方がいいかもしれない。
そう思いながらお茶を飲みザイラを見ていたら、真っ直ぐ見つめてきて
「・・・」
「ん?何?」
ザイラは何か言いたげだ。まだ話しがあるのかと思い座り直して聞く姿勢をとったら、溜息を吐いて何も言わずに退室してしまった。これもお年頃なのだろうか⁈
結局この日の夕食はザイラも母様も部屋でとられダイニングルームに来なかった。いつも通り父様と2人で食事をし部屋に戻った。
「お嬢様。お早くおやすみくださいませ」
「はぁい」
就寝準備が終わりメルに急かされベッドに入るとメルが部屋の明かりを落とし退室した。明日の治療の事を考えると中々寝付けない。
「ジン様に相談してみようかなぁ…」
ジン様は私が赤子の時から診てくれている。だから父様の次に私の事を知っているはずだ。
私の出生や時々出てくる知らない言葉とか。もしかしたら本当の私について何か知っているかもしれない。探りを入れてみてもいいかも。
父様に直接聞けば全て話してくれるのだろうが正直怖い。聞けば今までの様にいれないそんな気がしている。まだ決断できないが知りたい気持ちはいっぱいなのだ。何かヒントになるような事を聞けたら心づもりできる気がする。
『しかし聞いてすんなり教えてくれるだろうか⁈』
色んな事を考えているうちに疲れたのか眠っていた。
翌朝目が覚めて鏡を見ると酷い顔をしている。別宅ならヘレンが直ぐにマッサージをしてくれるのだけど、本宅にそんな事してくれる侍女はいない。目元の隈が目立たないようにメルにお願いするが隠れず、ダイニングルームに行くと母様に酷い顔だと呆れられた。
「そんな酷い顔していたら殿下に嫌われるわ、メルにもっと濃いメイクをする様に言いなさい」
「・・・」
母様の小言に応えるのも面倒で無視をしていると、ザイラは何も言わずにじっと見つめて来る。こちらも敢えて触れずに視線を逸らす。まだ朝なのに既に疲れている。こんな時に治療を受けたら痛いんだよね…。気落ちしていたら父様が遅れた来た。そして父様は私を見るなり溜息をついている。
そして父様はザイラに視察に行く子爵領の資料を渡し、子爵領の次はウチと真逆にある伯爵領に行くように伝える。苦い顔をし父様を見据えるザイラ。2人の間には不穏な空気が漂い傍の私はとっても気まずい。
もしかして父様はザイラの想いを知っていて、私から遠ざけようとしているのかもしれない。
『姉弟がくっつくなんてありえないもんね』
ザイラは美形だし優しく誠実だから素敵な女性と出逢えるよ。そんな事を考えていたらザイラは立ち上がり私の横に来て私の手を取り
「ご一緒できないが残念です。私の気持は何があっても変わりませんから」
そう言い手の甲に口付けを落とし父様に鋭い視線を送り何も言わずに退室してしまった。
母様は反抗的なザイラの態度に怒りその苛立ちの矛先が私に向く。謂れのない小言を受けていたら父様が遮り
「ミーナ。出かける準備をしなさい。治療後は本宅には戻らずそのまま別宅に帰るから、そのつもりでいなさい」
「はい」
父様はそう言い私の手を取り部屋の外までエスコートしてくれた。直ぐ部屋に戻りメルに世話になった礼を言い部屋を後にした。
こうして暫く滞在した本宅を去り馬車で治療に向かう。馬車の中ではまだジン様に質問するか悩んでいた。すると父様が
「安心しなさい。ルイス殿下もリアンド殿下も成人の儀まで会う事はない」
「あ…そうでしたね」
そうだ両殿下は父様が接近禁止にしたんだった。だったら尚更ジン様も話す時間があるかも…
『でもなんて聞けばいいの?』
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