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4. 訪間者

成人の儀・婚約者決め・家出計画…と同時進行で進み


父様が本宅へ行ってから10日が過ぎた。本宅からの騎士や使用人達とも打ち解けて、何よりお喋りなマーガレットさんが来た事で屋敷の雰囲気は明るくなった。今日は森の奥にある湖に出かける。ヴォルフが煩いから騎士を付けるがいつもは一人。

この湖畔にはベンダーという花が咲きとてもいい匂いがする。この花を摘んで石鹸と香油を作る。ベンダーは年1回花を咲かせる赤茶の小花で香りが強く、肌を白くする効果が有り石鹸は屋敷の女性達に喜ばれる。

3回に分けて摘み5日かけて1年で使う石鹸と香油を屋敷の皆で作るのだ。

石鹸と香油作りは危ないからとやらせてもらえないから、花を摘む作業を私がしている。


『今年は本宅にから使用人が来てて、石鹸と香油を喜んでいたから多めに作るか…』



丁度今の時期は満開でいつも摘みに行く。愛馬のリンに布袋と鋏をセットし出発準備OK!汚れてもいい服装で騎乗しようとしたら本宅の騎士のライトが


「お嬢様。馬車をお出しいたしますか?」

「いいよ。馬の方が早いし気楽だから。それより…何人ついてくる気?」


付き添いの騎士は10人もいる。私は王族か!


「父様の指示とはいえ多すぎよ。2人でいいわ。寧ろ要らないくらいなのに」

「いえ、このくらいは必要でございます」


押し問答する時間が無駄なので出発します。ついて来るなら勝手にどうぞ!

愛馬リンは牝馬で小柄で大人しい性格。慣れない騎士の大きな軍馬に気圧され今日は挙動不審だ。そんなリンの鬣を撫でて落ち着かせる。別邸を出て小1時間走ると湖が見えてくる。リンはここに慣れていて手綱を固定しなくても呼べは戻って来る。だから放ち水を飲んだり草を食べて自由にさせる。羨ましそうな軍馬を横目に楽しいそうに駆け回るリンに少し笑えた。

私は袋と鋏を持ち湖畔の周りでベンダーの花を摘んでいく。遠巻きに騎士がついて来るが無視!いつもどおり自由にします!


一袋一杯になってリンを呼ぼうとしたら、騎士のリーダーのモリスが血相かえて来た。


「ミーナ様すぐお戻りを!」

「はぁ?」

「失礼いたします!」


問答無用で腕を取られて馬上に引き上げられ湖から立ち去るモリス。モリスに続き5名の騎士がついてくる。


「待って!リンが、摘んだ花が!」

「マーク!リンと荷物を回収してこい」

「はっ!」


私もリンも状況が分からず唖然。悲壮な顔をしたリンが必死に走ってくる。


「モリス止まって!リンが」

「緊急事態です。大丈夫マークがリンを連れて帰りますから」


険しい顔のモリス。後ろを振り返りリンに


「リン。大丈夫だからマークと一緒に来なさい」


リンは嘶きスピードを落とした。柄の小さいリンは他の馬について来れない。緊急なら仕方ない。それにリンは賢いから事態を把握しているだろう。


モリスと他の騎士は警戒しながら屋敷に急ぐ。屋敷に着くとヴォルフが待ち構えていて、直ぐに部屋につれて行かれた。


部屋にはマーガレットさんが待ち構えていて、直ぐに浴室にほり込まれ湯浴みをする事になった。湯上がり部屋で軽食を食べていたらヴォルフとモリスが来た。

モリスは部屋に入るなり跪き頭を下げ謝罪する。


「緊急とは言えお嬢様の身をあの様に乱暴な扱いをし、いかなる処分もお受け致します」

「騎士である貴方が理由も無くあの様な事はしない。謝罪を受ける前に何があったのか聞かせて」

「説明は私から」


ヴォルフに淡々と事情を説明します。


「先日もお話し致しましたが、お嬢様に高位貴族の御令息より縁組が本宅に申し込まれています。本宅にて旦那様が対応されておられますが、先日旦那様から私に連絡があり前触れ無く直接お嬢様に会いに来る可能性があるから、警戒する様に言われておりました。

旦那様が危惧した通りお嬢様の求婚者が別宅に訪問される様になり、私どもで応対しておりました。しかし湖に出掛けられたお嬢様に接触を目論み、サガリー公爵家のディック様が湖に向かわれたようです」

「さっきの?」

「はい。湖付近を警戒していた騎士から、公爵家の馬車が近づいて来ていると連絡が入り急遽お戻りいただく事に…」


ザガリー公爵は4大公爵家の1つで私より身分が上になり、外で声をかけられては断る事が出来ない。しかし屋敷に居れば理由を付け断る事が出来るのだ。


「だから人攫いの様に強引に連れ帰ったのね…事情は分かったわ。モリスにヴォルフ。ありがとう。それに付き添ってくれた騎士にもお礼を伝えてくれるかしら」


二人に頭を下げてお礼を述べると、やっとヴォルフとモリスの表情が柔らかくなった。


「で、その公爵家の御令息は屋敷に来たの?」

「お嬢様がお戻りになり程なくしてお見えになりました。お約束されていないのと、お嬢様の体調不良を理由にお断りいたしました。まぁ…公爵もルールを無視し湖にいるお嬢様に会いに行ったのです。面子もありあっさり引き下がりましたよ」


ヴォルフは微笑んでいるが目が笑っていない。そんな状況だから父様が帰るまでは外出を自粛して欲しいと言われた。嫌だけど知らない男性にバッタリ会って、求婚とか勘弁して欲しいから暫く引きこもりします。


「それよりリンは大丈夫?」

「はい。さすがお嬢様の愛馬です。お嬢様の指示通りマークに従い戻りました。少し興奮気味だと馬番が言っておりました。お嬢様が落ち着かれましたら、リンの様子を見て差し上げて下さい」

「ありがとう。ヴォルフ。私がベンダーの花摘み行けないから明日誰かに行かせて。ベンダーの花が咲く時期は短いの」

「畏まりました」


やっと落ち着いたらヴォルフが胸ポケットから、今日来たザガリー公爵家のディック様から手紙を渡してきた。

正直読む義理も興味も無い。だが捨てる訳にもいかず一応目を通す。


「はぁ?」


会ったことも無いのに、熱烈な愛の言葉がつづられている。『この人頭大丈夫?』

目を通したから直ぐに暖炉にほり込み燃した。返事はヴォルフに適当に出してもらおう。


こうして引きこもりを始めてから、毎日誰かしら求婚者がくる。ストレスが溜まる私の為にヴォルフがナーシャを屋敷に呼んでくれるが、自由にしてきた私には苦痛でならない。


「早く父様帰って来て!」



結局父様は次の治療の前日にやっと帰って来たが…


「すまなかったミーナ。寂しかったかい?」

「・・・父様?何故母様も一緒なのですか?」

「婚約者を決めるあたり、母としてミーナに話が有るそうだ」

『あれだけ育児放棄ネグレクトしておいて、何が母としてよ』



体裁よく“母として”なんて言いながら、目も合わさない母様。気分が悪く思わず


「名ばかりの母から聞く話は無いかと…体調が優れないので、部屋に戻ります」

「ミーナ!」


父様が止めようとしたが無視して部屋に戻った。


むしゃくしゃして気が付いたら馬小屋に来ていた。リンは嬉しそうに鼻を鳴らす。

父様が帰るまで外出禁止。でも帰って来たからいいよね…


馬番のリックに用意を頼み、こっそり裏口から部屋に戻り乗馬シューズとワンピースに着替えてリンの元に向かい…


「リック。少し散歩に出てくるわ」

「はいお気をつけて」


こうして運動不足の私とリンは屋敷を後にした。どうせ後ろから騎士が付いてくるだろうし、父様に言わなくても大丈夫だよね!


久しぶりに駆けるリンは楽しそうだ。どこに行こうか悩みナーシャの所へ向かう。

って言うか友達はナーシャしかいないし、最近は一人ディーン友達失ったしなぁ…


暫くすると”歪みの森”が見えて来た。

普通に通過しようとしたら、背後から蹄の音が聞こえ来た。誰かついて来ている…うちの騎士?なら付かず離れずで、こんなに近くに来ないはず!

誰かに追いかけられている?


「ミーナ?」

『この声は!』


振り返ると元友達のディーンだ!あっ!3発入れないと!

お読みいただき、ありがとうございます。

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