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38.継続

身分を明かしたディーンとナーシャ。父様とどんな話をするのだろう

「おはようございます?」


父様の執務室には貴族のディーンとナーシャが居て、私が入室するなり立上り綺麗な礼をしてくれる。まるで貴族令息と令嬢だ。扉の前で固まる私に父様が座る様に言い父様の隣に座る。

いつも少し汚れたシャツに作業ズボンのディーンは騎士服を身にまとい、いつも同じワンピースにエプロン姿のナーシャは綺麗な黄緑色のデイドレスを着てお化粧もしている。

目の前に居る2人は知っている2人では無く緊張してしまう。

するとディーンは笑いながら


「身なりは変わっても中身はミーナ嬢の知っているディーンとナーシャだよ。気負わないでくれ」

「そうよ。いつも通りにして欲しいわ」


そう話す2人はいつもと同じ微笑みを向けてくれ、安心し体の力が抜けて来た。そしてソファーに体を預けリラックスするといつもの様に頭を撫でてくれる父様。父様の大きく温かい手が大好きだ。


お茶を出した侍女が下がった所で父様はルドルフに執務室に誰も入れないように言い、ディーンとナーシャに向き合う。何を話すのか見当が付かないからドキドキして来た。すると父様は徐に立って胸に手を当てて頭を下げ


「今回のロダンダ…いや今までミーナの身と心を守ってくれた事に心から感謝をする。数奇な運命を背負ったミーナがこんなに真っ直ぐに育ってくれたのは、友である二人が居たくれたからだと痛感している」


正式な謝辞に2人は慌てて立上り父様と握手を交わしている。心なしか2人共泣きそうな顔をしている。何か私だけ置いてけぼりだし温度差が気になる。


父様の上着の裾を引っ張り少し拗ねて


「何か私だけ意味が分からず仲間外れみたいで寂しいです。ちゃんと説明して下さるの?」

「あぁ…そのために呼んだのだよ」


そう言い額にキスをしてくれる父様。そしてお茶を頂きながら話が始まる。

口火を切ったのはナーシャだ。


「おじ様…失礼いたしました。侯爵様…」

「ナーシャ嬢、いつも通りおじ様と呼んでくれないか⁈」


そう言いながらナーシャに優しい微笑みを向ける父様。表情を緩めいつもの口調で話し出すナーシャ。


「おじ様は何時から私の事をご存じだったんですか?」

「初めから知っていたよ。ファブと挨拶に来た時からね」

「しかし、初めてお目通りしたのはミーナ嬢が2歳の頃で、平民としてお屋敷に伺ったのはそれから4年も後の事ですわ。ファブとその家族は子爵家の元は使用人。身分を隠すために時間をかけ村に馴染んでから侯爵様にお目通りしたのです。完璧に身分を隠せていると思っておりました」


不思議そうにナーシャが言うと私を見て父様が


「ミーナだよ」

「えっ!私?」


6歳になり木こり孫娘として別宅に来たナーシャを見て私が”ねぇねぇ?”と言った事で、2歳の頃に顔合わせしたナーシャだと分かったそうだ。2歳の時に顔合わせした令嬢は約10人。年の近い子を友達候補としてあったが懐いたのはナーシャだけだった。顔合わせ当日のナーシャは年が離れすぎているので候補では無く、人見知りする従姉妹の付き添いで来ていた。そして当時の私は他の候補の令嬢には見向きもせずナーシャに抱き付き直ぐに懐いた。


「それより”ねぇねぇ”なんて言葉を私は知らないわ。ナーシャしっている?」

「そこ!私も知らなくていつかミーナに聞きたかったのよ。何⁈自分で言っておいて知らないの?」

「うん」


2人で首を傾げていたら父様が


「”ねぇねぇ”は姉の事を指す言葉だよ」


何故か父様が答えて唖然とする。そうして父様は私を見てウィンクする。もしかしてこの言葉も真実を知れば分かる事なの?

私の考えが分かった父様は頷いた。やっぱり昔から感じる違和感と小さい疑問は真実の中に答えがあるんだ。やはり早く知った方がいいのかもしれない…

そんな事を考えていたらディーンが姿勢を正し父様に


「侯爵様。私とナーシャ嬢は身分が分かった上で、これからもミーナ嬢の友人で有りたいと思っております。これまでの様にお身と心をお守りし、ミーナ嬢が望みの手助けをしたいのです」

「私も同じ思いですわ」


2人の想いに感動し目頭が熱くなっていたら、


「ミーナ。俺たちがバラさなくても侯爵様は全てお見通しだ。だからこれからは隠さず何でも侯爵様にも相談するといい。但しザイラ殿には言わない方がいい。妨害されるぞ」

「はぁ?」


雲行きが怪しくなって来た。”すべてお見通して”てどうゆう事?


「ミーナ。成人の儀が終わったら家を出るつもりなのだろう」

「!!」


父様がさらっと凄い事言ったよ!口を開けて固まっていると、ナーシャが


「私の任務はミーナが成人するまで傍にいて支えになる事だったわ。当初の予定では任務を終えたら許嫁と婚姻する事になっていたの。でもそっちも事情が変わり、ミーナが家を出るならついて行く」

「へ?」

「俺もナーシャと同じでミーナが成人するまで任務だったよ。でも世間知らずなお前をほおっておけないから、家出するならついて行く。そして安住の地と愛する者が出来るまで傍にいる」

「ちょっと待って!」


もうプチパニック中の私を横目に2人は堂々と家出の話をしている。怖くて父様を見れない私に父様が


「私がミーナが望むのなら家を出る事も賛成するよ。但しそれは真実と自分を知ってからにしてくれ。そして求婚者達とちゃんと向き合いちゃんと振ってからにしなさい」

「・・・」


父様は完全に私の家出計画を知っている。どこから漏れたのか…否!もうそんな事どうでもいい!ツッコミどころが多すぎて頭を整理したい!

急な展開に頭がショートしくらくらしている。するといいタイミングでルドルフが来て食事の準備が出来たと呼びに来た。朝食も食べていない私は完全に低血糖で頭が回らなくなっている。

こうしてふらふらの私は父様に手を引かれダイニングルームへ移動する。

ダイニングルームに入ると母様が居てディーンとナーシャを見るなり顔を歪める。生粋の貴族主義の母様は昔から2人の事を嫌っていた。


『ここで二人が本当は貴族って知ったらどんな反応をするだろう』


すこし面白くなって来た。着席し食事が始まると2人はやはり貴族の令息・令嬢だけあって食事する所作はとても綺麗。平民が頑張って真似てもこんなに綺麗に出来ない。

何かおかしいと思いながらも平民だと思っている母様は2人の粗探しに躍起だ。母様を除いた皆は和気藹々と食事を楽しんでいて、面白くない母様は嫌みを炸裂させる。


「装いだけでも繕えはそれなりに見えるものですわね。今回の旅でミーナを守ってくれたのだから食事に同席するのは認めますが、スティーブ次からは平民との食事は止めて下さいませ」


そう言いワインを一気に飲み干す母様。すると父様は笑いながら


「ならまたディーン殿とナーシャ嬢を食事に誘うよ」

「はぁ?」


目を吊り上げ不機嫌になる母様。そして父様が2人の本当の身分を母様に明かし、ロダンダとボルディン両国の王が私の為に遣わせた事を知り絶句している。そしてばつが悪そうに食後は直ぐに部屋に戻って行った。

ディーンもナーシャも晴れ晴れとした表情をしている。今まで散々嫌みや横柄な態度を取られていたからスッキリしたようだ。正直私も気分がいい。


この後父様は仕事があり外出していった。ディーンとナーシャは私の部屋でこれからの事を話す為に部屋に向かっている。

正体が分かったけど今まで通り変わりなく接してくれる2人。まだまだ色々起きそうだけど幼馴染が傍にいてくれると思うと心強い。軽口をたたきながら廊下を歩いているとすれ違う侍女達がディーンに釘付けで手がとまっている。そう正装した2人は美形で目を引くのだ。

ここで疑問が…2人共私の家出について来ると言っているけど実年齢は適齢期を過ぎている。

私について来たら婚姻出来ないじゃん!

大丈夫?じゃないよね!

お読みいただき、ありがとうございます。

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