33.真実
やっと退城しホテルへ戻れるけど…
『ゔ…ん…やっぱり分かんない』
城を出てホテルへ向かう馬車の中。リアンド殿下に私がボルディンの身分社会を嫌ってるのをリークした人を思い浮かべるけど、全く思い浮かばない。ロダンダ訪問が決まってから、私だけが知らない事の多さに凹む事が増えた。そして今は車内の雰囲気の悪さに気が滅入ってくる。何故なら城を出てからルイス殿下は超不機嫌で気まずいのだ。
「…」
「…」
沈黙のルイス殿下と私…
実は馬車はルイス殿下と2人っきり。王城を出るときに様子のおかしい殿下に気付いたイルハン様とティム様が同乗しようとしたが、ルイス殿下がそれを拒んだ。そのうえ侍女の同乗をも拒み、広い広い車内で超不機嫌なルイス殿下と向き合い座っている。
『最恐に居心地悪い…私何か悪い事した?』
初めはどうしていいか分からず困惑していたが、理不尽にキレられて段々腹が立って来た。我慢の限界で苦言を呈しようとしたら、殿下が足を組み替えて徐に
「何故貴女はリアンドを許したのですか?」
「へ?」
いきなりの質問に固まってしまう。不機嫌な原因は私がリアンド殿下を許したから?でもそれは私の気持ちでルイス殿下に非難される事ではない。腑に落ちず反対にルイス殿下に
「リアム様の正体に驚きましたが、それについて怒っていないからです」
「奴は貴女を騙していたのですよ。不誠実ではありませんか!」
語気を強め不服そうに詰め寄るルイス殿下。その態度に腹が立って来て
「正直、リアンド殿下の正体…いえ、その他の事は正直私はどうでもいいんです。私は自分の存在があやふやでそれどころでは…。成人の儀を迎えて自分を知らないと他の事を受け入れられない。そこを殿下と言えども責められる謂われは有りません」
不敬承知だ。私の想いや感情は私のもので、そこを人にとやかく言われたくない。
私が言い返すと思ってなかったのか目が点?になっている殿下。超美丈夫な殿下はどんな顔をしても美しい。
『同じ”人”なのに顔の作りがこんなに違うなんて神様は不公平だ…』
と現実逃避をしたくなった。それにしてもまた変な言葉が頭に浮かんだ。“目が点”って何?瞳は点になんてならなのに。
『治療の日を早めた方がいいのかもしれない。私色々有り過ぎて頭がおかしくなってきているのかもしれない。狂ってしまう前にジン様に診てもらわないと』
色んな事を考えていて嫌な事からの逃げようとし、目の前に殿下を放置した。まだ目が点の殿下はやっと目が覚めた様で勢いよく立ち上りビックリして身がすくむ。きっと不敬な発言をした私に腹立てていると思い体が強張る。
「済まなかった!」
「へ?」
凄い勢いで頭を下げ殿下が謝罪された。
「ちょっ殿下!カーテンが開いてます!やめて下さい。外から見えるわ!」
しかし時すでに遅しで並走するウィル卿が驚愕の表情でこっちを見ている。何も悪い事をしていないのに思わずカーテンを閉めてしまった。
『不味いわ!まるで疚しい事あるみたいじゃない!』
まだ頭を下げたままのルイス殿下に手を引き隣に座ってもらう。そしていつどこで誰が見てるか分からないから、王族が簡単に謝らないでと注意する。
『って言うか…それ私が忠告する事なの?』
唇を噛み締めた殿下はじっと私を見ていて、どう相手していいか分からない。その状況が暫く続き、やっと殿下は口を開いて
「確かに貴女の感情を私が非難するのはおかしい。しかしなぜ騙されたのに腹が立たないのだ」
一応謝ってくれけど、殿下は私がリアンド殿下に腹を立てなかったのか理解できないようだ。回りくどく説明するより単刀直入に想っている事を伝えた方がいいと思い
「先ほども言いましたけど、私は今自分を知りたいです。だからリアンド殿下や他の求婚者に全く興味がわきません。だから何の感情もない」
ちょっと辛辣かなぁ…と思ったけど本心だから仕方ない。すると殿下は悲しそうな表情をして
「求婚者の心を受ける気はないのですか?」
「はい今は…」
不敬承知で思っている事を素直に述べた。するとルイス殿下は頭を抱え込んでしまった。そして更に車内の空気が悪くなり、息苦しさから窓を開けて新鮮な空気を思いっきり吸った。すると並走するウィル卿が大丈夫かと心配してくれる。首を傾げ“私は”大丈夫と伝えると微妙な顔をされた。そして早くこの状況から抜け出したくて
「ウィル卿。あとどの位でホテルに着きますか?」
「日没までに着きますからご安心ください。それより…!!」
「へ?何?…きゃぁ!」
“バン!”
背後から腕が伸びて来て窓とカーテンを閉められ、抱き付かれ思わず悲鳴を上げてしまった。馬の蹄と車輪の音の中にウィル卿が声が聞こえるけど、耳元で聞こえる殿下の息遣いの方が大きくウィル卿が何を言っているのか全く聞こえない。
殿下は背後から私を拘束しそのまま座席に座り私は殿下の足の間に座らされ、全身が密着して不快で汗が噴き出してくるのが分かる。
「殿下!離して!これは流石に嫌です」
「私は幼い頃から貴女を妃に望んでいた。貴女以外考えられない!」
「マジにやめて!離して!」
抗うがビクともしない殿下に恐怖を覚え涙が出て来た。そして殿下は
「全てを知ったら、私と向き合って心を受けてくれますか?」
「へ?全てって…殿下は何か知っているんですか?」
突然の話に抗うのをやめて殿下を見る。すると抱きしめる殿下や腕の力が少し緩んだ。逃げるチャンスだが動けす綺麗な碧眼を見つめそれをしなかった。
すると殿下は頬に口付け馬車の扉の鍵を閉めた。扉を施錠したのと同じタイミングで馬が嘶き馬車が止まりウィル卿か扉を叩き
「ミーナ嬢!大丈夫ですか?殿下はここを開けて下さい!」
「あ…」
ウィル卿に返事しなければならないのに、殿下の”全て知ったら”の言葉が頭の中でぐるぐる回り、他に気を向ける余裕が無い。
父様の『その時が来たら』を待たずに、殿下に乞えば今全てを知ることが出来る。
『知りたい!私の出生の秘密!知れば私がここに居ていいと思える様になれるはずだから…』
魔物に取り憑かれたかの様に、自制が効かない!今知ればきっと私を守るために頑張って来た父様を裏切ってしまう。
『でも!知りたい』
どんどん近づく青い瞳から逃げれない私。殿下は私の頬に手を添え強引に向かせて…
“ドンドン!”
けたたましく誰かが扉を叩き叫んでいる。頬に熱い吐息が当たり状況が把握できずにいたら
「ミーナ嬢!返事をして下さい!殿下は早まってはなりません!後悔する事になる!侯爵との約束を忘れてはなりません」
『この声はティム様…侯爵との約束?侯爵…父様?』
「ミーナ嬢!真実は父上から聞きなさい!今その時では無い!」
『今度はイルハン様だ…あれ?』
周りの音が小さくなった…そして急に体が浮き柔らかい何かの上に落ちた。目を開けると真上に殿下がいて…そう座席に押し倒されて、殿下が覆い被さり両手を掴まれている。そして耳元で
「他の者の言葉に耳を貸さないで…貴女が欲する真実を全て私が教えてあげよう。その対価とし私を愛し私のものになって…」
「全て?」
「あぁ…全て教えるから、貴女の全てを私に…」
知らない…いや知らされないのは苦しく辛い。早く自分を知って解放されて自由に…
“ガッシャン”
「「!」」
「ミーナ!しっかりしろ!侯爵が泣くぞ」
この声はディーンだ。顔を上げて扉を見ると割れた窓から血まみれの手が入って来て、鍵を開け扉が開いた。そして上にいた殿下がいなくなり、知っている香りに包まれる。
この香りは…
「ディーン?」
「父様大好きなお前が何やってんだよ!今までお前を一人で護って来た父を裏切る気か⁈しっかりしろ!」
「でも!私だけ知らないのはもう嫌!この状況は苦しい!早く全て知りたいの!」
そう叫んだらディーンが苦しい位に強く抱きしめ、ディーンの腕の中でもがき抗う。するとルイス殿下が私の腕を取りディーンから離そうとし
「下僕の分際で私に歯向かうのか!不敬だウィル卿こやつを捕縛しろ!そしてミーナ嬢をこちらへ」
「殿下。その命に従えない。ウィル卿。殿下お部屋へ。そして騎士を付け部屋からお出にならないように」
「はぁ?ティム!俺は王太子だぞ。お前にそんな権限は…何をしている!私に触るな!離せ」
「いえ、陛下から乙女に無体な事をした時は拘束するように命を受けております。さぁお早く」
「っち!」
舌打ちした殿下は騎士の手を払い馬車を降り振返って
「ミーナ嬢。私は貴女の味方です。貴女が望むなら陛下の命も背きましょう。いつでも私をお呼び下さい」
「ルイス殿下…」
こうしてルイス殿下は先にホテルへ入って行った。そして腕緩めたディーンが
「痛い!」
そうディーンから拳骨を1つ貰い、頭がじんじんし涙が出て来た。
「ばか!」
「ごめん…それよりディーン怪我!」
慌ててポケットからハンカチを出しディーンの腕を見ると拳はタオルを巻いていてガラスは沢山刺さっていたけど傷は酷くなく、割れた窓に腕を突っ込んで腕が傷だらけで痛々しく直視出来ない。出したハンカチ程度では応急処置も出来ず、綺麗な布を沢山持って来たウィル卿が応急処置をしてくれ、ディーンをホテル医務室に連れていってしまった。
そして殿下とティム様をを見送ったイルハン様が来て、無言で抱きしめ深いため息を吐く。
「よかった…貴女に何か有れば私はスティーブンに会す顔がない。何もかも知らされず不安な気持ちは分かるが、それは父君から聞くべきだ。父君から話を聞いた方が貴女の納得できる答えを聞くことが出来るでしょう。
今日はお疲れでしょう。夕食も部屋に用意させますから部屋で休みなさい」
「はい…ご心配をおかけし申し訳ございません。あの…」
この後イルハン様にディーンが不敬罪に問われないか聞いた。だって殿下の許可なく馬車の扉を破り押し入ったのだ。するとイルハン様が
「ティム殿も言われていたが、ミーナ嬢を守る事に関しては陛下より許しを得ている。彼の行動は貴女を守る行動だ。だから感謝をされる事があっても罪に問われる事はないよ」
「よかった…後でディーンのお見舞いに行きたいのですが」
「貴女は部屋から出ない方がいい。治療を終えたら彼を部屋に向かう様に言っておくよ」
こうしてイルハン様に部屋に送ってもらい入室するとナーシャか抱きついて来た。そしてこの後長い長い説教をナーシャから受ける事になった。
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