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22. 旅支度

ナーシャとディーンにロダンダ同伴をお願いに行き…

モリスに対して若干の罪悪感を感じながらナーシャの家に向かう。家には丁度ディーンもいた。良かった!話が早い。 


「朝からどうしたの?」

「あのね父様からロダンダ行の許可を貰って行く事になったの」

「ほんとに?え?でも王太子と一緒じゃないの?ヤバいじゃん!」


矢つぎ早に質問するナーシャに驚いた顔をするディーン。そして殿下の提案を話しロダンダでは自由にできる事になったと2人に話す。

安心した2人は同行したいと言ってくれた。


「よかった!今日は同行のお願いに来たんだよ。但し父様から2人のお父さんから許可を貰う様に言われたの。だから許可を貰ってくれる?」


そう言うと2人は私を置いて各自親の許可を貰いに行ってしまった。

そしてすぐにナーシャが来て嬉しそうに親指を立ててウィンクする。

ディーンの返事は未だだけど多分大丈夫。ディーンのお父さんは私に甘いから。ディーン待ちの間に2人で持って行く物をメモに書き出し初めての旅行の準備にかかる。


「あらあら楽しそうね。お昼を準備したから食べに来なさい」

「「はぁ~い」」


シュナか呼びに来てくれ食卓に行くとシチューにパンと炙りチキンが用意されていて、いい匂いでお腹が鳴る。

あっ!でも騎士の皆のお昼が!何も考えて無くて慌てると、ファブが窓の外を指さし見てみる様に言い窓を覗くと、ナーシャの母様がパンとスープを振舞っている。


「ごめんね、私が長居してるから騎士の昼食まで用意してもらって…」

「いや侯爵様には昔からお世話になっているし、ミーナはナーシャと同じで孫だと思っているんだ。気にしなくていい」

「ファブ!」


嬉しくてファブに抱き付いた。ファブは大きくごつごつした手で頭を撫でてくれる。これが本当のおじいちゃんよね。書面上のあの酒乱の祖父母と大違いだよ。

こうしてナーシャの家族に交じり楽しい昼食を頂き、昼からも旅の準備をナーシャの部屋でしていると、やっとディーンが戻って来た。


「どうだった?」

「勿論父さんに了解もらったよ。それについでに叔父の宿にも顔を出す事になったよ」

「良かった!嬉し過ぎて今晩はきっと寝れないわ私!」


この後ディーンも含めて旅の話で持ち上がる。楽しい時間はあっという間に過ぎ、ルークが帰りの時間だと呼びに来た。


「まだ、王太子殿下に返事して無いから、返事をして詳細が分かったら知らせに来るわ。でも日程は決まっていて、次の治療日の5日後よ」

「分かったよ。俺らも準備を始めておくよ…ただ…」

「?」

「その時期って建国祭だろ?王太子は本当にミーナを式典に参加させないつもりだろうか?もしかしたら現地でいきなり参加を強要されるかもしれないぜ」


そう言われて確かに無くはないが…


「もしそんな事をしたら一生嫌うって言うよ」


真面目に言ったのに何故か2人は笑い、ナーシャに至っては”可愛い”と言い撫で回す。

失敬だなぁ!私は至って真剣なのに!

そしてディーンは式典はロダンダ中の貴族が集まると言い、そんな所に王太子と行くと帰る頃には妃扱いだと言う。


「大丈夫!絶対式典には行かないし、何なら教会の神像の前で約束を守ると誓い一筆書いてもらうもん」


また2人に笑われて不貞腐れて帰る事になった。別宅着くとヴォルフが待っていて着替える間も無く、父様の執務室に連れて行かれる。そして…


「王太子殿下はこれを送ってきた。どうしてもミーナをロダンダに連れて行きたい様だ」

「私が見ても?」


頷く父様から手紙を受け取り読むと


「!」


さっきナーシャとディーンに笑われた事が起きていた。殿下はジン様を証人として神像の前で、貴族が集まる式典に私を同伴させないと誓い念書を書いて寄越したのだ。

ここまでされると反対にそこまで私を連れて行きたいの?何かあると思えて怖くなってくる。手紙を読み固まる私に父様は


「ミーナは深く考える必要はない。周りで起こる事柄を自分で受け止めて考えて、先の事は自分で決めればいい」

「それって何かあるのが前提だよね!」

「大丈夫さ。お前は私の子だ自分の道は己で切り開けるさ」


恐らく父様は全て知っていて、ことの成り行きを静観している様だ。それに私に選択権を与えてくれている。

やっぱりロダンダに何かあるんだ…


「今日はナーシャとディーンに会いに行ったのだろう?2人は何と?」

「あっ!了解もらえました。それに其々の父様からも」

「なら、従者として同行してもらうから、旅の費用はこちらで持つ。その旨を手紙で2人の父君に送っておくから安心しなさい」


こうして正式に2人は従者として付き添いが決まった。翌日から本格的に用意が始まり、治療の前日には荷造りも終わり、後は治療を終えるのを待つばかりだ。

治療の日から数日本宅に泊まり体調を整える。そして出発前日に王城に移動してその日は王城で泊まり、翌日王家の船で出港する事になる。


準備をしていたらあっと言う間に治療日になった。ナーシャとディーンは出港当日にヴォルフが港まで連れて来てくれる。

何度も打ち合わせしたからバッチリ!

時間になり父様と治療に向かいます。行く直前までザイラが同行すると食い下がったけど父様が許さず、留守中に父様の代行として仕事を沢山与えられていた。

ちょっぴり可哀想だったけど、頑張れ次期当主様!


出発前にザイラに抱きつかれ、ザイラが中々離してくれない。背をポンポンして宥める。

体は大きくなったのにこうしていると幼い頃の事を思い出し愛おしくなる。


「お土産沢山買ってくるわね」

「私が同行し姉上を全てのものから守って差し上げたい!」

「もう小さい子じゃ無いから大丈夫だよ。ディーンもナーシャもいるしさ」


すると腕を解き肩を掴み


「信用出来ない。皆んな私から姉上を奪う奴らばかり…つっ!」


父様がザイラの手を取りいつもと違い、聞いた事もない低い声で


「いい加減にしないか!」

「父上しかし!」

「くどい!」


ただならぬ空気に固まる私をヴォルフが手を取り馬車に誘導し


「ザイラ様は次期当主のプレッシャーがお有りになりご不安なんですよ。優しいミーナ様が遠くに行く様で寂しくなられたのでしょう」

「そうなの?そんな感じでは…」

「ミーナ様。あまり気に病まれるとお体に触りますよ。心穏やかに…」


ヴォルフにそう言われても様子のおかしい父様とザイラが気になって仕方ない。馬車の窓にかじりつき二人の様子を見ていたら、どうやら話が終わった様で父様が馬車に乗って来た。ザイラは迷子の子猫の様にこちらを見ている。ほっとけなくて思わず馬車を降りてザイラに抱きついた。


「そんな悲しい顔しないで。あっという間に帰って来るわ。帰って落ち着いたら他の領地に連れて行ってくれるんでしょ?私楽しみにしているんだからね」

「姉上…邪な者達に心奪われないで、必ず私の元に帰って来て下さいね」

「ここが私の家よ。帰るに来まってるわ」

「必ずですよ…」


やっと落ち着いたザイラ。ヴォルフが来て時間が無いと声をかける。馬車に乗ると直ぐに出発する。

道中…眉間に皺を寄せて何も言わない父様。こういう時は何を聞いても話してくれないのは分かっているので、あえて何も聞かないし余計な事も言わない。

静かに馬車は進み森を抜けて王都に入った。するとやっと口を開いた父様が


「治療が終わったら王都で旅に必要な物を買いに行こう」

「え!いいの?」

「衣類と他に何が欲しい?」

「うんとね…沢山歩くから新しいブーツが欲しいわ」

「ロダンダは日差しが強いから帽子と日傘を持って行きなさい」


楽しいそうに話す父様。いつもどおりの父様で安心していたら教会に着いた。私が“漆黒の乙女”と周知された事で、もう裏口からこっそり入る必要は無い。

馬車が着くといつもの神官さんが待っていて、遅れているので直ぐにジン様の元へ。

到着時間には遅れたがジン様は後の予定がない様で珍しく世間話を始める。そして今回のロダンダ訪問について話し出す。


「王太子殿下から聞いていますね。殿下は神像の前で誓いを立ててらっしゃる。ミーナ嬢が貴族達と関わらないように配慮されておられる。それだけ貴女を大切に思っているのですよ。そのお心は本物です。素直に受け取ってお上げなさい」

「はい」


そして旅行中の注意事項を聞き、隣に座る父様は難しい顔をして話を聞いている。ロダンダの話が終わり治療をするが…

いつもより瓶が大きい!そんなに採るの?

瓶を見て青い顔をするとジン様は笑いながら


「いつもの瓶の空きがないだけで採る量はいつもと変わらんよ」


そう言われほっとした瞬間に針を刺され、心の準備が出来ていなくて涙が出た。

“すまん”と笑いながら止血するジン様。何度も刺す時に声をかけてって言っているのに!

思わずジン様を睨んでしまう。

やっと止血し休憩室に移動する事になった。今日は本当に痛かったしいつも通りと言いながら、いつもより多く採られた様な気がするのは気のせいだろうか⁈


休憩室でお茶とケーキを出してもらい糖分チャージ中。すると先日お会いした時にここを離れると言っていたリアム様が窓の外に居る。顔色が悪い事から急遽治療に来たのだろか?窓を開けて小声で


「大丈夫ですか?顔色が悪いですよ。治療は今からですか?」

「あ…はい。それより入っていいですか?」

「えっと…」


返事する前に入って来るリアム様。窓から外を見ると、離れた木の下にキーファ様の姿が見える。今日はまいて来ていない様だ。

ソファーに向かい合い座り少しの沈黙の後に意を決したように


「ロダンダに行くんですね」

「はい」

「行けばルイス王太子殿下の婚約者にされるのに?」

「あ…その件は大丈夫です」

「?」


心配してくれているリアム様に、神像の前で殿下が誓いを立ててくれた事を話した。すると何故か顔色が良くなるリアム様。そしていきなり私の両手を取って握りしめて


「では、式典やロダンダ城には行かないのですね!」

「はい。行く気もありませんし興味も無いです。でも最終日は城下散策で殿下と共にしますが観光ですよ。沢山買い物をして綺麗な景色を堪能するだけです」

「そうですか…なら…」


リアム様が何が言おうとしたらキーファ様が慌てて来て時間だと告げた。治療の時間なのだろう。立上りお見送りしようとしたらリアム様に抱きしめられた。


「ロダンダは温暖で国民も穏やかな者が多い。好きになってくれると嬉しい」

「へ?」


そしてリアム様は断わりも無く頬に口付け窓を飛び越えて帰って行った。帰り際にキーファ様が胸に手を当ててお辞儀をしていった。


「何だったのあれ?」


意味不明で立ち尽くしていたら父様がジン様との話を終えて休憩室に来た。まだケーキを食べ終わってなかったので待ってもらい慌てて食べる。


『食べ物を残すと“もったいないお化け”が出るもんね』


あれ?“もったいないお化け”って何?また知らない言葉が頭を過る。17歳を迎えてから知らないはずの言葉が頭を過る。病は18歳の誕生日まで治療すれば完治すると言われているのに、どうしちゃったんだろう私の頭。ここ最近変になる事が増えた。次の治療でジン様に相談した方がいい?


やっと食べ終わり父様と王都の中心街で買い物を楽しむ。そして日が傾く頃に超ご機嫌で本宅へ向かった。


「あ…」

「やっと帰って来たのね!待っていたわ。私の可愛い娘」

『あ…マジか…』


玄関先で満面の笑みの母様を見て一気にテンションが急降下。そっか…あの人かいたんだった。楽しい事の前に試練がありました。はい…頑張ります

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