17.複雑な思い
愚痴る気満々でナーシャの元へ急ぐ
リンを走らせナーシャの元へ向かうが、相変わらず護衛がついてくる。
はぁ…半年前までこんな事無く1人気ままに行動したのに、どうしてこんな事になったんだろう…
そんな事を考えていたら”歪みの森”が見えて来た。ここでリアム様と会ってから私を取り巻く環境が変わった。
『リアム様はお助けキャラ?それもとお邪魔キャラ?』
そんな事を考えながら森の横を通過し、ナーシャの元へ急ぐ。
ナーシャの家に着くとディーンの愛馬がいた。リンの手綱を固定するとナーシャが出て来た。
「そろそろ来ると思ってた。ディーンも来てるわよ」
「色々あり過ぎ!愚痴聞いて!」
「勿論!入って」
家に入るといつものように迎えてくれるファブとシュナ。一応母様方の祖父母が健在だが会った記憶がない。病気を理由にしていたが、恐らく本当の孫じゃ無いから会いたくもないのだろう。母様同様に身分至上主義らしいし。父様の方の祖父母は早くに亡くなり覚えていない。だからファブとシュナが私の祖父母だと思っている。
「ナーシャの好きな焼きマボロンかあるから食べなさい」
「シュナありがとう!これ大好き!」
ナーシャとお茶とお菓子をナーシャの部屋に運ぶとディーンが手紙を読んでいた。
私に気付くとさっと手紙をなおすディーン。
ナーシャが荒っぽくお茶をテーブルに置いた。そして
「さぁ!今日はストレスまみれのミーナの愚痴を聞くわよ!」
「よろしくお願いします!」
まずはお茶を一口飲み堰を切った様に話し出す。2人が絶妙な相槌を打ってくれるので、私の口は滑らかになり絶好調!
「でね!王太子とデートする羽目になり気が重くてさ!」
「断ればいいじゃん」
「一度受けたのに断るのならそれなりの理由をつくらないといけないわ。それに断ると父様に迷惑をかける」
私とナーシャの話を聞いていたディーンが
「侯爵様も陛下もこの国に居るなら、好きにしていいと言ったんだろう⁈なら家出する必要は無いだろう」
「私もそれ思っていたの。なんでロダンダに行きたいの?」
「私はロダンダに行きたい訳じゃ無いわよ。この国を出て平民になり、私の出生を知りたいの」
「出生?」
そう。少し前に母様が本当の母では無いことが分かった。って言うか薄々分かっていたからそこでは関係無い。
私は小さい頃から違和感を感じながら過ごしてきた。理由は色々あるが一番はこの国に無い”色”している事。この色は本当の母様の色でこの国の人では無い。父様や周りの人は愛し慈しんでくれたのはよく分かっている。でも上手く言えないけど私はここに居るべき人間では無いと感じている。
「ミーナは母親に会いたいのか?」
「ゔ…ん…少し違う。会いたい気持ちはあるけど一番じゃ無いわ」
「よく分からないわ。何を知りたいの?」
「自己認識かなぁ…」
「「自己認識⁈」」
幼い頃からから感じる違和感。私は自分のいるべき所から別の場所に連れて来られて場違いな気がしている。だから私が生まれた時の事を知れば少しはこの違和感の理由がわかるかも知れない。
そう言うとディーンとナーシャはなんとも言えない顔をしている。意図が伝わらなかった?例えれば分かってくれるかなぁ…
「上手く例えられるか分からないけど…」
少し考えてゆっくり話し出す
「えっとね…花壇に沢山のローズンが咲いていてその中に1輪のスミレンが咲いているの。そのスミレンの気持ちを想像してみて。
香りも大きさもローズンの方が強くビィーに気付いてもらえないから受粉も出来ず枯れていくだけだよ。そのぼっちスミレンは仲間の中にいたら目立たないけど、ありふれたスミレンの人生が送れると思わない⁈」
「「・・・」」
大した話では無いのに2人の顔色は悪い。2人が何故そんな顔したのか今の私には分からなかった。その理由が分かるのは数ヶ月後になる。
「簡単に言うとどんなにいい生活をして身分があっても、場違いな所にいる感じがしている訳。だから本当の母様に会い始点が分かればこのモヤモヤの原因が分かり、これからの私の向かう先がわかる気がして」
「つまりここ国はミーナが居るべき場所では無いという事ね」
「そう。たからディーンの伝あるからロダンダに渡るけど、数年過ごしてお金が貯まれば、私の居場所を探す旅に出るつもりよ」
何故かディーンは急に部屋を出て行ってしまった。私変な事言ったかなぁ⁈素直な今の気持ちを言っただけなんだけど…
少し不安になってきたらナーシャが
「私はどんな時でもミーナの味方よ。う…んとね、その話はザイラにしない方がいいわ」
「なんで?」
「ザイラはずっとミーナの側に居たいんだよ」
「弟だけどずっとは無理だよ。あの子は来年成人しお嫁さんを迎えるんだから」
変な事言うナーシャを顔をまじまじと見た。何故ナーシャがそんな事を言うのかが全く分からない。姉想いのザイラなら話せば分ってくれると思うけど。ナーシャは少し考えて
「ミーナの思いは分かったわ。取りあえずこの国を出たいのね⁈」
「うん」
「婚姻はどうするの?」
「全く考えてない。平民になって柵が無くなり、“ただのミーナ”を本当に愛してくれる人が現れたらしてもいいかなぁ…でもね夫の必要性は感じていないんだよね…」
「…分かったわ。今聞いた話は誰にも言わないわ」
「!」
思い出した!ナーシャのリアム様に情報漏洩している疑惑を問い詰めないと!
この後ナーシャに詰め寄りリアム様との関係性を聞くが…
「私が言う訳ないでしょう!あちらは貴族様よ。私みたいな平民の女の話を聞くと思う?」
「でも妙に私の家出について知っている感じだったし、キーファ様も何か知ってる感じだったよ。変だわ!」
「それはな…」
扉を見るとディーンが戻って来た。またナーシャの横に座り
「俺とナーシャはロダンダに移り住む話を進めて行くうちに、協力者のキーファ様とそれなりに付き合う様になったんだ。俺はロダンダの情報が欲しいが、どうやらキーファ様はミーナの事を知りたい様だ。恐らく主君…リアム様だっけ?がミーナを気に入っているからだろ。しかし家出の件は本当にナーシャも俺も言っていないよ」
真剣な面持ちのディーンとナーシャ。本気で疑っている訳では無い。ただ妙にリアム様とキーファ様が知っていそうだから…
「俺は確実にそしてどんな手を使ってもミーナがロダンダに行けるようにしたいんだ。その為なら貴族様のコネや助けは受けるよ」
「ディーン…嬉しいけど危ない橋は渡らないでね。手を貸してもらって変な仕事とか請けないでね」
まだもやもやしているけど信用する。長い付き合いだから二人には全幅の信頼を向けてる。ここで裏切られたらきっと私は人間不信になるわ。
「そうそう。ロダンダに移るのにそろそろ荷物の準備も始めないとね。表立って用意できないだろうから私が揃えようか?」
「お願い。お金は言ってね持ってくるから」
こうして帰る時間になり居間に行くとシュナが縫い物をしていた。部屋着だろうか?シンプルだが着心地良そうだ。私の服は基本王都のお店で仕立ててもらっている。でも平民になったら自分で仕立てるのが一般的。平民になるなら私も繕い物位できないと…
「シュナ。私も洋服仕立てれるようになりたい。教えて!」
「ミーナは貴族だから必要ないだろう?」
「え・・・と趣味で!」
横でディーンとナーシャが笑っている。無視してシュナに弟子入りを頼み、戸惑いながらもシュナは引受けてくれた。父様が居ない今がチャンス。明日から習う事にした。
こうして付き添いの騎士に促され別宅に帰る。シュナは次に来る時に家にある布を何でもいいから持っておいでと言っていたので帰ったら探そう。そしてディーンとナーシャに別れを告げて家路を急ぐ。帰り道私が機嫌がいいからリンの足取りも軽い。
また平民生活に一歩近づくと思うと心が弾み、王太子とのデートの約束なんて丸っと忘れていた私。別宅に帰るなり現実に引き戻される事になるなんてこの時は思ってもみなかったのだ。
別宅に機嫌よく帰ると見慣れない馬車が停まっている。
「??」と不思議に思いながらリンを厩舎に連れて行き勝手について来たとは言え護衛してくれた騎士に礼を言い裏口から屋敷に入る。
何故か使用人たちは騒がしい。なんだろう…
嫌な予感がしてこっそり部屋に戻る。楽な部屋着に着替えてソファーで一息つくと誰かが来た。
「失礼いたします。お嬢様お戻りでしょうか?」
「うん。帰っているわ」
入室許可をだすとヴォルフが難しい顔をして入って来た。嫌な予感しかしない。私今ご機嫌なんだから嫌な話は止めてよね!
「大変申し上げにくいのですが…」
「じゃぁ聞かない」
そう言い両手で耳を押さえて聞くのを拒否すると…
「ミーナ!すっかりレディになり綺麗になったな!」
「こんな可愛い孫でおばぁちゃまは鼻が高いわ!」
老夫婦?が入って来たが… ふーあーゆ?
固まっていると説明しようとしているヴォルフを押しのけ老紳士は足早に私の元に来て手を引き抱きしめた。
「ぎゃぁー!ってか誰?離して!」
面識のない男性に抱き付かれ思わず悲鳴を上げてしまう。直ぐにヴォルフが老紳士から離してくれ、私はまた抱き付かれない様に部屋の端に逃げる。
「侯爵様。お嬢様にお話しご案内するので応接室でお待ちいただく様にお伝えしてあったはずです」
「孫に会うのに伺いなど要らんだろう。儂はミーナの祖父だぞ」
「はぁ?」
ヴォルフが必死で2人を止めてくれている。今なんて言ったこのおじぃ!
結局ヴォルフが必死にこのおじぃとおばぁを宥め、ヘレンに一旦2人を応接室へ案内させた。疲労困憊のヴォルフは何か起きているのかを話してくれる。
「お嬢様は全く記憶に無いかと思いますが、今のお方は先代のヤカラス侯爵様で奥様のご両親であり、お嬢様のご祖父母にあらせられます」
「私には祖父母は居ないわ。お帰り頂いて」
「…ですが」
「赤ん坊の時は知らないけど、記憶している限りで一度も会った事ない他人よ。今更祖父母と言われて受け入れれる訳ないでしょ!」
「…直ぐ旦那様に知らせました。恐らく旦那様も訪問予定をご存じないかと…」
「どうするの!あのおじぃとおばぁは!」
「お嬢様!お口が過ぎます!一応ご祖父母でらっしゃいますよ」
「ヴォルフも“一応”って」
2人で顔を合せて笑う。少し落ち着き和んだところでヴォルフが
「先代のヤカラス侯爵様は野心家でご嫡男に当主を譲っても実質は先代が仕切ってらっしゃるそうです。恐らく王太子殿下がお嬢様に求婚していると聞き、皇族との縁を欲し会いに来られてのでしょう」
「流石に母様のご両親ね…ご遠慮したいわ」
溜息を吐いたヴォルフは早くても父様の指示が来るのは夜半遅くなるらしく、ここに泊まる気満々のおじぃとおばぁの相手をしないといけないらしい。
『少し前の私のご機嫌を返せ!』と心で叫び急降下する気分に押しつぶされそうになる私。
今日の夕食は食べれない事を覚悟し食卓に向かう事になった。
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