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11.訪問者

無事?に舞踏会を終えてホテルにもどれた。しかし翌日から環境が変わり…

「ふぁ…」


自然に目が覚め気持ちいい。今日はまだホテルだ。昼前にここを出て森の別邸に帰る。帰ったらすぐにナーシャの所に行き舞踏会の事を愚痴ろう。そしてリアム様の話をするの。だってロダンダに渡ったらお世話になるかもしれないし。

そんな事を思いながら顔を洗い身支度をする。着替え終わった頃にアンが起きているか確認に来た。そして身支度が終わっているのを確認すると朝食の準備が出来ていると言う。


昨日はバタバタで舞踏会でも食べれず、またホテルに戻っても疲れて食べずに寝てしまったからお腹が大合唱している。


『ここのホテルは食事が美味しいのよね~

父様は私の好みをよく知っているわ。流石血の繋がった父親!母様とはえらい違いがだわ』


そう父様は昔から私の事をよく分かっている。離れて暮らしていた事もあるが母様は私の事を分かっていない。贈ってくれる物も自分の好むのもので私のこと何て考えていない。昨日の舞踏会のドレスがいい例だ。私は全てにおいて華がなく原色や派手な造りの物は似合わない。そんな私にあんな派手なピンクのドレスなんて…

まぁいいや!冷たい様だが本当の母親ではないから仕方ない。

そしてダイニングルームの扉を開けて固まった。


「「「おはよう」」」

「はぁ?何で母様とザイラが居るの?本宅に帰ったんじゃないの?」


そう!食卓に家族が勢ぞろいしていた。父様に促され着席すると給仕が始まり食事をいただく。

ザイラと母様がやたらに話しかけて反対に父様は超不機嫌だ。 


『何…朝からこのカオスな状況は…』意を決して父様に


「何故ザイラと母様がこちらに。本宅は近いのに」

「あら、家族が一緒に過ごすのは至極当たり前の事よ」

「はぁ…」

「姉上。私は今日から1か月別宅で森の管理について父上に学ぶ事になりましたので、姉弟やっと一緒に過ごせますね」

「はぁ?」


何?私が寝ている間に何が起こったの?真意を知りたくて父様に視線を送ると目が怖い…

こういう表情の時は“今は聞くな”だ。後で父様にこっそり聞きに行こう。奇妙な空気の中食事をし終え、あっという間に帰る時間になる、しかし…


「旦那様。ホテルの支配人がお見えでございます」

「何事だ」


父様は支配人から話を聞く為に部屋を出て行った。トラブルだろうか?私は使用人が帰り支度をしている中、邪魔にならない様に出発まで寝室で本を読み時間を過ごす。


“コンコン”

「お嬢様失礼いたします」


何故か青い顔をしたアンが扉の前に立って何か言い及んでいる。


「何?」

「あ…旦那様が居間の方に…」


アンは頻りに後ろを気にしている。あれ?後ろに誰かいる…

覗き込むと背の高い男性が立っている。誰?ザイラ…でもなさそう⁈本をベッドに置き扉に向かうと男性がはっきり見えて…


「うぐぅ!」


思わず叫びそうになった声を呑み込んだら乙女らしからぬ声がこぼれた。

そうアンの後ろにルイス王太子殿下が立っている。思わず扉に手をかけ閉めそうになる。反応した殿下が扉を押さえた。


「こんにちは。お加減はいかがですか?」

「ご心配いただきありがとうございます。昨晩は早く休んだのでもう大丈夫で…す?」


ぐっと前に出て来た殿下に手を取られ、流れるようなエスコートで居間まで連行される。

居間には眉間に皺を寄せた父様と、満面の笑みで上機嫌の母様に無表情のザイラが居る。取りあえず誰か状況を説明してください!

ソファーに座らされ隣にぴったりと殿下が座り、目の前に父様と母様そして左横にザイラが座った。

マーガレットさんが茶を出したら退室し殿下が


「昨晩はミーナ嬢とゆっくり話を出来なかった。ミーナ嬢が帰った後、未来の妻の体が心配で夜も眠れなかったのだ。迷惑と思いながらも早朝から会いに来てしまったよ」

「真に光栄でございます。娘も喜んでおりますわ」


母様はまるで自分に殿下が会いに来たかのように喜んでいる。どう見ても私はこんなにも困っているのに、何故に喜んでいる様に見えるのだろう?

母様と殿下の話が盛り上っているのを見て、いっそ殿下と母様がくっつけばいいのにと思ってしまう。


「殿下。お約束も先触れも無くのご訪問。こちらにも都合がございます」

「あなた!殿下に対して不敬ですわ!」

「いえ、ミーナの父として不敬になろうと言わせていただきます。ミーナは持病があるのは殿下が一番良くお分かりのはず。そんな令嬢に早朝から伺いもたてずの訪問は相手の事を思われておられない。今後はこの様な事が無き様にお願い申し上げます」


母様とザイラの顔色が無くなる。何故なら王太子殿下に父様が苦情クレームを言ったからだ。普通王族に失言すれば不敬で騎士に拘束される。しかし殿下は怒ることも無く父様の話を静かに聞き


「確かに私の行動は浅慮であった事は認め今後は気を付けよう。私は花嫁に会えて浮かれていた様だ。しかし少しでも会いたい私の気持を察してくれ侯爵」

『誰が花嫁だって⁉︎』


昨日はっきり求婚プロポーズを断ったでしょ!王族は嫌だっちゅーの!


「殿下との婚約ははっきりお断りいたしました。私の様なものに殿下の妃は務まりません。相応な身分の令嬢をお選び下さい」


殿下の手を離して間を空けて座り直す。殿下は一瞬不機嫌になりまた横にピッタリくっつき、また手を握って来る。


『も!父様助けて』


父様がまた何か言おうとしたら、被せる様に殿下が


「少ししたら森に帰るのだろう⁈少しでいいミーナ嬢と話す時間をくれぬか?」


母様はザイラと父様の手を引き別室に移動しようとしている。大きな溜息を吐いた父様は殿下に


「分かりました。しかしミーナは未婚の為、部屋に侍女を付けます。よろしいでしょうか」

「あぁ…それでいい」


こうして私と殿下を居間に残して皆は部屋を出て行った。一応父様の指示でマーガレットさんが残ってくれ、部屋の隅に控えてくれる。全く手を離さない殿下にイライラしてしまう。好意の無い人がこんなに距離感が近いと苦痛でしかない。

でも間近で殿下を見ると王子だけあり美形だ。恐らく令嬢の憧れの的だろうね…

私はタイプではないけど。

それにしてもやっぱりリアム様に似ている。似ているがリアム様は凛々しい印象で、殿下は甘く優しい面立ちだ。

そんな事を考えながら殿下を見ていたら、頬を染めた殿下が


「貴女の瞳に私だけが映る事に喜びを感じる。その綺麗な瞳には私だけを映して欲しい…」

「私はまだ信頼関係も無い方に距離を詰められるのは苦手です。少し距離を頂きたい」


そう言うと殿下はしょんぼりし、気持ち離れてくれる。ほっとして一息吐いたら


「昨晩は他の貴族から不満が出ぬ様に、成人する令嬢レディ全員と踊らなければならず、貴女との時間を持てなかった。陛下は元から私の妃には貴女を望まれている。これからは距離を詰め愛を育んで行きたのです。しかし貴女は病気の関係上、森で生活され私は王城から離れる事が出来ない。ですからこうして少しの時間でも共に過ごしたいのです」

「・・・何度も言いますが、私は妃にふさわしくない。それに陛下の命で愛していただいても嬉しくありません」


するとまたぐっと身を近付け両手を握り


「陛下がお決めになったから貴女を妃に望んだのではありません。貴女は私の命なのです」

「命?」

「そうです。貴女が居なかったら私は生きて来れなかった。辛い思いをさせた貴女に…」


殿下が言っている意味が分からない!唖然としている私を殿下は腰に腕に回し引き寄せ顔が近付き…


「王太子殿下!恐れながら近うございます!」


マーガレットさんが背後に立ち殿下に距離を取る様に注意してくれた。溜息をついた殿下は腕を緩め少し離れた。

抱きしめられた嫌悪より殿下の言葉がひっかかり、何も頭に入って来ない。


『命?辛い思い?』


殿下とは昨日初めてお会いしたはず…いつ殿下を救ったの?

目の前の殿下は必死に甘い言葉を紡ぐ。しかし全く耳に入って来ない。


“コンコン”


父様が出発時間だと知らせに来た。入室して来た父様は駆け寄り私の手を取り背に庇った。私の手を握る父様の力が強く少し痛い。


「殿下…娘はまだ婚約を承諾しておりません。不埒な行動はお控えいただき、紳士の振る舞いを!」

「ミーナ嬢はこの国に来た時から私の花嫁と決まっていた。侯爵!まだ話していないのか!」


更に強くなる父様の手に顔を歪めたら、それに気付いたマーガレットさんが手を離す様に父様に言ってくれた。手を離し振り返った父様の顔色は悪い。父様は私を見て抱きしめて


「マーガレット嬢。ミーナを皆の元へ」 

「畏まりました」


マーガレットさんが私の手を取り扉の方へ歩き出した。父様と目が合うといつもの優しい微笑みをくれる。


別室にいた母様とザイラは私の顔を見て驚き駆け寄る。私を抱きしめたザイラは背を摩り何度も“大丈夫”だと呟く。

相変わらず私の事が分かっていない母様は、私が殿下に失礼な事をしたと勘違いし、何をしたのかしきりに聞いて来る。


「母上は何を勘違いされておられるのです!姉上が殿下に何かされたに決まっています!姉上…大丈夫ですよ!私がついていますから」


暫く会わない間に立派な青年になったザイラは、大きな体で守ってくれて少し落ち着いて来た。ザイラがソファーに座らせてくれ、アンが入れてくれたお茶を飲み一息つく。



その後どの位経っただろう…やっと父様と殿下が部屋に来たが二人共顔色が悪い。

そして殿下は先程と違い距離を取り少し離れて


「ミーナ嬢。これだけは知って欲しい。私の貴女に対する気持ち本物だ。それ故に急いでしまった。また森の屋敷や教会に会いに行くよ。先程の様な事は二度としないと誓う。だからまた会って欲しい」

「…すみません。色々あり過ぎて困惑しています。少し考える時間が欲しいです」

「分かったよ…」


こうして殿下は帰って行かれた。

皆何も言わず馬車に乗り込み別宅に帰る。馬車の中では気を使った母様が一人話し続け、ザイラが苦笑している。

私は父様と殿下の言葉が引っかかり、ずっと困惑したままだ。目の前の父様は眉間に皺を寄せたままで何も言わない。きっと今聞いても何一つ話してくれないだろう。

大丈夫だよね…父様は時期が来たら話してくれるよね…


屋敷着くとヴォルフと使用人達が迎えてくれた。父様はすぐにヴォルフと執務室に行ってしまった。私はマーガレットさんに付添われ部屋に行く。


「はぁ…やっぱり自分の部屋は落ち着く」


ベッドに寝転がり気が抜けたら眠くなって来た。皆んな殿下と何かあったのを察して何も言わない。今はそっとして欲しいから私も助かる。

そのまま夕刻まで部屋で過ごし夕食前に湯浴みをマーガレットさんに促され、湯に浸かりぼんやりする。


成人まで後1年になってから色々あり過ぎた。しかしまだ重大な事があるのは父様を見ていたら分かる。母様の子じゃなく妾の子だけでもかなりの衝撃なのに、まだあると思うと気が重い。


「お嬢様!湯あたりしますのでお早くお上がり下さい」

「はぁ…い」


マーガレットさんが言った通り少し湯あたりした。苦笑したマーガレットさんが冷やしたタオルを首元に当ててくれる。

身体を気遣いマーガレットさんはゆったりしたワンピースを用意してくれた。


ソファーでぼーっとしていたらアンが食事の準備が出来たと迎えに来た。

ダイニングに向かうと途中ザイラに会う。ザイラは人懐っこく微笑みエスコートしてくれる。今は弟の手の温もりが妙に落ち着く。


「姉上。夕食は私と二人です」

「へ?なんで?」

「父上はヴォルフと打ち合わせがあり、母上は侍女長と喧嘩中です」

「はぁ?」


どうやら母様は別邸のやり方が気に食わない様で、難癖を使用人達に言ったらしい。

しかし別宅の侍女長は私が別邸に移ってからずっと仕えてくれている一番の古株で、私が過ごしやすい様にしてくれ、全てに於いて緩く貴族らしくない。ずっと本宅にいる母様からしたら、平民の様な別宅が気に要らず文句を言い出した。母様はどこまでも体裁と身分を重視していて、私は息苦しくて正直嫌いだ。


「私ね…ザイラと長い間に会ってなかったから、ザイラは母様と同じなんだと思っていたの。でも久しぶりに会ったら見た目も心根も優しい素敵な青年になっていて嬉しかったのよ」

「姉上…私が幼い頃は姉上が母上を避ける理由が分からず、姉上のわがままだと思っていたんですよ」

「えっ?」


どうやら母様は私の愚痴をザイラに言っていて、ザイラは私がわがままを言って父様を別宅で独り占めしていると思ってたそうだ。

そしてザイラは母様に同調していき別宅に行かなくなった。

姉弟きょうだいはいない」

の発言はこの頃に友人に言っていた事らしい。


「それはいつ変わったの?」

「あれは3年前だったよ…」


ザイラは王都のアカデミーに通っていて、その日は友人と午後から学用品を買いに街に出ていた。その時たまたま教会に向かうウチの馬車を見かけたそうだ。そして父様に会いたくなったザイラは友人と別れ教会に行き父様に会いに来たと神官に取次を申し出た。

取次いだ神官はザイラを覚えていて、すぐに私の治療する部屋に案内してくれた。


「あれ?ザイラが治療に来た事なんて無かったわよ」

「姉上は知らない筈です」

「?」


神官がジン様が居る治療室に案内してくれると騒然とする部屋。開かれた扉から中を覗くと…


「早く医師を呼びなさい!」

「ミーナしっかりしなさい!」

「早く清潔な布を!」


ザイラの目に飛び込んだのは血まみれの私が床に倒れていて、抱きかかえ必死で声をかけている父様。ジン様は止血する為に私の手を握り締めている。


「何だこれ…」

「そこを退きなさい!」


呆然と立ち尽くすザイラを押し退け医師が駆け込み治療を始めた。


「私は頭が真っ白になりただ見ているだけだったよ」

「あ…あの日にザイラ来ていたんだ」


そうあの日以降父様の過保護が悪化したんだ。


あの日の治療の前日。早く就寝する様に言われていたが、読み出した本が面白くて明け方まで読んでしまい寝不足で治療に行ったんだ。そして治療する時に眠くてフラフラしてしまい、針を刺す瞬間に動きかなり深く切ってしまい、痛みと出血で失神したのだ。


「姉上の処置が終わり休憩室で姉上が寝み、私が来ている事に気付いた父上とやっと話が出来たんだ。そこで初めて姉上の病と治療について聞いたよ」

「あはは…あれは私が悪くてジン様にこっ酷く怒られたのを覚えているわ」

「あの日。父上は姉上の事で大変なのに私に姉上の話をして下さり、その上私の寂しい気持ちも聞いてくれたよ。母上が居て下さっても私は父上を必要としていたんだよ」


ザイラは申し訳なさそうにそう語った。本当にいい青年になったと感心していたら、ザイラが驚く事を言った。


「あの日父上から姉上が母上の子でない事を聞いたのです」

「!」


驚き口を開けたまま固まる私を見て、優しく微笑み話を続けるザイラを見る事しか出来なかった。

お読みいただき、ありがとうございます。

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