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101.ドルツ医師

ザイラ登場に話が更に複雑になり…

やっと全員着席。しかし皆難しい顔をし口を噤む。雰囲気は悪く誰が口火を切るのか静観していたら、父様が立ち上がり陛下に視線を向けて胸に手を当て深々と頭を下げた。そして勝手にジン様がザイラを呼び寄せたのに、なぜか父様が騒がした事を謝罪すると陛下は手を上げ謝罪を受けられた。そして陛下は父様にザイラにどこまで話したのか確認する。

父様は漆黒の乙女と血の病の起源そしてこれらの解決策を今話し合っている事を伝えたと報告。


するとジン様は立上りは血の病を後世に出さない為に、乙女である私の行先が鍵になるとザイラに話す。話を聞いたザイラは少し考え


「やはり私が考察したとおり、ジョルノの血を引く私が姉上…いやミーナ嬢を幸せにし、ジョルノとハナの魂が結ばれれば血の病は発症しないのではないでしょうか」


ザイラはそう言い私に熱い視線を送ってきた。本当にザイラはあんな短時間の説明で全て理解したの? ちゃんと理解していないと思いザイラに


「そんな簡単な話では無いのよ。未成年だとしても陛下がいらっしゃるのに、安易な発言はするべきでは無いわ」


そう諌めるとザイラは少し拗ねた顔をして胸ポケットから紙を数枚取り出して


「私はバンディス侯爵家の領地運営を学ぶために、本宅や森の別宅の過去の資料に目を通しているうちに、過去にミーナ嬢と同じ血の病を患っている養女がいるの事を知りました」


ザイラは当主の書斎でかなり古い家系図を見つけある事に気づく。それは頻繁にバンディス家直系の幼い娘が病や事故で亡くなり、間を空けずして養子を迎えていた事。そして養子に迎えた娘が血の病を患っており、完治した後は王家に嫁いでいる事に気付く。これらから血の病を発病した養女に何か秘密があるのだと推察。


「私は昔から母のミーナ嬢への態度と、父の異常なほどの過保護に違和感を感じていました。そしてミーナ嬢と血の繋がりが無いと知り…」


そこからザイラは真相を調べある人物に出会う。その人物は…


「ドルツ先生⁈」


そう私が家出するときに手助けしてくれた町医者のドルツ先生。知らない間にザイラとドルツ先生が接触をしていた。

ザイラは侯爵家の記録では全て解明できないと思い教会に赴き資料を探していた。そんな時にドルツ先生と出会う。ザイラは私がいつも教会で受けていた治療を、ロダンダの屋敷で受けた事を聞き何かあると思い、その治療をしたドルツ先生を注視していた。そんな時に偶然教会でドルツ先生に会い接触する。


「でもドルツ先生は過去に私の治療をした事があるくらいで…」

「ミーナ嬢は知らされていなかったですね。ジン様からお聞きになっていると思っておりました」

「?」


そしてザイラから驚愕の事実が告げられ、部屋の皆の視線がジン様に向く。すると飄々とした顔をしたジン様が


「ドルツ医師は神の啓示を受けた医師の一族なんだよ」


驚き視線を父様に向けると父様も目を見開き驚いている。そして陛下も…


ドルツ先生は血の病や漆黒の乙女の起源を知る一族として、教会から監視対象とされていたのだ。ジン様の話では昔は啓示を受けた者として、発言力もあり乙女の治療(輸血)も行い乙女の主治医をしていた。しかし代替わりしていき乙女の意思は無視され、王家との縁組が強要され始め医師は乙女を保護し逃がそうとした。この出来事から医師の一族は王家と教会に目をつけられ、乙女の主治医は解任されそれ以降は教会に属する医師が主治医となった。そして王家が医師を断罪しようとした時、教会が医師を庇い監視する事となった。


「不本意じゃが神に仕える我らに神託は下らずドルツ医師の一族に下りた。また神託が下るやもしれんからな」


こうして乙女と関わらなくなり代替わりしていくうちに、動きのない医師の一族は王家から忘れ去られていた。


新事実に皆動揺が隠せない。するとザイラが陛下に発言許可を得て


「この様子では皆さんが知らない事実があるようです。ここにドルツ先生をお呼びした方いいかと…」


何故かザイラは自信満々にそう言い、私の隣に来て手を取り口付けを落とした。

やっと全貌が見えて一息ついた所での新事実に心がざわつく。また振り出しに戻り気が遠くなる。するとザイラは嬉しそうに


「私は幼いころからミーナ嬢が姉である事に違和感を覚えていました。それはきっとジョルノの血を受け継いでいるから。故にジョルノとハナの願いが叶えばきっと神の怒りが納まる事でしょう」


ザイラはそう言い視線を両殿下とディック様に向け牽制した。その言葉に苦い顔をする殿下達。そして少し前まで不機嫌だったジン様は、また遣いを出しドルツ先生を呼び出す。


怒涛の展開に眩暈がし嫌な汗が出てきた。そんな私にいち早く気付いたリアンド殿下が、私を抱き上げ陛下と父様に許可を得て宮廷医の元へ連れて行ってくれる。執務室の部屋を出ると後ろから


「私も行こう」


続いてルイス殿下も執務室を後にする。どんどん気持ち悪くなり顔を上げれずにいるとリアンド殿下が


「体調の悪い貴女に今聞くべき事ではありませんが…」


リアンド殿下はそう前置きし、私に成人の儀の後の動向を聞き、両殿下は私の反応を静かに見ている。まだ気持ちが悪く応える余裕は無いが、これだけは言っておきたくて…


「ジョルノの件があったとしても、私はザイラを選ぶことはありません。私の中ではザイラは弟でそれ以下でも以上でも無いのです。それに今お相手を決める事も行き先も話せる状態では…」


そう答えるとまた気持ち悪くなり下を向く。すると私の返答にリアンド殿下は


「他の者の想いは分からないが、私は貴女の決断を受け入れるよ」

「リアンド殿下…」


リアンド殿下の言葉は今私が一番欲しい言葉だった。するとルイス殿下が私の頭を撫でて


「今はゆっくり休むといい…」


両殿下の気遣いに泣きそうになる。こうして私は医務室で休む事になった。

お読みいただき、ありがとうございます。

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