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1.持病


「ミーナ。明日は治療のため教会に行く日だから早く片付けて休みなさい」

「はぁ〜い。また血を抜くのね…痛いの嫌い」

「後1年で治療も終わる。もう少しだ!頑張りなさい」

「はぁ…い」


私はバンディス侯爵家長女のミーナ。生まれつきの持病があり、月に一度教会で血を抜く治療を生まれた時から受けている。

慣れているとはいえ痛いものは痛いのだ。

体が弱く?病気をもらわない様に、人が多い王都や街では無く森の奥に父様と使用人数名と住んでいる。

ウチの領地は森林があり豊かだ。

昼過ぎに木こりのファブと孫のナーシャがキノコと木の実を持って来てくれた。

ナーシャは数少ない私の友達で身分関係なく幼い頃からそばに居てくれた。



「あと少しで成人の儀だね。ミーナはどんなドレスにするの?」

「母様が用意してくれているから知らないの。出来れば私が好きな淡い色がいいなぁ…ナーシャは?」

「おばあちゃんが昔着たのがあって母さんが仕立て直してくれるわ」

「いいなぁ…」

「なんでよ!お古だよ。ミーナは令嬢だから王都の有名なお店で仕立てて貰うんでしょ!シルクの美しいドレスだからいいじゃん」


そう私とナーシャは後1年で成人する。

私達が住むボルディン王国は18歳で成人し、年に1度成人のお祭りがあり国の守り神アルランから祝福を受ける。その成人の儀で伴侶を決める。平民は自由に相手を選び貴族は家同士が決める所謂政略結婚だ。

ナーシャは同じ木こりの息子のディーンと恋仲で成人すると同時に婚約予定だ。


「羨ましいよ。自分で相手を選べるのは」

「ミーナは貴族だから仕方ないじゃん。おじ様が決めるんだから、おじ様に理想を言っておいたら?」


私は自分の髪を見ながら


「こんな容姿の私を受け入れてくれる男性は居ないわ。政略結婚で私が侯爵家令嬢だから相手はきっと仕方なくだよ。きっと妾を囲い私は領地に追いやられと寂しく…」

「またそうやって自分を卑下する。こんなに美しい髪と瞳なのに…少し色が違うからなんなのよ!私は大好きよ!」

「ありがとう。でもいいの!もうすぐそんな事悩まなくてよくなるから」

「?」


まわりを見渡し父様とファブが話しているのを確認して、ナーシャの耳元で内緒話をする。


「私ね成人したら病の治療も終わるから、家を出て遠い異国に行くつもり」

「なんで!」

「しー!父様に聞こえるわ!私ね恐らく母様の子じゃないの。この容姿から想像するに、きっと父様が異国の女性と浮気して出来た子なのよ。だから母様は私の事嫌っている。それに私もこの国で好奇な目で見られ生き辛いわ。だから異国に渡り平民として自由に生きる」


唖然とし黙り込むナーシャ。少しずつお金も貯めてあるし計画も何度も練り直しバッチリだ。


この国は遥か昔に精霊と交わり肌も髪も淡色者が生まれる。稀に他国から伴侶を迎えた場合はアッシュグレーや亜麻色の色を持つ者が生まれるが、私みたいに闇夜のような漆黒の色を持つ者はいない。

だから珍しく目立ち王都で一人歩きなどしたら、たちまち人攫いにあったり襲われたりする。だから常にフードを被り侯爵家の騎士が付く。


こんな暮らしは嫌だ。自由になりたいし私が居なくなれば母様はきっと父様とも仲良く暮らせる筈だ。

私が居るせいで夫婦はずっと別居している。

昔の私は母様を本当の母様だと疑いもなかった。

病気があり離れて暮らしていた私は、母様を恋しがって泣く事があった。そんな時は父様が母様と弟を領地屋敷から連れて来てくれた。

私は母様に抱きしめられた記憶は無い。他人行儀な言葉をかけてもらうだけ…

弟のザイラは会う度に父様に抱きしめてもらっている。幼い頃は意味が分からず母様とザイラが帰った後に父様に寂しい想いをぶつけて泣いていた。

しかし少し大人の事情が色々分かってきた頃にザイラと一緒に昼寝していた時のこと。目が覚めお茶を飲みに居間に行くと、母様が父様に抱きつき泣いていた。そして…


「あの子がいると私とザイラは幸せになれない。教会が引き取ってもいいと言っているではありませんか!何故教会に渡さないのです。あなたは私を愛してないの!」

「愛してるよ!しかしミーナも娘として…」

「あの子は“娘”と私は認めない!」


衝撃的だった…悲しいよりやっぱり母様の子で無く愛されていなかったと知った。涙すら出ず只々呆然とするだけだった。確か私が7歳の時だ。

そして追い打ちをかける様にこの数日後、教会に治療にいった際に教会に来ていたご婦人方が噂話をしている場に遭遇する。

噂話の内容は『父が浮気し旅芸人に生ませた子』というものだった。


『まぁ…あの噂話以外にも“陛下の隠し子を父が預かっている”なんて話もあったなぁ』


まだ固まっていたナーシャはやっと口を開いた。


「ミーナ私は味方だからね。私に黙って行かないでよ!…私も付いて行くから…」

「ナーシャ?」

「森と教会しか知らないミーナが異国で生きていける訳ないじゃない!私が必要だわ」

「何言ってるの?ナーシャは成人したらディーンと婚約するんでしょ!」


何故か頑に私の家出に付いて行こうとするナーシャに違和感を感じながらもこの話はここまでにした。

ファブとナーシャが帰ると父様が明日の予定を教えてくれる


「ミーナ。治療の後に成人の儀で着るドレスの採寸をしに“Msジュリアン”のお店に行くよ」

「はい。最近ワンピースの丈が短くなってきたので、2、3枚作りたいのいい?」

「あぁ…ついでに仕立てを頼めばいい」

「ありがとう父様!」


ワンピースを仕立てる時は父様は別室でいつも待つ。ミス.ジュリアンを上手く誤魔化し家出の時に持って行く平民の服を依頼しよう。

着々と自分の計画通りに事が運び、未来に希望を持ちながら明日の治療の為に早く就寝した。

お読みいただき、ありがとうございます。

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