プロローグ
よろしくお願いします。
「キミは……それを選ぶんだね」
彼女は目の前で自分を睨んだままの彼にそう呟いた。
手に持った剣は血濡れとなって久しく、
周りには人だった肉塊と魔物だった残骸が散らばり、
すでに辺りにいた仲間の騎士たちは撤退か死を選び、
凄惨たる現状のこの場所に残っているのは自分と彼――
いや……いた。
自分が倒すべき相手、
この世界を無へと帰す超常の力を持つ者。
自分が騎士として生きることを決定づけた者。
そして自分が愛した人を奪った者。
彼女は紅く染まった剣を再びかかげ、
目の前にいる相手へと向けた。
「それがキミの選んだ道なら私はもう止めないよ」
彼女は泣いていた。
その涙は何かを捨てたのか。
それとも決心したのか。
あるいはそのどちらもなのか。
辺りは暗く地面の揺れは激しさを増し、
この場から逃げる事を忠告する。
彼女はそれに構う事なく剣に最後の力を込めた。
「賢者になるって……こういう事だったんだね」
その剣は目の前の相手をつらぬいた。
返り血は美しい彼女の顔を汚し、
血の涙がその頬を伝う。
そして最後に彼女はこう言った。
「ごめんね」
結来はるかは佐々木彼方をその手で殺した。
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作者のモチベが爆上がりし明日も頑張ろうって気になります。